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この世界

この日、皆と語らい、謎だった事が色々と分かって来た。

単刀直入に言えば、今ワシが居るこの世界は、前世の世界とは似て非なる世界だと言う事だ。

並行世界や異世界と言う言葉を教わったのは、孫娘からだったろうか。


この世界にも産業革命は在ったと云う。

だが、それは、石炭や石油を使ったものでは無く、魔力結晶を燃料とした蒸気機関が発明され、始まったと言う事だ。

この世界にも当然、石炭や石油は有るが、それよりも魔力結晶を使った魔道具の方が一般的らしい。


ランタンもまたそう言う生活道具の一つ。

通常は、砂粒程の赤の魔力結晶を芯にし、無色の魔力結晶を燃料とする事で、赤の魔力結晶を光らせるのが、この世界で一般的なランタンの仕組みらしい。


一見、前世の世界よりも便利に思えるこれらの魔道具だが、欠点がある。

それは、魔力結晶の枯渇だ。

ジムが言う様に、この世界の生きとし生けるものは魔力結晶を持つ。

だが、余程強力な魔物でも無い限り、その魔力結晶は非常に小さい。

生きている生物から採取するより、太古の生物の亡骸(なきがら)が堆積した鉱山から採取する方が効率的だと、産業革命以後、散々掘り尽くしたと言う話だ。

まだ、完全に採れなく成ったと言う分けでは無いが、いずれは枯渇するだろう。


そこで、新たな燃料として注目されることに成ったのが、石炭や石油と言う事らしい。

まあ、歴史的な必然だな。

今は未だ、知られてい無くとも、いずれ普及するだろうと見込んで、トマスは石油ランタンを扱う事に決めたと云う。

中々どうして、商人としては才能があるな、この男。


技術や文化が違えば、自ずと歴史もまた微妙に異なってくる。

この地はアメリゴ大陸だと云う。

そして、国の名前はアメリゴ合衆国と。

一応、何度もアメリカでは無いのかと、ジムとトマスに聞き返したが、揃ってアメリゴと訂正された。


そして、このアメリゴ合衆国でもまた、南北戦争が有ったと云う。

ワシの知る世界同様、奴隷制度廃止を求めての闘いである事は同じだ。


その戦いは1861年に戦が始まり、1865年中頃に終戦を迎えたと記憶しておる。

だが、このアメリゴ合衆国では、戦が長引き1873年まで続いていたと云う。

そしてその戦いに、二年前に終戦するその時まで、ジムは参加していたらしい。


つまり、今は1875年、明治八年だと言う事だ。

ワシが前世で死んだのが大正十五年、それよりも半世紀前と言う事に成る。

もっとも、異世界である以上、過去も未来も無いのだがな。


だが、どうりで、ジムが自動拳銃を知らん筈だ。

何しろこの時代、未だ発明されてはおらんのだからな。


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[気になる点] つまり、今は1975年、明治八年だと言う事だ。 → つまり、今は1875年、明治八年だと言う事だ。では?
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