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ゲティスバーグの炎龍

火を噴いたのは当然、ジムの銃だ。

見事なまでの早打ちで、大男の銃を弾き飛ばす。


大男は右手を抑え、顔を歪ませては居るが、血は流れておらん。

ジムは的確に相手の銃のみを弾き飛ばしたのだ。


刹那、凄まじいまでの殺気!

すぐさま反応して、軍刀の鯉口(こいくち)を切り、返礼の殺気を込めて、右端のテンガロンハットの男を睨みつける。


奴は冷や汗を流し、硬直して固まっている。

ワシの強い殺気に当てられたのだ。


その右手は、腰の銃に指先が触れた状態だ。

だが、そう易々と抜かせはせん。


それに、ヤツも、今抜くほどアホでも無いらしい。

それにしても、ワシが一瞬戦慄する程の殺気、何者だこ奴?


「キ、キサマァァーーー!」

大男が怒気を荒げ、血走った目でジムを睨む。


「そこ迄だ!!」

背後から聞こえたその声に、皆の硬直が解ける。

その声の主に視線を向けると、青い軍服の青年が此方に歩み寄ってくる。


年のころはジムとさほど変わらん様だが、身なりを見る限り、一般の兵士では無い。

恐らく、指揮官の地位にいる者だろう。


「そこのデカいの。命が欲しいならやめておけ」

「なんだと、テメエ!テメエが代わりに相手に成るってのか!」

「よせよせ♪俺は、お前の心配をしてやってんだぜ。デカいの、今さっきお前の銃を弾き飛ばした男が何者か、分かってんのか?」


ん?ジムが左手で頭を抱えて「ハァ~……」と、ため息を付いておる。

そう言えば、これ程の腕前、ただ者では無いと思っておったが、名の知られた男であったか。


「な、何者かだと!?」

「ひとかどのガンスリンガーなら聞いた事が有る筈だぜ。ゲティスバーグの炎龍って名を」


「ゲ、ゲティスバーグの炎龍だと!?この男が……」

「先の戦争の勝敗を決したゲティスバーグの戦いで、魔銃ファイヤー・キャスター一挺(いっちょう)で戦況を覆し、北軍を勝利に導いた英雄。その銃声は炎龍の咆哮、その銃口から放たれる劫火は炎龍の息吹。そう謳われた程の男だ。だろ?ジム・カラバ大佐」


た、大佐だと、この若さでか!?

成るほど……だが、こやつ程の腕前、納得行く。


「止せ、レナード。オレはもう軍人じゃ無えし、大佐でも無え」

「ハッハッハ♪久しいな、ジム。それにしても、ホントに軍を辞めるとはな。叔父からの手紙で知った時は驚いたぜ」

「ハッ、その叔父さんてのがオレの転属願を聞き入れてくれてりゃ、辞めずに済んださ」

「ハハハ、ソイツは無理な話ってもんだ。ヌーグ砦の指揮官は中佐か少佐って決まっている。ジム・カラバ大佐がヌーグ砦の指揮官に成れる訳無えだろ」


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