6話 妖花の森
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
聖王女アスカ(6話)
一向は、いよいよ妖花の森の入り口の前に立っていた。
「王女様、入る前に作戦を立ててくれ」
「え? 私が?」
「ああ、あなたがこのパーティーのリーダーだ。指揮をするのはあなただろう」
「で、でも……経験豊富なライデンの方が……」
「俺は、元々傭兵だ。本来指揮官じゃない。今までは経験でものを言っていたが、ここは俺も入った事がない。あなたは、王女として生まれもった器量があり、兵法も学んでいるのだろう?」
「え、ええ……」
「今まで一緒に旅をして、あなたの知恵や技量を見込んで言っている。大丈夫だ。あなたならば安心して指示を仰げる」
ライデンは、アスカに笑って言った。
アスカは、エリスとミツキを見ると、エリスとミツキも、微笑んで頷いた。
「分かったわ……じゃあ隊列を組みましょう。前からライデン、私、ミツキ、エリスで行きましょう」
「分かった」
「はい」
「うん」
「ここは、未開の地だから何が起こるか分からないわ、全員警戒を怠らず、少しでも怪しいと思ったらすぐに声をあげること。良い?」
3人は、頷いた。
「じゃあ、行きましょう」
アスカ達は、ルドルフから貰った聖水を振りかけ、森に入った。
すぐに太陽の光が届かなくなり、内部は真夜中のように暗かった。
「まずいわね……これじゃ何も見えない……」
「ここでは松明をつけると、あっという間に火事になってしまうな……」
「私に任せて!」
ミツキは、魔法力を集め、光を作り出し、辺りを照らした。
「これなら進めますね」
「ミツキ、ありがとう」
アスカ達は、森の中を進んでいった。
森の中は、地面から高い草が生い茂っていて、ライデンが大斧で払いながら少しずつ進んでいった。
「ライデン、疲れたらすぐに言ってね、あなたが疲れ果てたら前線から崩されるわ」
「分かった。今のところ大丈夫だ」
ライデンの力の強さもあり、草を凪ぎ払っていると同時に倒された魔物も多かった。
アスカ達は、更に森の奥地へと進んでいった。
「ミツキ! 危ないっ!」
「きゃっ!」
「あっ……うっ……」
エリスが、前にいたミツキを突き飛ばして庇った。
食人植物の触手が、エリスの首に巻き付いた!
エリスは、必死に振りほどこうともがいているが、振りほどけない。
「エリス!」
振り向いたアスカが目の当たりにしたのは、触手で首を絞められて宙吊りにされているエリスの姿だった。
アスカは、素早く魔法を発動し、真空波でエリスを拘束している触手を切った。
「なんて大きさなの……」
目の前には、高さ数メートルはある、巨大食人植物がいたのだ。
上部には、巨大で不気味な花が咲いており、花の中央に大人の男が一人くらい優に入る、巨大な口があった。
口には石臼のような歯が何本も生えており、触手で人を絡めとり、この口ですりつぶして食べるのだ。
(あの触手……切れたままね……)
「みんな! 触手を狙って!」
アスカは、叫ぶと同時に再び真空波を起こし、1本の触手を切った。
「うおりゃあっ!!」
ライデンは、大斧を、植物の胴体目掛けて投げつけた。
大斧が回転しながら飛んでいき、胴体に深々と刺さった。
更にライデンは、素手で植物に向かっていき、次々と触手を引きちぎった。
「風の精霊よ、集いて真空の刃を巻き起こせ!」
ミツキが、魔法を発動し、いくつもの真空波が杖から飛び出し、触手を数本切った。
「やーっ!」
エリスも体勢を立て直し、剣を抜いて、触手を切っていった。
「えいっ!」
更にアスカが、レイピアで近づいてきた触手を斬り落とした。
これで植物の触手を全て切った。
「モワ~」
植物は、上部にある口から、紫色のガスを吐き出した。
「うおっ!」
「きゃっ!」
ミツキとアスカは、とっさに風を巻き起こし、ガスを防いだが、ライデンとエリスはまともに受けてしまった。
「うぐぐ……」
「く、苦しい……」
ライデンとエリスは、青ざめた顔でのたうち回っている……
「ミツキ! ライデンとエリスは私が治療します! あなたは、斧目掛けて吹雪を放って!」
「分かった!」
アスカは、すぐに毒におかされている事を見抜き、魔法でライデンとエリスの治療をはじめた。
「飛びっきりのやつをおみまいしてあげる……」
ミツキは、魔法の詠唱を始めると、杖の赤い宝玉が真っ白に輝き、植物目掛けて振り下ろした。
宝玉から、猛烈な吹雪が巻き起こり、傷口から内部に吹雪が吹き荒れた!
「ピシッ! ピシッ……!」
植物に亀裂が入り、崩れ落ちた。
「倒した……かな?」
「凄い魔法だ……」
「見て! 光よ!」
太陽の光が森の中に差し込んでいた。
巨大な食人植物を倒した事で、森の一部に穴が開き、光が差し込んでいたのだった。
「お日様を見ると、なんだかホッとしますね」
「ええ」
エリスとアスカは、安堵の表情を浮かべ、更に奥地へと入った。
すると、赤く輝く宝玉を見つけた。
「もしかしてこれがオーブ?」
「おそらくそうじゃないかと……」
アスカ達は、レッドオーブを手に入れた。
「帰りは私に任せて!」
ミツキが、ダンジョン脱出の魔法を使った。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。