3.14 目覚メ
どうも、ギンカガミです。
グラジオと一緒に、異世界転生小説書いたりしていますが、
今回は個人で(ホラー苦手なくせに)ホラーに挑戦!
キーボードを打つてがガタガタ震えますが何とか1話目を書きました…。
そんなこんなで、全身全霊のホラー、お楽しみ(?)ください!
目が覚めると、車両内には誰もいなかった。
最後に記憶があるのは、乗車駅から2駅程進んだ所だ。
まずい、寝過ごしたかもしれない。
今はどこかと、窓の外に目をやる。
窓の外には、何も見えない。
線路沿いならば、街灯のひとつでもありそうなものだし、車両からの光で多少は何か見えるんじゃないだろうか。
いったい自分はどこまで来てしまったんだ?
そう考えながら、眠気を覚ますために立ち上がる。
「とりあえず、次の駅で降りないとな。」
ほかの乗客はいないから、遠慮することもないだろう。
大きく伸びをする。
そして、次の停車駅を確認するため、電光掲示板を見る。
見慣れた、不審物注意や通話禁止などの文字が下の方に流れる一方で、
その上、駅名が表示されるべき場所には、見慣れぬ文字が表示されている。
「次は 繝「繝峨Ξ繝翫う」
何度目をこすっても、そこにはそう表示されている。
「……うーん?」
自分が乗っている列車は、首都圏から北に伸びていく路線だ。
そして、その路線の駅名には、少なくとも、「Ξ」のようなわけのわからない記号は使われていない。
この明らかな異常がいまいち吞み込めず、とりあえず先頭車両に移動しようと考える。
さすがに、運転席の窓からは何かが見えるだろう。
先頭車両に向かって歩いていく。乗っていたのは10号車。
先頭車両は15号車だ。
すぐにたどり着く…はず、なんだ、が。
おかしい。
車両間のドアを何度開けても、次の車両の奥にはドアがある。
反対方向に来てしまった可能性も考えたが、もう20回以上ドアを開けたと思う。
「あ、そうだ。電光掲示板。」
電光掲示板の右下に、号車番号が書いてあるだろう。
そんなわけで目をやると、「π」と書いてある。
「は?」
意味が分からない。
前の車両に戻って、また号車番号を見てみる。
「Ω」
さらに前のものを見る。
「Σ」
小走りに号車間を移動し、番号を確認する。
「α」「δ」「φ」「β」「χ」「γ」「μ」「Ψ」「♄」「♅」「♂」「♁」「♀」「☿」「♃」「♆」
「§」「†」「〽」
数式でも見たことのないような文字すらある。
「はぁ…はぁ…」
異常である。明らかに。
「何なんだ?何なんだよ!」
長距離を走ったせいで、脇腹が痛い。
列車内で長距離を走るなんて、おかしな話だが。
その時、車内放送が流れた。
どことなく不安になるメロディに続き、電子音が停車が近いことを告げる。
「間もなくザザッ繝「繝峨Ξ繝翫う お出口は、右側…す。」
この列車は危険だ。
本能が警鐘を鳴らす。
鞄をひっつかみ、右側のドアに張り付くようにして、それが開くのを待つ。
冷汗が止まらない。
カーブで車輪がきしむ音が聞こえる。
やがて、列車は徐々に速度を落としていき、やがてその速度を0にする。
目覚めてから始めて見た、車外にあるものであるその駅は、若干古い感じはするものの、首都圏から1時間程度でたどり着く田舎の駅とほとんど変わりなかった。
聞き慣れたものと全く違う耳障りな不協和音が、聞き慣れたものと同じリズムで鳴らされると同時に、ドアがぎこちなく開く。
慌てて車外に出ると、ドアが閉まる。
乗っていた列車を見ると、2両編成である。
どういうことだ?自分は確かに車内を走った。どう考えても、2両ではなかった。
そもそも、2両編成の列車に乗った覚えもない。
混乱を抱え、駅のベンチに座る。
切れかかった電灯が点滅する。
いつもと同じはずなのに、なぜか不穏に聞こえる発車ベルがプルルルとなり、電車はテールランプを煌々と光らせ、走り去っていく。
「ふう。」
コーヒーでも飲んで落ち着こう。
自販機に硬貨を入れて、ボタンを押す。
指先が震えたが、コーヒーはきちんと取り出し口に落ちてきた。
プルタブを開けて、中の液体を口に含む。
口の中に苦みと酸味が広がる。
ほう、とため息をついた。
列車を降りてからは、別段おかしなこともない。
なんだ、やっぱり大丈夫じゃないか。
さっきの列車は明らかにおかしかったが、それは帰った後で考えることにしよう。
「さて、と」
まずはここがどこなのかの確認。それから、帰るための切符も買わなくては。
田舎の駅なので、のぼりとくだり、2つのホームしかなく、改札の中には券売機もないようなので、
一旦改札を通り抜ける。
駅員はいなかった。
改札を抜けてすぐに右に曲がると、少し古ぼけた券売機が2つ置いてある。
さて、ここはどこだ?
