7話 大浴場の惨劇と、ディナータイム
聖王女アスカ(7話)
アスカ達が妖花の森から出てくると、そこにはルドルフが立っていた。
「賢者様!?」
「ほっほーっ! 久しぶりじゃのうアスカ殿、孫のミツキは役に立っておりますかな?」
「はい! ミツキのおかげで妖花の森を攻略できました」
ミツキは、照れて微笑んだ。
「して、オーブはあったかのう?」
「はい……これですね」
「うむ、まさしくそうじゃろう。して、アスカ殿、他のオーブのありかじゃが……」
「はい」
「やはり、この世界の4大大陸に1つずつあるようじゃ」
「分かりました」
4大大陸とは、アスカの母国プリンティアがある大陸、砂漠の国サマーサがある大陸、火山と紅葉の国オーランドがある大陸、氷と水の国ウィンダムがある大陸の4つの大陸である。
それぞれ世界の東西南北に海を隔てて位置し、プリンティアは東、サマーサは南、オーランドは東、ウィンダムは北にあった。
「して、サマーサのピラミッドにオーブがあるらしい」
「では、私達はサマーサに向かいます」
「うむ、それからアスカ殿、魔王の配下もオーブを狙っておるそうじゃ、くれぐれを気を付けるんじゃ」
「はい……」
「では、何か分かればまた伝えにくるからの。他のオーブの場所も探さんといかんしな」
「はい、賢者様もお気をつけて」
「ミツキ、気を付けて旅をするじゃぞ」
「うん、おじいちゃんも気を付けてね」
ルドルフは、ニッと笑い、飛翔の魔法で飛んで去った。
「サマーサね……」
「プリンティアの西に港があって確か定期船が出ているはずですわ」
「じゃあ、そこに行きましょう」
数日後、西の港に着いた。
港は、定期船発着場の他、とれたての魚料理のレストラン、宿泊施設などがあった。
「今日は、ここの宿に泊まりましょう」
「はい」
「ね、アスカ、レストランにご飯に行こうよ」
「そうね、良い息抜きなるかも知れないわね。行きましょう!」
「うん!」
「ライデンもどう?」
「ああ、たまには良いかも知れんな、付き合おう」
「じゃあ、夕方に待ち合わせましょう」
「分かった」
アスカ達は、宿で宿泊の手続きを済ませ、アスカ、エリス、ミツキが同室で、ライデンは一人部屋に泊まることになった。
アスカ達は、荷物を下ろした後、大浴場に向かった。
「はぁ~、やっぱいいわね……お風呂は……」
「はい……疲れも飛んでいっちゃいますね」
「気持ちいい……」
アスカ達、3人が湯船に浸かっていると、その頃、ライデンも大浴場に来ていた。
「ふぅ……」
「ん? やけに王女様達の声が聞こえるな?」
「そりゃそーじゃろ、ここは混浴じゃからな」
「ルドルフ殿!?」
「シーッ……声が大きい……」
「あ、ああ……しかし、混浴というのは本当か?」
「ウム、堂々と覗けるぞい」
「……俺は上がる」
「どこまでも固いやつじゃのう……ほんとは覗きたいんじゃろう?」
ライデンは、黙って風呂から出ていった。
岩を隔てた先にアスカ達は入っており、ルドルフは岩の陰からそーっと覗いた。
(おおーっ! 絶景じゃ! 生きてて良かった……)
ルドルフから、湯船に浸かっているアスカ達が見えた。
(しかし、湯煙で肝心なとこは見えぬわ……)
ルドルフは、目をこらしアスカ達をジーッと見つめたが、やはり肝心なところは見えない。
「!?」
(この気配……まさか……おじいちゃん!?)
「ミツキ、どうしたの?」
「あ、うん……ちょっと……アスカ、エリスさん、湯船に深く浸かっててね……」
ミツキは、辺りを見回した。
(まずい!)
ルドルフは、サッと岩陰に隠れたが……
ミツキは、見逃さなかった。
ルドルフのスケベ心には、偵察機も真っ青の鋭さを見せる。
(やっぱり……あのジジイ……)
ミツキは、鬼すら可愛く思える形相に変貌した。
「アスカ、エリスさん……私達覗かれてるわ……」
「えっ!?」
「きゃっ!」
アスカとエリスは、慌てて湯船に深く浸かった。
「ど、どうしよう……」
アスカとエリスは、顔が真っ赤っかである。
3人とも混浴とは知らなかったので、裸である。
「大丈夫よ……」
ミツキは、魔法を発動し、霧を発生させた。
「凄い……」
「ミツキってこんなことまでできるんだ……」
「さっ、先にあがってね」
「ミツキはどうするの?」
「私は、ちょっとすることがあるの」
「そうなの? 湯冷めしないようにね」
「うん」
ミツキは、天使のような笑顔で見送った後、大魔神のように再び恐ろしい形相に変貌した。
「サンダーボルト!」
「ギエエエエッ!!」
ルドルフは、全身の隅々まで激しく感電し、水面に浮いて漂った。
「ふんっ! 反省しなさい!」
(わ、儂は……いつか孫に殺されるかも知れぬ……)
その頃、アスカ達は……
「ラ、ライデン……」
「ん? 王女様達か」
「ライデン……あなた……」
「ん? どうした?」
「ライデン……」
「アスカ様、ライデンに限ってそんなことは……」
「どうしたんだ?」
「ライデンさんは、覗いたりしないわ」
ミツキも、大浴場から出てきた。
「!?」
「そ、そうよね!」
「ご、ごめんなさい……」
(なるほど……まさか覗き魔と疑われていたとはな……ルドルフ殿はどうなったんだ?)
夕方、アスカ達は、港のレストランに向かった。
このレストランは、新鮮な魚介類の料理の評判が良かった。
アスカ達は、何を頼もうかメニューを見ていた。
(うーん、どれも美味しそうだけど、ちょっと高いなぁ……)
「よく分からないけど、この一番多い、盛り合わせみたいなのを頼みましょうか?」
「えっ!?」
「ア、アスカ……これ高いよ? 大丈夫?」
「え? 平気よ、ミツキも好きなものを頼んでね」
(さすが、王女様ね……金銭感覚が私とは違うのね)
アスカが頼んだ、魚介類の盛り合わせは、魚、海老、カニ、イカ、タコ、貝など、港でとれる魚介類を全種類使っており、どれも新鮮で美味しそうなにおいが食欲をそそった。
更に、この国の主食であるパンや香菜のサラダなども、次々とテーブルに運ばれてきた。
「さ、みんな食べましょう」
「美味しいです!」
「すごく美味しい!」
「うまいな」
食が進み、アスカ達、女性3人は、会話が弾んだ。
(入っていけん……)
ライデンは、アスカ達のガールズトークの勢いに圧倒され、会話に入れず黙々と食べていた。
アスカ達は、大満足で食事を終え、翌朝1番の定期船でサマーサの港に渡った。