表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぎょぴ天 〜金魚たちへのRequiem〜  作者: ぎょぴmaster
1/2

第一章 ぎょぴ一世 コメット

一章

ぎょぴ一世 コメット

この時期になると思い出す。

 ゴールデンウィーク。

 弘前城桜祭り。

 そこの屋台の金魚釣り堀で保護した。

 金魚つり、とは、釣り針が3本まとまったようなフックで金魚を引っ掛けるというもの。

 フックは、いかにも切れそうな細い裁縫糸に結ばれ、竿は、笹?のように細い、しなるより先に折れそうな竹の延べ竿、長さ大体50センチくらいか、のシンプルな作り。手荒く扱うとすぐに糸が切れる仕様だ。

 金魚は、一尺はあるような巨大和金が主体。ちょっとサイズダウンして、琉金っぽい和金とか、形は和金だけど、色が白、黒、赤の3色だったりのいわゆるミックス金魚がいたりする。

 お客の大半は、小学生以下の子供。荒くれ真っ最中の彼等が相手なので、金魚側の損耗率はかなりのモノだと想像できる。現に、一番のビックサイズ和金は、体側の右にフック2個、左に一個、かなりの被弾だ。

 そんな中、一際長い尾鰭を揺らす白銀の魚体が目に入った。頭頂部に紅い斑点。体長10センチ程でお手頃サイズ。被弾も、鱗剥げもなし。


 よし、救ってやろう。


 祭りの後、釣り堀に残った金魚たちはどうなるか。単品での商品価値などほぼ無いに等しい。推して知るべし…。

 釣り針は、口に掛けるのがいい。口以外にかかる事を『スレ』といい、痛いから暴れるし、釣り上げた後も高確率で死ぬ。口に掛ければ頭だけを水面からひっぱりだして空気を吸わせ酸欠状態にもちこめる。そうなればこっちのもの。どんなにちゃちな糸だろうが、暴れなければどうと言う事はない。

 かくして、赤斑点殿は釣り上げられ、水とエアでパンパンになったビニール袋に入れられたのだった。

 あ、これ持って公園歩くのも、ねぇ。

 花見は、亀子門から数百メートルで、終わった。

 あくる日、早起きして、近所のホムセンへ。金魚元気Sという濾過システム付き水槽セットを買って早速セット。

 実家は井戸水なのでバケツにビニール袋から水ごと赤斑点殿をあけ、井戸水を追加してならす。半日置いて水が温んだところで、水槽に水ごと移す。

 きまった…。いい感じ。ここで気がつく。   赤斑点殿、体側は、白銀単色なのね。釣り堀では上からしか見れないから気が付かなかったよ。水槽だと、サイドビューがメイン。そうだな、君は今日から、赤斑点改め、ぎょぴ一世だ。

 君には、これから試練が待っている。それは弘前市から、東京都世田谷区までの移送だ。頑張ってくれたまえ。

 という事で東北自動車道で7時間。クルマの助手席で揺られ、床をビシャビシャにし、着いた頃には、半分以下に水位が下がりながらも無事移送は成功したのだった。

 世田谷区の自宅に付き、窓際だけど直射日光が当たらないところに水槽を安置。水を足して一安心。長時間の運転で疲れたので電池が切れるが如く寝たのだった。


 朝が来た。外は快晴清々しい。

 ぎょぴ一世はどうしてるかな、水槽に目をやる。

 …白い。

 水が白濁している!

 エアレーションは、出てる。

 ぎょぴ一世は?

 エアレーションで出来た縦向きの水流に乗って、上へ下へ、クルクル回っていた。

 しばらくそれを眺めていた。

 その後そっと取り上げて、近所の神社の境内に埋めることにした。


ぎょぴ一世

 飼育日数 3日

 死因 東京都の水道水に含まれた塩素中毒による溺死

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