106:試練の門
『ここは試練の門です、この先を進む者に試練を与え試練を乗り越えたものには試練に応じた報酬を授けます。試練の門はあなたの命と精神を失う程危険な場所です。それでも構わないというのならその意思を示しなさい』
『試練の門に挑みますか?』
『はい/いいえ』
聞き終えるやいなやミイは誰の了承も得ずに大きく「たのもう!」と応えた。どこの道場破りだ。
『試練に挑むと判断しました、それでは難易度を設定します』
『優しい/普通/難しい』
『どの設定にしますか?』
ここでようやく美衣は冴内に訪ねた。
「ねぇお父ちゃん、アタイが卵の中でねむってたときにこういうのお父ちゃんの記憶で見た気がする。たしかもっとすごいのがあったような気がするんだけど・・・」
「それってアレかなぁ、よくゲームとかで難しいレベルまでクリアするとさらにその上の隠しモードみたいなのが出てくるやつだねきっと」
「一度くりあしないといけないのか・・・めんどうだなぁ」
「おい、もっとすごいのをよこせ!アタイ達は強いぞ!すごく強いぞ!100億50円ぐらい強いぞ!」
毎度のことながら何故単位が円で100億の次がたった50円なんだろうか・・・
『あなたたちからは強者の力を感じます。本来ならば下から進めていって最後の難易度もクリアした者のみに与えるスペシャルモードをあなた方には特別に最初から選べるようにします』
『では難易度を設定して下さい』
『優しい/普通/難しい/非常に難しい/最高に難しい』
「なんかイマイチな気がする・・・おい!もっと一番強いのをよこせ!これ以上はないっていう最後の最後の最後のスゴイのを出せ!ケチケチするな!」
『分かりました、本来はこのモードは存在してはいけないモードなのですが一応製作者が冗談半分で用意したモードを表示します』
『優しい/普通/難しい/非常に難しい/最高に難しい/この世の地獄』
「それだ!その最後のヤツ!この・せのち・・・なんとかをやる!一番最後のヤツ!」
「イヤイヤイヤ、ちょっと美衣ちゃんいきなり最後のは危ないんじゃない?」
「大丈夫だ!アタイと父ちゃんの神チョップにかなうヤツなどいるもんか!りゅう君のオジサンのじょうしとかいう人だと難しいかもしれないが・・・」
オジサンの上司・・・強いんだ・・・
『分かりました、ではもう一度確認します』
『あなたが選んだのはこの世の地獄で間違いないですね?』
「おう!このよのじごくだ!」
『本当にいいのですか?あなた方がいくら100億50円ぐらい強くとも恐らくすぐ死にますよ?ひどい目に合いますよ?痛くて辛くて狂い死にますよ?』
「いや、美衣ちゃんこれはヤバくない?まず普通でやってみてからでもいいと思わない?」
「大丈夫!父ちゃん母ちゃん・・・母ちゃんはもうそんなに強くないけど頑丈さはアタイと同じくらいだから大丈夫!家族3人いれば宇宙の10個くらいぶっ壊せるくらい強いから何の問題もない!」
「このよのじごくでけっていだ!それで行く!おいはやく開けろ!」
美衣・・・なんでそんなに好戦的なんだよ・・・やはり優の血筋だろうか・・・恐るべし最強の【ンーンンーンンンン】人、もしも冴内のバランス中和能力がなかったらどうなっていたことやら・・・
『了解しました、貴方達のご冥福を心よりお祈り申し上げます』
『この場所はもとよりお墓でもあるので丁度良かったかもしれませんね』
『それでは試練の門、この世の地獄で承りました。ゲートオープンします』
そうして3人は試練の門の中に入っていった
この世の地獄に入っていった
中に入ると意外と明るかった。天井がところどころ光っているのだ。そして壁や床は真っ黒いツルツルの石ではなく普通の岩肌だった。通路は幅3メートルで高さは4メートル程だった。曲道はなく真っ直ぐの道になっていて、そのまま道なりに10分程歩いていると何かが地面にいた。
そこには真っ黒い大きな鏡餅のようなものがいた
「あれなんだ!?うん?スライムか?くろいスライム!まっくろスライムだ!あんなもんチョップのざんげきでイチコロだ!ホレ!」と、美衣がチョップを放ったところスライムはすぐ消えた。
「なんだ、すぐに消えたぞ、弱・・・グエッ!!」
直後、ミイは吹っ飛んで視界から消えた。
全員が何が起きたのかさっぱり分からなかった。えっ?と思っていたら今度は優が「グエッ!」といって視界から消えた。それくらい一瞬ですごい速さで後ろに吹き飛んだ。
冴内が恐る恐る目線を前に向けると空中停止した黒いスライムがいて、自分自身の身体でバスケットボールのドリブルのようにポンポン跳ねていた。
それはまるで、冴内を前に余裕をかましている感じのように見えた。
コレはヤバイ!すごくヤバイ!!
即座に冴内は察して例の海割りチョップのときのフルパワー全開チョップを叩き込んだ。それこそこのダンジョンそのものが崩落しても構わない覚悟で全リミッター解除のフルパワーチョップをお見舞いした。まっくろスライムが目に見えないスピードで回避しようとも目の前の空間そのものを全て消滅させてやるくらいの現時点の冴内マックスチョップをフルスイングした。それは右手が黄金に輝き光の粒子残像を残す程の最強チョップだった。
轟音ともにチョップが飛んでいき、まっくろスライムは消滅・・・
しなかった・・・