100:美衣、2日で英国ゲート村到着
美衣はストーンヘンジ・ゲート方面に飛んで行ったが冴内はいったん麓に降りて、機関本部に美衣がストーンヘンジ・ゲート方面に向かったことと、左斜め側に恐らくナスカの地上絵ゲートと思われるシーカー達のテントや仮設建築物を発見したことを告げた。また、山の頂上にアンテナを設置出来れば彼等と連絡を取れるかもしれないと提案した。既にりゅう君は英国シーカーやペルーのシーカー達から目撃されているのでこれで世界が繋がっていることが完全に証明確認されることになった。りゅう君の家の近くに一際高い三つの山があったが、その山のそれぞれの斜面は日本、英国、ペルーのゲート世界に面していたのだ。
日本側のベースキャンプは既にゲート村と無線が繋がっているのでこの報はすぐに伝わり、いったん外の世界を経由してイギリスとペルーに伝わった。世界機関から大型のパラボラアンテナを部品状態にバラしてゲート内に運び入れ、現地で組み立てる案が立案された。山の頂上へはりゅう君に手伝ってもらえるかどうか冴内は頼んでみたところ
「冴内殿には、それがしの名前を頂いたどころか、干し柿までたくさん頂いた恩義がある。拙者に出来ることならば何でも喜んでお手伝い仕りまする」
と、だからどうして口調が時代劇なんだとツッコミたくなる程二つ返事で受け入れてくれた。
ちなみにりゅう君とオジサンの通信装置があればゲート世界どころか地球とだって、いや、別の宇宙とだって立体でしかも何光年も離れていてもタイムラグなしで通話が出来るのだが、さすがに冴内は冴えないヤツなのでそんな重要なところには全く気づかなかった。優については気付く気付かない以前に気にも留めてなかった。冴内以外の人間のやることには余計な口出しはしない方針だった。そんなわけで数か月後には3か国同時通信が可能になった。
一方の美衣は当然携帯端末も何も持たない身で英国側ゲート世界に領空侵犯した。とはいえ撃墜可能な手段もなければ敵ともみなしておらず、むしろ大歓迎の身なのでそれを見上げていた英国シーカー達は大手を振って美衣を歓迎していた。スルーしてさっさとストーンヘンジ・ゲートに向かおうと思った美衣だったがあることに気が付いて英国シーカーキャンプに降り立った。
美衣はユーマから降りるときですらもチョップをかかげていちいちキメポーズをとるものだから、そのありえない程この世のものとは思えない程の美しさも相まってまさしく英雄崇拝された。全員英国人であるにも関わらずまるで武家社会のように平服されそうになったが、美衣はスタスタと近づいて米を炊くための鍋を貸してくれと言ったのであった。そう、米、味噌、干し肉はまだユーマに吊るされたままだったのだ。ちなみに欲し魚は既に美衣が全部一度で食べ尽してしまったのでもうない。英国シーカー達は持ってるものは全てあなた様に捧げます的な勢いだったが、とりあえず鍋があればいいので小さめのフタ付き鍋を譲ってもらい、あとは板チョコを5枚もらった。美衣のとびきりの笑顔をもらって英国シーカー達は感激のあまり泣きだす者もいた。
ここからストーンヘンジ・ゲートのゲート村までどれくらいかかるかと聞いたところ、やはり日本側と同じく5000キロくらいで、しかも山あり谷あり川あり森ありなので徒歩では20日かかったそうだが、美衣が空をぶっ飛ばせは2日で着くと言って見せたのでさすが「我らの」英雄だ!と皆歓声を上げた。さらにそこで美衣もキメポーズをとりながら「見よ!ステータスオープン!」と、別に声に出さなくてもいいのにいちいちキメポーズで声をあげて左手のステータス画面、一般のシーカーとは違って黄金に輝くステータス画面を見せて【称号:英雄】を全員に見せたものだからそれはもうその場の全員がひれ伏す程の状況だった。
ちなみに英国側もさすがに優秀なだけあって、彼らのベースキャンプ場からゲート村までは通信可能にしていた。そのため美衣が2日程度でゲート村に着くといったところ、英国情報部は爆発する程の歓喜に包まれた。美衣がチョップを高らかにかかげてユーマに乗っている姿と、黄金に光り輝くステータス画面に記載されている【称号:英雄】の文字のアップ写真を見て英国ストーンヘンジ・ゲート局長のサー・アーサー・ウィリアム3世は誰はばかることなく号泣する始末だった。
そうしてミイは「では、さらばだ諸君!」と、すっかり英雄が板についたかのように話し、英国ベースキャンプを後にした。
そこからは時速200キロを超えるスピードで空をぶっ飛ばした。さすが美衣、時速200キロ程度では板チョコをかじる余裕があった。5時間程ノンストップでぶっ飛ばし途中1時間休憩して、また5時間ぶっ飛ばした。距離にして2千キロ以上移動したところで降りてその日は休むことにした。米を炊いて味噌汁を作り干し肉をあぶって食べ、近くの川で汗を流した後で身体をよく拭いて歯を磨いて寝袋に入って寝た。9時間程たっぷり寝て、起床後はまた米を炊いて味噌汁を作りチョップで川を割り魚を取って焼いて沢庵と一緒に食べた。味噌汁には近くに生えてた草とキノコを入れて具にした。またこの時残った米は全部焚いており、残った米で昼飯用におにぎりを四つ作った。生後1ヶ月ちょっとにも関わらずこのサバイバル能力、恐るべし美衣。さすが宇宙最強の【ンーンンーンンンン】人。
そうしてまた5時間ぶっ飛ばした。しかも今回は時速300キロでぶっ飛ばした。大丈夫か?ユーマ。お昼にまた休憩を挟んで朝に作ったおにぎりと、残りの干し肉全部とそこらにあった草とキノコを入れた味噌汁を作って食べた。これで富士山麓ゲートの集落からもらった食材は全て食べ尽した。食後の休憩を十分にとった後でまたしても時速300キロでぶっ飛ばした。今度は1時間も進むと小さな集落のようなものを目にするようになった。さらに進むにつれて集落が増えていき3時間後には人も多く栄えた感じになってきた。そうして午後6時頃にミイは英国ゲート村に到着した。またしてもキメポーズで降りたもんだから周りは歓喜の渦に包まれまさに英雄降臨の図だった。
そして英国の大地に降り立った英雄は開口一番こう言った。
「諸君!お父ちゃんの記憶でここの海産物は絶品だと知った!それを是非とも食べたくてやってきた!我にその美味を味わわせてくれ!」
まだ生後1ヶ月ちょっとなのになんとも尊大な言い回しであったが、この場にいる全員は1ミリもそんなことは思わず、むしろそのお言葉を有難く受け止めて全員総出で大歓迎会を開くことになった。
もうヤンヤヤンヤの大騒ぎでその日を国の祝日にしようとまで言い出し始める始末だった。