大規模な襲撃に成るぞ……
「しかも、エンプレスともなれば、さらにクイーン共より二回りは大きい」
オーウェンはそう言うとため息を付く。
「して、お前さん、さっき最悪な事にと、言ってコイツをワシらに見せたが?」
「うむ、ゴブリン共は、知性も低く、自我も持ち合わせて居らん。だが、同族を殺した者への復讐心は、尋常じゃ無い。普通のゴブリン一匹を殺しただけで、大規模な襲撃に合う。まして、今、此処に転がっているのは、一族を生み増やす次世代のコロニーを担うクイーンだ」
「成るほど、苛烈な襲撃に合うかもしれんと云う事だな」
「ああ、間違いなくな。もしかすると、クイーンまで出張ってくるかもしれん。下手をすると、エンプレスの御出馬も無いとは言い切れん。まったく厄介な事だ」
「おいおい、オーウェンの旦那、エンプレスともなれば、単にデカいだけじゃ無えぜ。先ず、間違い無く色付きの魔力結晶を持ってる筈だ。魔法をぶっ放してくるぜ……」
「そうなれば、今までの様に立て籠もるだけ、と云う分けにも行かんかも知れんな……」
「ハァ?ミスター・クレイグ、まさか私達にクイーンと戦えと云うんじゃ無いでしょうね?冗談じゃない。まして、エンプレスとやり合うなんて、自殺行為でしかない」
ホバートが昨日と同様、いびつな作り笑顔を崩さず、オーウェンに抗議する。
「アンタら三人には感謝している。町の危機に駆けつけてくれて、その後も残ってくれた。此処で、去ってくれても文句は言わんよ」
オーウェンのその言葉に老兵は不敵な笑みを浮かべる。
「儂らは残らせて貰おう。クイーンやエンプレスとやり合えるなど、またと無い機会。孫の修行には持ってこいじゃ。クライド、異存は無かろうな?」
「ヘイヘイ、爺ちゃん、仰せのままに」
「そうか、感謝する。ホバート、アンタは?」
「私はクイーンやエンプレスなどと戦うなんて御免ですよ。だが、此処であなた達を見捨てて行くほど、臆病者でも、人でなしでも有りませんよ。そうですね、私の仕事は、あくまでも住民の保護に徹っさせて貰う、と云う事で如何ですかな?」
「うむ、それで十分だ。よろしく頼む」
そこへ、背後から蹄の音。
「スマン、遅くなった……昨日の酒がまだ残っててな……」
そう言いながら、レナードは馬から降り、此方の輪に加わる。
ジムと、オーウェンがレナードに経緯を話し、クイーンの幼生体の骸を見せる。
「おいおい、マジかよ…………分った、さすがにクイーンの幼生体を放り込まれたって事なら、あのハゲ……もとい、中佐殿も動くかも知れん。今から砦に向かおう」
そう言うと、今降りたばかりの馬の方へ歩き出す。
今から砦に、向かうだと……!?




