第二話 2017年11月
第二話 2017年11月
僕はまだ14年間、この地域から出たことがない。若いけど僕にも大事な友達はいるし、好きな人だっている。
この人たちはこれからもこの先もずっと一緒にいたい。いたいというか消えることのないものだと、
そう疑うことはなかった。
「おーい、遅れるぞ」
勇太が急かしてきた。
「今行くから」
これから音楽の授業。僕たちは音楽室に向かっている。
「お前最近どうなんだよ」
「どうって何が」
「何がじゃないだろ。南のことだよ。」
「別に変わらず付き合ってるよ。もうすぐ1年経つ。」
「なんだよ、なんか冷たくねぇか。」
「もちろん好きだよ。大事に思って…」
「おっ!さすが!言うことが違うねぇ!」
勇太はすぐ冷やかすから、いつも冷たく対応するが今回は口を滑らしてしまった。
そう。
南は僕の彼女だ。普通に美人だし誰ともフレンドリーな女の子。なんで僕となんかこんなに付き合ってくれているのか深層心理はわからない。
今日の帰り道にでも聞いてみるか。そんな淡い感情を持ちながら音楽室に入った。
今日の帰り道。
南と一緒に帰っている。いつものこと。
一年生の時にクラスが一緒だった。最初の席が近かっただけでこんな関係性になるなんて思わなかった。
「そっちのクラスは合唱コンクール何歌うの??」
陽気で心地のいい声が僕に届く。
「コスモスだよ」
「いいなぁ、こっちは『信じる』だよ。ちょっと怖い曲」
南は口を尖らせ、顔を引き攣らせながら言った。その表情も愛らしい。
「コスモスを選んだクラスは必ず賞取れるジンクスがあるんだって」
「えっ!?そうなの!?私のクラス負けちゃうの…?」
そんな悲しい顔しなくてもいいのに、それすら美しいなんてずるいよ。
「そんなこと言われたら金賞狙えないじゃん」
「引っ掛かったなぁ!それが私の作戦!」
その悪戯な笑顔もまた魅力的だな。いろいろな方向から彼女を見ているのに、どんどん惹かれていく。いつも南のペースだけどそれが僕にとっては心地良い。
「じゃあまた明日ね」
「うん!またね!」
僕は南の家まで送って引き返した。この恐ることはない時間は永遠に続く。続けたい。そう確かに信じていた。
「そう言えば何で自分と付き合っているのか聞くの忘れた。まぁいいか。明日聞こう。」