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商談を掻っ攫う 中編

「デュモンさんと言ったか、それでお前さん、ソイツに幾らの値を付ける?」

巨大な黒の魔力結晶に目を奪われ、凍り付いていた者達の呪縛が解ける。


「あ、そうでしたな……これは、失敬した……しかし、この魔力結晶はいったい何方(どちら)で……」

「うむ……コイツを手に入れた経緯(いきさつ)は話さねば成らん事か?」

「あ、いや、そういう事では……これ程の魔力結晶、盗品で有る筈も無い。盗品成らば、直ぐに足が付いてしまいますからな。承知しました。しかし、これ程の大きさで色付きの単結晶と成ると、正直初めて目にする。どの様に査定して良い物やら……。一千五百万……いや、二千万は下らんでしょうな」


「チョットお待ちを!」

その声の主に目をやると、集会所の隅で立ち見をしておったトマスが、此方(こちら)に駆け寄ってくる。

席に座らずに立ち見しておったのは、恐らく部外者として町民に気を使っておったのだろう。


「驚きましたよ、猫の旦那。まさか、そんな大きな色付きの魔力結晶までお持ちとは……。この様な一品と駅馬車で共に旅してたなんて、今思い返しただけで、身震いしてしまいますよ……」

「ハハハ、黙っててスマンかったな」

「いえいえ、当然ですよ。これ程の物をお持ちだなんて、おいそれと話す事では有りませんからな。そうそう、それよりもデュモンさん。それ程の一品、この場で査定なさるものでは御座いませんよ」


「ん?あなたは確か、ウィルバー商会のトマス・ウィルバーさんですな。うむ、ではどうしろと?」

「こうされては如何(いかが)ですかな。オークションに出品するのですよ。それで、デュモンさんがその代理人と成れば良いかと思いますよ」

「成るほど、そのオークションでの売却代金から、その手数料や町への債権の料金等もろもろを差し引いて、此方(こちら)のドウマさんにお返しすれば良いと」


「ええ、その上で猫の旦那……ドウマさんさえ良ければ、その莫大な売却代金の残りを、デュモンさんの銀行でお預かりすれば、尚の事デュモンさんに取って美味しいお話しでは。如何ですかな、猫の旦……ドウマさんにデュモンさん?」

「うむ、ワシに異存は無い」

「確かに、そう言う話であれば、我が銀行に取っても悪い話では有りませんな」


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」

そう振り絞る様に声を上げたのは町長だ。


「ド、ドウマさんと仰ったか。それで、アンタはこの町の債権なんぞ手に入れて、如何(どう)なさるお積りじゃ?」

「フッ、なに、その油田とやら、ワシが経営しようかと思ってな」


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