料金表を見るべく、上を向く。
――――繝「繝峨Ξ繝翫う(現在地)―――――豁サ(220π)―――――
2つだけ。
料金表には、今いる駅と、もう1駅、計2つの駅名しか書かれていない。
これではいくらの切符を買えばいいかわからない。
とりあえず、最高額の切符を買って、足りない分は後で清算しよう。
そう思い、「おとな」のボタンを押す。
タッチパネルに表示されたのは、「220π」のみ。
「はぁ?」
本当にこれしかないのか。
そもそも、少なくとも2駅以上を通過した記憶はある。
第一、「π」とはなんだ。計算しろというのか?
小数方向に50兆を優に超える数字を持つ円周率をかけて、料金として払えるような整数が出るわけもない。
「なんなんだよ…」
…待てよ?この「220π」、計算すれば700程度だろう。
1000円もあれば足りるはずだ。そう思い、千円札を券売機に投入する。
「ガー」という音とともに吸い込まれていった。
かと思ったら、「ガー」という音とともに1000円札が吐き出される。
パネルには、「この紙幣は利用できません。」と表示される。
苛立ちを覚えつつ、今度は硬貨で投入。
同じく戻ってきた。
隣の券売機でも同じ結果。
本当に意味が分からない。
この紙幣も硬貨も、絶対に本物だ。
となると、おかしいのはこの機械。
券売機を睨みつける。
すると、上部に描かれたICカードのロゴに気付いた。
うっかりしていた。自分は今、ICカードでここまで乗ってきたんじゃないか。
帰りもまたそうすればいいだけの話。
やはり、不安や苛立ちがあると、頭は回らないようだ。
再び改札を通るため、ICカードを改札にかざす。
反応はない。
それもそのはず、ICカードをかざす部分がない。
出るときには使えるのに、入るときは使えない。
こんな馬鹿な話があるか。
改札を飛び越えて入ってやろうかとも思ったが、さすがにそれはやめておいた。
仕方がない。今日はこの辺で一泊しよう。駅があるんだから、住人はいるはずだ。
頼んで泊めてもらおう。
なに、言語が通じるんだから、さして心配はない。
そう思って駅を出て、コンクリートで舗装された道を歩き始める。
左手には田んぼ、右手には線路。その線路の奥には森。
街灯があるので、足元はそこまで不安じゃない。
もっとも、少し不気味ではあるが。
そういえば、とスマートフォンを開く。
地図アプリを使って、建物を探そう。初めからそうすればよかった。
時刻は3時14分だった。
地図アプリを開いて、位置情報をONにする。
マップ上に表示された、自分が今いる場所を示すピンは、森の中に立っていた。
どう見ても間違いなく、森の中。
しかし周りを見ると、そこはどうみても、田舎の風景が広がっている。
田んぼ、駅、線路。自分の周りに確かにあるものが、地図の上では何もない。
不気味だ。
引いていた冷汗がまた流れだす。
…とりあえず、もう少し歩いてみよう。
交番や公民館があるかもしれない。
***
1時間ほど線路沿いの道路を歩いたが、何もない。
それどころか、街灯すら減ってきている。
不安と恐怖で胸が押しつぶされそうになる。
もう深夜どころか、早朝に近いこともあり、疲労もひどい。
仕方がないので、ここで野宿することにしよう。
こうも暗くては、探索も出来ないし、何より眠すぎる。
列車の中で寝たとはいえ、さほど長い時間でもなく、深い眠りでもなかった。
さすがに田んぼで寝ると怒られそうだ。反対側の草むらに鞄を放り投げ、身をうずめる。
野生動物なんかの危険もあるのかもしれないが、知ったことか。
目を閉じた。意識が遠のいていく。
***
目が覚めると、自分は草の中にいた。
当然だ。道端の草むらで野宿をしたのだから。
起き上がって伸びをする。
鳥居が目に入る。
当然…え?
昨夜は確かに無かったはず。
いや、あったのに、眠すぎて気が付かなかったのだろうか。
とりあえず、誰か人がいるかもしれない。
鳥居をくぐって、階段を上る。
もちろん、鳥居をくぐる前の礼は忘れずに。
長い階段を登り切り、境内に足を踏み入れる。
無人のようで、小さな本殿がある。
どうせなので、お賽銭をしていこう。
そう思い、財布から5円玉を取り出す。
丸い形をした珍しい賽銭箱に投げ入れ、2礼2拍手1礼。
人はいなかったが、建物はあることは分かった。
階段を下り、再び礼をして鳥居をくぐる。田んぼが広がっている。
右を向き、歩き出そうと足を踏み出して、足を止める。
田んぼが広がっている?鳥居をくぐったら?
昨日歩いていた道は、左手に田んぼ、右手に線路があった。
これは確かだ。
今、自分の左手には田んぼが広がっている。
つまり、昨日と同じ方向に向かって進んでいる。
昨夜眠ったときも、自分は田んぼと反対側、つまり進行方向向かって右の、線路側の草むらで寝た。
そして今、自分の右手側には、鳥居がある。
線路は、ない。自分が寝ていた場所は、鳥居の横。
その部分の草は倒れていて、自分がいた事は確実だ。
訳が分からなくなってきた。
風がサァっと通り過ぎる。
訳が分からなくなってきた。
お読みいただきありがとうございました!
ブクマ、いいねなどとっても嬉しいです!
続きは私の気力とブクマといいねなどによって書こうと思います。
なのでぜひブクマなどなどよろしくお願いしまs(((
また、共同サークル垢のほうの、異世界スローライフ「下校中に異世界に飛ばされたので気ままにスローライフしていきます!」もよければぜひお読みください!
それではまた!