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ワシが買おう

「ハァ~……」

ジムのため息が聞こえる。

「どうした、ジム?」

「どうしたも何も、こりゃもう決まりじゃ無えか……」


「フッ、お前さん、もう(あきら)めるのか?」

「結局昨日、わざわざ旦那と夜中抜け出して見に行った油田ってのも、相手にされて無えし、コリンもオーウェンの旦那も黙っちまったぜ」


「なに、(あきら)めるには、未だ早いさ。コイツが有る♪」

「コイツって……旦那のお土産か?おいおい旦那、まさか、スイカで御機嫌でも取るってんじゃ無えだろな……」


「スマンが少々悶着に成るやもしれん。お前さんも付いてきてくれ」

「付いてきてくれって……旦那!?」

そのまま、ジムを引き連れて、集会場の奥へと向かう。


頭取の男が、ワシに気付いてか、視線をジムに向ける。

「スマンが見ての通り大事な話をしている。此方(こちら)のお子さんを、下がらせて頂けますかな」


「ケッ!さっさと、そのガキをつまみ出せ!」

円卓の添え物に過ぎん巨漢の男が、ジムに吐き捨てる様に怒鳴る。


「フフッ、ワシがガキだと言うなら、お前さんの隣に座る男も、ガキと言う事に成る。見たとこワシと身長はさして変わらん様だからな」

まあ、ガキ扱いはいつもの事だが、たまには皮肉も言いたく成る。


「ふ、ふざけんな!テメエ!」

軍帽を脱いで、円卓の三者を見渡す。

「ね、猫だと!何モンだ、テメエ!」

そう、粗暴に問いかける巨漢を無視し、中央の男を見据えて答える。


「ワシはドウマと申すものだ。まあ、少々縁あって、この町で滞在させて貰っている」

「あんたは昨日の……スマンが今は大事な話をして居る。邪魔はせんで貰えんか」

「邪魔も何も、コリンもオーウェンの旦那も、返す言葉も失って黙っちまったじゃ無えか」


「ハァ~……それで、ドウマさんと仰ったか。どうやら、私に何か御用がお有りと見受けられるが、何用ですかな?見ての通り、取り込んでいる。手短にお願い出来ますかな」

「うむ、ワシも、この商談に加えて貰おうと思ってな」


「ん?商談と申しますと、この町の事ですかな?」

「うむ、もっとも、ワシの場合、この町を買うと言う分けでは無い」

「では、何をと申されますかな?」

「お前さんの持つ債権だ。確か二百万ドル余りと言っておったな。そうだな……ソイツをワシが三百万で買おう。お前さんに取って悪い話ではあるまい」


「おいおい旦那!」

ジムがそう驚きの声を上げた後、耳元で問いかける。

「旦那、そんな金何処(どこ)に?まさか、その袋の中に金貨でも詰まってんのか……」

「ハハハ、まさか、金貨三百万ドル分だと、十ドル金貨三十万枚だ。持ち歩けるものか」


「現金の持ち合わせが無いとすれば、証券か宝石か何か、それに見合う価値の有る物をお持ちか?」

「うむ、これをお前さんに買って貰いたい」


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