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訃報

「まあ、小さな小鬼なんですがね。貪欲でタチが悪く、群れで農場や牧場、時には村や町も襲うんです」

「強さは?」

「小鬼は小鬼ですからね。一匹なら大した脅威には成りません。成人なら女性でもフライパンで殴り倒せるほどですから。ですが、数が驚異なんです。それに時折武器を手にしたのが居るんですけど、これがまた厄介でして……」


「そう言えば、お前さんさっき、またかと言ったが?」

「ええ、ここ一年ほど前から、ヌアザの近くに巣が出来たみたいで、何度かヌアザ近隣の農家が襲撃されていたみたいなんです。ジムも早く実家に帰ってやった方が良いですぜ」

「ああ、そうするよ」


ふと前方、町の入り口の方から一騎、ライフルを手に此方(こちら)に向かって来る。

「止まれ!お前たちは……バリーじゃ無いか。駅馬車か、珍しいな。橋が落ちてから、ここを通る駅馬車は見なく成ったが」

「オーウェンさん、御無沙汰してます。ええ、黒の森からニーリーに掛けて、街道で盗賊が出る様に成りましてね。ですが、幸いにも猫の旦那とジムのお陰で無事此処まで」


「猫の旦那?ジム?」

「よう、久しぶり、オーウェンの旦那」

「うん?ジム……って、まさかジム・カラバか!?」


オーウェンと呼ばれた男は、懐かし気にジムの肩を叩く。

年のころは四十代後半と言ったところか。

ブラウンの髪と蓄えた口髭に少々白髪が混じってはいるが、頑強な体躯をしておるのが見て取れる。


「ジム、お前の噂は聞いてるよ。随分手柄を上げたんだってな。それで、その軍を辞めて帰って来たのか……もしかして、町の事を聞いて、それで?」

「まあ、それも有るが、軍を辞める良い潮時だったのさ」


オーウェンの表情が暗く沈む。

「そうか……ならお前も聞いてると思うが、町は見ての通りの有様だ。存亡の危機……いや、もう()んだかもしれん。せっかく帰って来たお前には悪いがな。それと……もう一つ」


オーウェンはうつむき、口ごもる様にため息を付く。

「ハァ~、まさか俺からお前に伝える事に成るとは思わなかった……心して聞いてくれ。エドが死んだ、恐らく死んだのは一昨日の夜の事だ」


「おいおい、悪い冗談は止してくれ。八年ぶりの里帰りだぜ。兄さんが死んだなんて、縁起でも無え冗談は勘弁してくれよ」

目の前の男の表情は、冗談を言っている風では無い。


此処(ここ)を襲ったと云うゴブリン共に殺されたのか?」

「いや、事故で雷に打たれて……って、アンタは?」

「ワシはドウマ。彼らと共に旅をしておった」

「ね、猫!?じゃあ、さっきバリーが言ってた猫の旦那って……」


「オーウェンの旦那、詳しく聞かせてくれ」

どうやらジムも、冗談では無いと悟ったらしい。

その顔は青白く、血の気は無い。


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