103:オジサンとの首脳会談
冴内ファミリーが次々とゲート世界を繋ぐ世紀の大発見をしている一方、世界ゲート機関(WGO)は世界各国の政府や宇宙関連の研究機関も含めて、そんな大発見をも吹き飛ばす程の衝撃の事実で大変なことになっていた。
ゲートの中の世界が実は上位の宇宙人によるテラホーミングによって改良された惑星だったことがりゅう君のオジサンの発言で明らかになったからだ。
最初は壁画、次に泉の精霊、次にドラゴン、そして神の中の神と名乗った宇宙最強の【ンーンンーンンンン】人。ゲート内に知的生命体がいることが分かってからのこの展開は地球人類の歴史認識、宇宙認識を大きく変える大変な出来事であった。
もう議会はパニック爆発寸前のカオス状態であったが、それでも皆各国を代表する優れた頭脳と精神の持ち主達だったのでなんとか冷静さを取り戻し、とにかく落ち着いて少しづつ現状認識と現状理解を前進させていった。少しづつ目の前のことから一歩一歩進んでいかないと背後に控えている膨大な事象に対してとてもじゃないが脳も精神も受け止めきれなかったからだ。なんとかしてりゅう君のオジサンに連絡を取り会談出来ないか全世界をあげて検討することになった。
こうして冴内ファミリー達の世界を繋ぐ冒険の旅はいったん休止して、オジサンとの仲介役をお願いすることになった。りゅう君のオジサンは別にこれまで意図して情報を秘匿したり、人間達との接触を避けていたのではなく、普通に人間の方から我々の存在を感知するまでは介入しないという宇宙連合機関の基本方針に則って行動していただけだと言っていた。それなりの役職ではあるが、自分も君たちと同じ一介の職員に過ぎないと言っていたのだ。それにしてもあまりにもあらゆる点で地球人類を凌駕しているが・・・
ともあれ、りゅう君のオジサンからはオジサンが指定した日時の間ならば話しても良いと言われたので、早速地球側の首脳代表が選抜されオジサンに聞きたい内容が精査された。出来ればりゅう君の家がある平地に大型パラボラアンテナを設置してから会談を行いたかったが、さすがに機材設営が間に合わず日本側のベースキャンプからの中継となった。今回はヘルメットに搭載した小型アクションカメラを使うのではなく、テレビ局が使うプロ仕様の高性能高画質カメラがりゅう君の家の中にある立体通信装置の前に設営された。また、対面には大型スクリーンが設置され、そこで各国首脳がネット通信で対話することになった。これらの機材の設置はりゅう君の素晴らしい運搬能力のおかげで実現した。
そうして準備を整えていき、いよいよ約束の日になり、りゅう君のオジサンと世界各国の首脳会談が開かれた。限られた時間ではあるが地球からは様々なことがオジサンに大して質問され、それら全てに対してオジサンが知っている限りにおいては隠すことなく答えれくれた。それらの質問のうち幾つか記載しよう。
「宇宙は一体どれくらいあるのか?」
「沢山だ」
「沢山とは一体どれくらいの数なのか?」
「数えた頃がないから分からんが沢山だ。多分ワシらの知らん宇宙もあるだろうから幾つあるのか我々にも皆目分からん」
「我々地球人と文化的な交流は出来ないか?」
「出来ない、そもそも我々は身体がデカ過ぎてゲートを通過出来ないから物理的にそちらへ行けない。そして我々がいるのは君達地球人類がいる宇宙とは別の宇宙であり、我々が知る範囲では別々の宇宙を行き来するにはゲートを用いるしかない」
「さらに、君達の宇宙と我々の宇宙の直接的交流が出来ない理由としては、こちらの宇宙連合憲章に反するので出来ないのだ」
「ゲートは誰が何の目的で作ったのか?」
「すごい宇宙人達に聞かないと分からないが、もうだいぶ昔に彼らはどこか他の宇宙に行ってしまったので分からない」
「ひょっとしたら君達の星をサンプリングして、テラホーミングに何か活かすためだったのかもしれないし、君等に何かを伝えたかったからなのかもしれない。あるいはこれはワシの想像に過ぎないが、今では優と名乗っている宇宙をぶっ壊した最強の【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】人であるアヤツを解放してもよい時期が近づいていたからかもしれない」
「ともあれ、我々は君等がゲートと呼ぶ世界に関しては一切干渉しない。一応監視役をつけていたがそれは優と名乗る最強の【♪ー♪♪ー♪♪♪♪】人を監視するためであり君等を監視するためではない。そこで君等が得たものは君等の自由だし、仮に君達がその世界を破壊しようとも我々は干渉しない。その前に甥に帰還命令を出すぐらいだ」
「これからもこうした会談をしてもらえるか?」
「私も忙しい身なので頻繁には出来ないし、私のプライベートな時間も大切にしたい。だが、甥が大分世話になったようなので極力協力はしよう」
以上、会談内容のごく一部ではあるが、こうしてオジサンと地球側の世界各国の首脳会談は実施されたのであった。
この内容は全世界に公開され、地球外知的生命体の存在、それも別の宇宙にいる存在という衝撃的な内容で人類の歴史が大いに変革する起点となった。しかしだからといって、すぐに世界に変革が起きたかというとそうはならず、世界各国の人間社会、社会情勢は相変らず現状を維持したままであった。それでもこの衝撃的事実により地球人類社会はまた新たな前進をすることは間違いなかった。
それら全てが冴えない一人の男、冴内 洋の出現によってもたらされたのであるが、そんなことはまったくもって1ミリの隙間もなく頭の片隅にもなかった冴内は数日ぶりの家族水入らずで幸せに暮らしていたのであった・・・
そうして舞台は次のステージへと進む・・・