33話 エビルキメラ
読者の皆様、作者の大森林聡史です。
この度は、この小説を気にかけていただきありがとうございます。
よろしければ、内容もお読みいただけると幸いです。
宜しくお願い致します。
聖王女アスカ(33話)
アスカ達が3階に上がると、フロアの中央に、全長5メートルはある、巨大な魔物が待っていた。
「待っていたぞ、聖なる小娘」
「うっ……!」
アスカは魔物の方を向くと思わず顔をしかめた。
魔物は、悪魔の頭と竜の頭の双頭で、胴体には無気味で巨大な花があり、背中には悪魔の巨大な翼があった。
左腕は筋骨隆々の悪魔の腕で、手に禍々しく巨大な盾を持っていた。
右腕は、鉄よりも硬い鱗がビッシリ生えたドラゴンの腕で、鉄も容易に切り裂く鋭い爪を持っており、腕の外側には魚の背ビレのような形の物がついており、鋭い棘とダイヤモンドよりも高い硬度を備えていた。
更に良腕には植物の硬いツルが巻き付いていた。
下半身は、巨大な蛇となっており、通常の蛇とは逆に尻尾にあたる位置に凶悪な蛇の顔があった。
魔物は、魔王軍の合成魔獣キメラの作成中に、突然変異で産まれた、エビルキメラだった。
その強さを見込まれ、魔王城の3階の守りを任されたのだった。
「みんな気を付けて……今までの魔物とはわけが違うわ……」
アスカは皆に警戒を促した。
アスカの言葉と、魔物のただならぬ雰囲気に全員が、気を引き締めて身構えた。
「未知の敵だけど、1番有効なのはやはり聖剣だと思うの、みんな、まずは敵の手の内を見ながら対応して、隙を見て私が攻撃できるように協力して」
「確かにそれが良いだろうな」
「分かりました」
「儂とミツキは、魔法で援護に回るぞい」
「はい。X陣形をとりましょう。前がライデンとエリス、真ん中が私、後ろがルドルフ様とミツキよ」
「うん」
「みんな、未知の敵だからくれぐれも気を付けて。深追いしちゃダメよ」
全員が頷いた。
アスカ達は、全員がまずは防御の構えを取り、相手の出方を見ることにした。
「ふん……ならば見せてやろう我が力を!」
エビルキメラの悪魔の頭の目が怪しく光り、腕から稲妻が発射された。
雷の魔法を発動させたのだ。
ミツキが魔法の盾で、魔法バリアを張り、弾いた。
「く……」
今までのどの魔物の稲妻よりも威力があり、ミツキの消耗は著しかった。
「カアァァァッ!!」
今度は、エビルキメラのドラゴンの頭が口から火炎を吐いた。
ルドルフが吹雪の魔法を発動させ跳ね返した。
「やはり……威力があるのう……」
エビルキメラの火炎を跳ね返すには、ルドルフ最強の吹雪の魔法を使用しなければならなかった。
両腕のツルが、アスカ達に迫ってきた。
これは、ライデンとエリスが武器で牽制し、ツルを追い払った。
「行くわよ!」
アスカが相手の攻撃の隙に、接近し、聖剣で斬りつけようとしたが、エビルキメラの胴体の植物の花から毒ガスが吹き出し、アスカは急停止し、後退して毒ガスを避けた。
「これじゃ、なかなか近付けないわね……」
アスカは苦々しく呟いた。
「キャーッ!」
急に背後から悲鳴が響いた。
ミツキの悲鳴だった。
ミツキの首に蛇が巻き付いていた。
エビルキメラは、攻撃しながら、尻尾の蛇が床に穴を開けて、床の下から這わせ、アスカ達の背後から、奇襲を仕掛けたのだった。
「く、苦しい……」
ミツキは、首を絞められ、両手で必死に振りほどこうとしているが、非力なミツキでは全くほどけなかった。
「ああっ……」
エビルキメラの尻尾は、ミツキの首を絞めたまま、ミツキの体を宙に持ち上げた。
ミツキは足をバタバタと振っている。
「うぅぅっ……!!」
エビルキメラの尻尾は、更に力を込めてミツキの首を絞め上げ、ミツキは息を吸うことも吐くことも出来ずに、とても苦しそうに喘いだ。
「きゃぁ……!」
エビルキメラの尻尾は、ミツキの首を絞めたまま胴体をも絞め上げ、とうとうミツキは弱ってきた。
首を絞められ、呼吸が出来ず、意識は朦朧とし、目眩いがし、視線の焦点は定まらず、絞められた首はもう感覚が無かった。
首を絞めている、蛇を振りほどこうとしていた両手は、力が抜けだらんと落ちた。
いよいよ、蛇が大きな口を開け、ミツキを頭から飲み込もうとした。
「よくも儂の可愛いミツキを!」
ルドルフが今までに見せたことの無いような、凄まじい怒りの形相で飛び上がり、蛇の頭に向かって鋼の棍を振り下ろした。
蛇は、ルドルフの接近に気付き、身をかわそうとしたが、それよりもルドルフのスピードの方がとても早く、ルドルフの鋼の棍は、蛇の脳天を的確に捉え叩き潰した。
ミツキは拘束がとけて落下した。
「ミツキ! ライデン、エリス! 私はミツキを助けに行くわ! それまで何とか凌いで!」
「おう!」
「任せてください!」
素早いアスカが、俊足を飛ばし落下するミツキを受け止めに走りながら、叫んだ。
(間に合って!)
