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イカサマの権能 その1

「おいおい、お子ちゃまが入って来たぜ、ヘッヘッヘ」

「ここは坊やの遊び場じゃねえ、とっとと帰って、ママのおっぱいでも吸ってきな」


「お子ちゃまとは、ワシの事か?」

目深に冠った軍帽をとり、顔を見せる。


「ね、猫だと!?」

「どうした、猫を見るのは初めてか?」

フッ、以前も似た様なやり取りをした記憶がある。


どうも、この手のゴロツキのリアクションはワンパターンだな。


「ま、気にするな。ワシが猫だろうが、この通り金なら有る」

盗賊共から奪って得た金貨の詰まった袋を、テーブルにゴンと重い音を立たせて置く。


「ヘッヘッヘ、金が有んなら、お子ちゃまだろうが、猫ちゃまだろうが関係ねえ。参加費(アンティ)は一ドルだ。さっさと出しな」

袋から一ドルを取り出し、テーブルに置く。


「いいぜ、ウーゴ、コイツにカードを配ってやんな。へへへ」

「ヘイ」


ウーゴと呼ばれた男がワシの前にカードを配る。

当然、ジムの時と同じ様に、山札の一番下のカードを配ってくる。


「ん?おい、テメェさっさと手札を見な!」

「フッ、必要無い。どうせブタだ」

「なに、どういう事だ?」


「ワシに聞くより、そのウーゴと言う男に聞いた方が早かろう。まあ、聞くまでも無いだろうがな、お前さんは」

「テ、テメェ、俺がイカサマしてるとでも!」

ウーゴと言う男が、腰の銃に手を掛ける。

まあ、脅しの積りだろうが。

だが、青い顔で硬直したのは、そのウーゴと言う男の方だ。


「おっと、熱く成るなよ。ソイツを抜いて後悔するのはアンタの方だぜ♪」

ジムを見ると既に、腰だめに銃を構えている。

当然、撃鉄も既に引き起こされ、銃口は正確にウーゴの眉間を捉えている。

まったく、見事なものだな。


「フフッ、まあ、咎めているわけでは無い。イカサマだろうが、好きにして構わん」

「良いのかい、旦那?」

「ああ、構わんよ。イカサマなんぞ騙されるヤツが悪い」

「ハァ~、耳が痛いぜ……」

まあ、ジムもこれに懲りて、用心する事だな。


「ヘッ!じゃあ続けて構わねぇんだな」

「ああ」

「で、ベットはどうする?」

指先でテーブルをトントンと、二回たたきチェックする。


そして、自分の手番。

配られた五枚のカードをそのまま、一度も見る事無く、裏向きのまま場に捨て、テーブルの中央に置かれた山から五枚とり、それも見る事無くテーフルに伏せる。


「おい、テメェ、そのカードも見ねぇのかよ」

「ああ、その必要は無い」

「ケッ!勝手にしな。損するのはテメェだからな。へへへ」


「じゃあ、俺のベットは二十ドルと、つぎ込ませて貰うぜ」

ウーゴが十ドル金貨をテーブルに置く。


「へへへ、良いぜ俺もコールだ」

「俺もコール」

テーブルに六十ドルと参加費(アンティ)の四ドルが置かれている。


「で、テメェはどうする。今更テメェのカードを見るなんて、女々しい事はしねぇよなぁ。ヘッヘッヘ」

ワシも十ドル金貨を二枚取り出し、テーブルに置く。


「ヘッヘッヘ、良いぜ、良いぜ。テメェは男だぜ。そうで無くっちゃなぁ。じゃあ、ショーダウンと行こうぜ」


先ずは、ウーゴと言う男が手札を開く。

「俺はエースのスリーカードだ」


そうすると、もう一人の男が、「チェッ!」と舌を鳴らし、カードを投げ捨てる様に開く。

ジャックのスリーカード。


「へへへ、俺の勝ちだな」

そう言いながら、三人の内一番偉そうにしていた男が手札を開く。

ダイヤのフラッシュ。

「それで、テメェは?」


テーブルに置いたカードを、無言のまま開く。

キングとクイーンのフルハウス。

「わしの勝ちだな」


「な、な、な、そんな馬鹿な!」


ヒュー♪とジムが口笛を吹く。


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