少々殺し過ぎたか……
「ハッ!」
ペシッ!
バリーが鞭を振るい馬車が走り出す。
ワシも十四年式拳銃をホルスターに戻し、馬に飛び乗り後を追う。
この町の街角や、建物の屋根の上に複数の銃を構えた男達が潜んでいる居る。
ターン、ターン、ターン!
馬車の窓から乗り出す様に、トマスとレオナードが威嚇。
ターン!
ジムは的確に男達を射殺す。
ワシも、鞍のホルスターからスペンサーを抜き、レバーをガシャリと降ろして弾を薬室に送る。
撃鉄を起こして、屋根の上で銃を構える男に狙いをつけ引き金を引く。
ターン!
男はもんどり打って屋根から落ちる。
ん?
後方から蹄の音。
あの馬に乗って居るのは、昨日、ポーカーで負かした残りの二人。
確か一人はホセと呼ばれておったか。
奴らは騎兵用のカービン銃を構え、ワシを狙っておる。
ヒュン!
振り向いたワシの頬を数センチ掠める。
悪くない腕だ、だが当たらねば意味は無い。
スペンサーのレバーを再度操作して、排莢、装填。
撃鉄を起こして、ホセの眉間に照星を合わせる。
ターン!
ワシらを追って来た二頭の馬から、二人の男が同時に落馬する。
フッ、もう一人はジムが射殺したらしい。
更に町の出口を抜けるまでの間に、スペンサーと、弾倉を差し替えた十四年式で五人ほど始末する。
どうにか、無事ニーリーを出る事は出来たが、これで終いと云う分けにも行くまい。
ジムが馬車の後方に回って来て、ワシと馬を並べる。
「旦那、弾切れだ。あとは、コルトに残ってる三発のみ。空いてる薬室に詰める弾も無え。奴ら追って来ると思うか?」
「ああ、恐らくな。お前さん何人殺った?」
「そうだなぁ、俺が撃ったのはコルトで二発、スペンサーで七発、それだけだ」
この男の場合、撃った弾数と殺った数はイコールと云う事だ。
つまり九人。
「で、旦那は?」
「ワシもお前さんと同じ九人だ。少々殺し過ぎたか……」
「うん?どう云う事だい旦那」
「奴らも引くに引けんと言う事さ。出してしまった被害、盗賊としての矜持やメンツ、そう言った諸々が邪魔をして、合理的な判断が出来なく成っておるだろう」
「で、追って来るだろうと……」
「そう言う事だ」
「はぁ~、少し手加減すりゃ良かったかなぁ~」
「いや、そんな余裕は無かったさ」
「しかし、どうする旦那?さっきも言ったが、弾がもう無え。旦那の話だとあと三十人ほどは居るんだろ。さすがに残りの三発だけで凌ぐのは不可能だぜ」
「コイツを使え」
十四年式を抜き、空に成った弾倉を差し替えてジムに渡す。
「おいおい、俺は構わんが、旦那が丸腰に成っちまうぜ」
「ん、ワシが丸腰に見えるか?」
カチッと、軍刀の鯉口を切って見せる。
「ハハッ、確かに、旦那は丸腰じゃねえ。と言うか、寧ろ、旦那の場合ソッチの方がおっかねぇぜ」




