ゴブリンの死骸
開けた所を見つけ、その地面にかなり大きな魔法陣を描く。
目的の物が、目的の数収まるほどだ。
一つ一つ錬成したのでは手間がかかり過ぎる。
それでは、今日中には錬成しきれん。
一度に全てを錬成する必要が有るからな。
「さて、魔力結晶だが、これを使えば良かろう」
オーウェンから受け取ったオーガの魔力結晶だ。
「しかし、結構大きいな……已むを得ん」
軍刀を抜き、オーガの魔力結晶に振り下ろす。
キーーーン!ピキッ!
硬質な音と共に拳二つ分ほどの欠片が割れて落ちる。
「ま、これ位で十分だろう。フッ、それにしても、トマスが居れば血相を変えて止めに入っただろうな」
その魔力結晶の欠片を、巨大な魔法陣の中央に置き、一旦魔法陣の外に出る。
しゃがみ込み、魔法陣に手を乗せ魔力を流す。
中央に置かれた魔力結晶の欠片が白く輝き出し、粘土の様に不定形に形を変え、その大きさも、みるみると大きく膨れ上がっていく。
そしてそれは、無数に分裂を始め、それぞれ同じ形に。
今錬成している物は、特に何ら特殊な物では無い。
至ってシンプルなものだ。
故に、これ程大規模な錬成でも、さして苦にはならん。
魔法陣の中の輝きは収まり、魔法陣の中にソレが無数に並ぶ。
ソレを、拳でコンコンと叩き確認する。
「うむ、まあこんなものだろう。さて、用も済んだ。戻るとしよう」
翌朝早朝、叩き起こされる。
今朝は双子では無い。
ワシを叩き起こしたのはジムだ。
「ん、如何した?」
「旦那、ゴブリンだ」
「む、何!?」
ワシは、飛び起き、軍刀と十四年式の収まったホルスターを手に取る。
「あ、いや、そうじゃ無え。ゴブリンの死体を大量に積んだ無人の幌馬車が、町のゲートに突っ込んできたらしい」
「何、死体だと?」
確か、ゴブリンの死体を使って、その襲撃を誘発する事が出来ると、ジムが言っていたが……。
「ともかく、町のゲートまで来てくれとの事だ。それにしても、えらくあからさまな手段に出てきやがったな」
「フッ、ニーリーでワシらを追って来た盗賊共と同じだ。費やした金と手間、奴等の矜持……それと、特にメンツだな。一家とやらを構えて幅を利かす為には、なりふりは構わんと云う事だろう」
相手を金で、屈服させられんなら力ずくか。
フッ、この手の輩は分かりやすい。
だが、案外やることが迅速だ。
もう少し、準備に余裕が有ると思っておったのだが……中々どうして、あの小男見かけに寄らず、やるでは無いか。




