表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/182

肉の調達

「コイツのシッポはデカくて美味(うま)いんだ。それに、これだけで家族が当分食っていける。それで食い終わる頃には、また新しいシッポが生えてくる。どうだい、なかなか経済的な家畜だろ」


ジムにそう言われてあらためて見ると、確かに何とも巨大な尾をしておる。

尾の付け根の方は、牛の胴回りほど有るか。

成るほど、あの(なた)が無駄にデカいのはその為か。


「って事で、宜しく頼むぜ、ダ・ン・ナ♪」

とか言い言いながらワシに、その巨大な(なた)を差し出す。


「それで、ワシに手伝えと。しかし、お前さんの方が慣れておるだろう?」

「ああ……いや、その何だ……家畜にストレスを掛け無い為に、コイツに痛みを与えず、一太刀でシッポを切り落とすってのが、一人前の証って事に成ってんだが……オレの場合その前に家を出たもんでな。まあ、それに旦那の方がこう言うの得意だろ」


「ハァ~、已むを得んな……」

町の宿屋は使えんし、今日は此処(ここ)で厄介に成る事に成る。

まあ、一宿一飯の恩義と考えれば、仕方なかろう。


ジムからは(なた)を受け取らず、軍刀の鯉口(こいくち)をカチッと切り、その巨大なカウ・リザードの尾の横に向かう。


「ちょっと待った、旦那!」

ジムが慌ててワシを止める。


「ん、どうしたジム?」

「どうしたもこうしたも、まさかそのサーベルで食いモン切る気かい、旦那?」

「ワシの軍刀だと、何ぞマズかったか?」

「ハァ~、旦那……この前、そのサーベルで一体何人の盗賊叩き切ったんだい?」

「そうだな……よく数えておらなんだが……ん!成るほど、確かにワシの軍刀で切った物は、子供達には食わせられんな」

「オレだって遠慮するぜ!」

森の中では、この軍刀で捌いておったからな……ついウッカリしておった。


「それじゃ旦那、あらためて頼むぜ」

と、巨大な(なた)を受け取る。

刃渡りだけでワシの身長ほどある。

少々振り回し難そうな得物だが、まあ、戦うわけでは無い。

こヤツの尾を切り落とす程度なら、なんとか成ろう。


だが、問題はやはり……ワシの身長だな。

単にこのまま(なた)を振り下ろしただけでは、上手く両断出来んかもしれん。

まあ、力業で不可能と迄は言わんが、このカウ・リザードとやらが、切られた事に気付かんほど痛みを与えず、と迄には行くまい。


已むを得ん。

本来はこの様な事に使う技では無いのだがな……。


(なた)を肩に担ぐように構え、軽く飛び跳ね拍子を刻む。

神楽舞の拍子だ。


徐々に高く、軽やかに、そして、力強く……今だ!

半歩前に出る様に飛び跳ね、その勢いを駆って、神速の速さで(なた)を振り下ろす。


(なた)は、陽炎(かげろう)をすり抜けるかの如く、何の抵抗も感じない。


そして、一瞬の間を置いて、巨大な尾がドサッと地に落ちる。

血も(ほとん)ど流れておらん。

で、切られた本人の方は……どうやら気付いてはおらん様だな。

何事も無かったかの様に、子に乳を与えておる。


ヒュー♪と背後でジムが口笛が聞こえる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