アスカは心の中で叫び、ヘッドスライディングのように滑り込みながら、ミツキを受け止めた。
アスカは、すぐにミツキに回復魔法をかけた。
ミツキは、気を失いかけていたが、迅速な回復魔法をうけ、すぐに目を覚ました。
「あ……アスカ……」
「大丈夫!?」
「うん……平気……アスカが助けてくれたのね?」
アスカは、ミツキが目を覚ましたのを見て、安堵し微笑んだ。
「いいえ、ルドルフ様よ。あなたが攻撃されたのを見て、すごく怒ってたわ」
「おじいちゃんが……」
「ミツキ、立てるわね? まだ戦いは続いてるわ、行きましょう」
「うん」
アスカとミツキが立ち上がり、前を見た時に、ライデン、エリス、ルドルフがエビルキメラと激しい戦いを繰り広げていた。
少し前……ルドルフとアスカがミツキを助けに行ったのを見て、ライデンが叫んだ。
「エリス! 王女様の言う通り、奴の正面からの攻撃を俺達で防ぐぞ!」
「ええ!」
エビルキメラのドラゴンの頭が、再び炎を吐き、ライデンとエリスは左右に飛んで避けた。
「フリーザーショット!!」
エビルキメラの悪魔の目が怪しく光り、腕から魔法で巨大な氷の塊をライデン目掛け飛ばした。
「ムン!!」
ライデンは、氷の塊をガッチリと受け止めた。
「ぬっ……! ぬおおおおおっ!!」
更に両腕に力を込めて氷の塊を粉々に打ち砕いた。
ライデンを攻撃したと同時に、左腕のツルをエリスに向け飛ばした。
「くっ……」
エリスは避けられないと悟り、とっさに海竜の盾で防御の構えをとった。
「えっ!?」
ツルがムチのようにしなり、海竜の盾ごと、エリスの腕を絡めとった。
エビルキメラは、ツルでエリスを引っ張ろうと力を込めた。
「なによ! このくらい!!」
エリスも腕に力を込め、堪えた。
「ぬっ……こやつ……女の分際でなんて力をしておるのだ!?」
「女だからってなめるんじゃないわよ!!」
エリスは、強く言い返し、炎の剣に炎をため、一気にツルを切り落とした。
「ぬ、ぬおっ!」
エビルキメラのツルに火が走り、焼き落とした。
「おのれ……!」
エビルキメラの胴体の花から、麻痺ガスが吹き出した。
「思い通りにはさせぬぞ!」
ミツキを助けた、ルドルフが駆け付け、強力な風の魔法で、暴風を起こし、麻痺ガスを跳ね返した。
「ルドルフ様!」
エリスが名を叫んだ。
「二人とも、アスカ殿が戻ってくるまで儂らで防ぐぞい!」
「おう!」
「はい!」
3人は、応戦の構えをとった。
「ぬぬぬ……こやつら……やりおるわ……」
エビルキメラは、これだけ攻め立てながらも凌ぐ、アスカ達に、苛立っていた。
エビルキメラは、強さだけなら、魔王軍三大軍団長はおろか、それらを束ねる魔王軍団長アークデーモンよりも上で、ここまで苦戦した事は無かったのだった。
「みんな! 大丈夫!?」
アスカとミツキが駆け付けた。
「アスカ様!」
「ああ! 大丈夫だ!」
エリスとライデンが、アスカが戻ってきて、歓声をあげた。
「ミツキ、大丈夫かの?」
ルドルフは、心配そうにミツキに尋ねた。
その表情は、可愛い孫娘に向けた優しい祖父の顔だった。
「うん、ありがと。おじいちゃん!」
ミツキは、満面の笑みを浮かべ答えた。
「さぁ、みんな! まだまだ戦いは続くわよ! でも絶対勝てるわ!!」
「おう!」
「はい!」
「ウム!」
「うん!」
アスカが仲間達に激を飛ばし、仲間達も力強く答えた。
アスカの言う通り戦いはまだまだ続く。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
長い文章に、お付き合いいただき、心より感謝申し上げます。




