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ジムの帰宅

未だ、吹っ切れた分けでは無いだろう。

馬を操り、自身が育った家へと向かうジムの背は、何処(どこ)か重々しい。

それでも、正面を向いて進んでおる。

己の役目をわきまえていると言う事だ。

夫を父を亡くした妻子を、励ますと言う役目をだ。


町の外れへと向かう。

牧草地を囲う柵は、酷く破壊されている。

そのゴブリンと言う者共の仕業だろう。


「酷くやられている様だが、この牧草地は……?」

「ああ旦那。(うち)の牧草地だ」

ジムの実家は牧場だと言っておったが、壊された柵の向こうに広がる牧草地には一頭の牛も見えない。


その壊された柵に沿って(しばら)く馬を歩かせると、白い木造の家が見えて来た。

ジムが(しば)し立ち止まる。


「どうした?」

「いや……何でも無いさ。着いたぜ旦那」

どうやら吹っ切ったらしいな。

重々しい雰囲気は消え去り、いつもの飄々(ひょうひょう)としたジムに戻って居る。


馬を降り、門をくぐって敷地の中へ。

そしてジムは玄関の前に立つと、ノッカーを二度鳴らす。


暫くして「は~い」と言う女性の声。

ドアが開き、恰幅の良い栗色の髪の女性が顔を出す。

年のころは四十代と言ったところか。


「あの~、どちら様で?今、この家は立て込んでまして……」

「オレの顔を忘れたのかい?」

そう言って、ジムは帽子を取り、顔を見せる。



「えーと……え、ジム!?ジムなのかい?」

「ハハ、久しぶりマーサ♪」


「アンタ、帰って来たのね!まあ、立派な男に成って、随分見違えちまったから気付かなかったよ……ハァ~、それにしても、なんて言う日に帰って来たんだろね、アンタは。タイミングが良いのか悪いのか……エドが一昨日……」

「ああ、聞いたよ、さっきマーサの旦那にね。ジェシーは居るかい?それと、甥っ子と姪っ子にも会いたいんだが」


「勿論、直ぐに会ってやっておくれ。ハァ~、三人ともエドの(そば)を離れなくてね……。今、呼んでくるから、ちょっと待ってておくれ」

マーサーと言う女性が大きな体を揺らし、奥へと向かう。

「ジェシー!ジェシー!大変だよ直ぐに玄関に。バーニーとティナもおいで」


そして、奥から長く艶やかなブロンドの髪を揺らし、一人の女性が出て来る。

その後ろに、(すが)り付く様に同じ顔の二人の子供。

三人とも、散々泣きはらしたのだろう。

目の周りが赤く腫れている。


「あの、どちら様……ジム?ジムなのね!」

女性は、慌てて駆け寄って来て、ジムに抱き着く。

「おっと、ただいまジェシー♪」

「エドが、エドが……」

「ああ、知ってる。さっきオーウェンに聞いたんだ」

「う、う、うわぁーーーん!」


女性が(せき)を切った様に泣き崩れる。

それにつられる様に二人の子供達もまた。

「うわぁーーーん!」

「うわぁーーーん!」


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