幼少
初めまして、初投稿となりましたこの花は舞台に狂い咲く
ぼちぼち投稿していきますので是非ご覧ください
「お母さま、お母さま。今日お父様はどこへ行かれたの?」
無邪気で幼い声が室内に響き渡る。
母は優しく花のように可愛らしい娘の、柔らかい頬にそっと手をあてる。
「お父さまは今日お仕事なのよ。この国で一番お偉い方に謁見しているのよ」
「じゃあ、お父様は偉いんだ!」
「そうよ、お父さまは偉いの。この国のために頑張ってるのよ」
自分の父がどのくらい偉いかだなんてものはまだ齢七つにもなっていない女子には理解ができなかった。
ただそれでもお父さまは偉くてすごい人なんだ。その事実だけは幼子心にも理解ができた。
「姉さまは父さまが好きなの?」
温もりの感じられない声が、幼い声のはずなのにどこか心を潰されてしまいそうな声。
「勿論好き!だってお父さまはお国のために毎日頑張ってるんだよ!かっこいいもん」
妹はどこかつまらなそうな声でふーん、と漏らすと手に持っていた玩具で遊び始める。
もっと小さい頃からそうだった。幼い見た目とは反対にどこか愛らしさを感じさせない冷酷な声に目。
見た目は可愛らしい幼い娘なのに知だけは同年代の娘に比べればずば抜けた才能を持っていた。
「エヴァは好きじゃないの?」
不思議だった。いつも妹の凛が毎日頑張っているお父さまが嫌いな理由。
「嫌い。だって父さまは私たちのこと好きじゃないもん」
だって、いっつも一緒にいてくれない。
これには拍子抜けしたのを覚えている。
いつもいつもあんなに冷たい大人びた妹が可愛らしい幼女のような理由を持っていたから。
もっと大きな理由だと思っていた。
だけどそれでも妹はお父さまを嫌うばかりでそのまま成長していった。
あの小さな悩みはもうきっと聞けない。
弱みは握らせない妹があんな悩みをこぼすだなんてもう二度とないだろう。
私は、お父さまが大好きなのに。