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104:奈良ゲート

 奈良ゲートは奈良の都市部からかなり離れた十津川村の山の奥、世界遺産にも登録されている玉置たまき神社にある。正式名称としては玉置神社ゲートになるのだが、玉置神社を知らない人が多くいるので便宜上奈良ゲートと呼ばれ、登録上も奈良ゲートとして機関に登録されている。


 玉置神社は紀元前に建てられたとされ、樹齢3千年ともいわれる神代杉があり他にも天然記念物に指定されている巨大な杉が多くある。この神社には日本神話に登場する有名な神様達が祀られており、その中には世界を作ったとされる第一神の国常立尊くにとこたちのみことも祀られている。


 マチュピチュ遺跡のゲート同様、このゲートもその立地条件から多くのシーカー達が頻繁に訪れる場所ではない。玉置神社は大峰山脈の南端に位置する標高およそ千メートルの玉置山の山頂にあり駐車場からは徒歩20分の山道を通ることになる。


 この神社は「秘境の神社」とも言われており、さらに不思議な現象としてこの神社に辿り着けない人がいるという報告がある。さすがに現代では道に迷って辿り着けない人はほとんどいないが、何故か神社に行こうとする時に限って急な用事が入るとか、体調不良になるとか、車が故障するなどの事象が発生して行けなくなるというのである。まぁあくまでも少数の偶発的事象なのだが、それでもこうした話しを好む人が多くいるのと、この神社の神秘性がさらに増すということで良く語られている。


 こうした事情もあり、富士山麓ゲートと奈良ゲートは80年経ってもまだ繋がっていない。冴内ファミリーが次々と世界のゲートを繋げていったので世界中で世界を繋ごうという気運が強まってはいるが立地条件やその国の政情的な問題や財政的な問題等で他の先進的な国のように積極的に探索出来ない地域もある。


 また、奈良ゲートでシーカー達に立ちはだかるのが鬱蒼とした深い森である。しかも一本一本の木が地球上においてのセコイアを遥かに超える巨木であり、その高さは200メートルにも及び直径も15メートルを超え太いものでは30メートルというものまである。さらにその樹皮は非常に硬く一本の木を切り倒すのに怪力自慢や剣術スキルなど、木こりに適したスキルを保有する者でも2週間以上もかかるため80年経った今でも開拓はほとんど進んでおらずわずか10キロ圏内程度しか平地として整地されていない。


 当然遭難者や行方不明者も多く、さらに危険対象物の存在も多いためレベルの低いシーカーの入場は推奨されていない。高レベルシーカーであっても素材や鉱石などの収集で収益を得ようとする者はその地の危険性と収集物の運搬、そして主に取れる木材系素材の換金価格など、色んな面で割に合わないのでほとんどのシーカーは富士山麓ゲートに行く。


 そうしたこともあり奈良ゲートは年間100人にも満たないシーカー達が細々と活動しているゲートである。こうしたゲートは俗に「過疎ゲート」と言われるが世界では10人程度しかいないゲートもある。


 そんな奈良ゲートでも冴内ファミリーの活躍の報を受けて探索調査活動の機運が高まり、さらに近年の技術革新を利用して少ない労力で安全かつ低コストで探索できる方針を決定実行した。すわなちドローンとAIとIT技術の活用である。ただしゲート内では人工衛星がないためGPSは活用できず、あくまでも発進地点からの相対的現在位置でしか確認出来ないため通常市販品のGPS搭載ドローンではなく、奈良ゲート専用に開発されたAIドローンを利用することになった。研究開発には世界機関も費用や技術面で多く出資しており、この実証実験が成功すれば順次他のゲートにも活用することになる。しかしそれでもドローンの航続距離の問題から全てをまかなうことは出来ない現実もあった。そういう意味ではこの奈良ゲートはそもそも開拓範囲がわずか10キロ程度という狭い範囲であったためドローンの活用に適している場所といえた。


 そうしてドローンを飛ばしていったところ、奈良ゲートの驚くべき事実が徐々に判明していった。どうしてもドローンの航続距離と飛行可能時間に限界があるため全てが明らかになったわけではないが、それでも現在最高性能のドローンを用いて最高高度限界まで垂直上昇させていった結果、奈良ゲートにはなんと天井があることが確認された。研究者達の間では地下空間に存在する巨大なドーム形状なのではないかという見解が寄せられたのだ。この発表はかなりの反響を呼んだ。一番の意見はなぜ地下空間なのに光があるのかということであるが観測チームの回答はそれは天井一面が発光しているというものだった。地表から天井までの距離はおよそ千メートル程度とのことだった。富士山麓ゲートから80年も経っているのに未だ奈良ゲートと繋がらなかったのは奈良ゲートが地中にあったため発見されなかったのだということで納得された。

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