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ジム・カラバ

「悪いな、無駄弾撃っちまった。それにしても良い銃だな。軍に長く居たが、こんな銃は見たことが無い」

「フッ、そうか、お前さん程の名手に褒められて、コイツも本望だろう。もっとも、この銃だと、お前さんの見事なファニングショットは撃てんがな」

うむ……やはり妙だ、軍に居て、自動拳銃を見たことが無いと言うのは……しかし、嘘を言っている風でも無い。


「お前さん程の腕前のガンマンが同乗していたなら、どうやらワシが出しゃばるまでも無かったな」

「いや、旦那が仕掛けてくれて助かった。何しろ銃は一丁しか持ってい無い。だから相手に出来るのは精々六人までなんでね」


確かに、この男の銃はリボルバーだ。

リボルバーは只でも装填に手こずるが、見た所この男の銃はコルトシングルアクションアーミー……銃身が長い、恐らく騎兵用のキャバルリーだな。

特にこの銃は、シリンダーがスイングアウトせず、シリンダーの右側にあるローディングゲートを開けて一発ずつ排莢、装填せねば成らん。

とても、銃撃戦の最中に弾を詰め直すなど、不可能だ。


「俺はジム・カラバ。ジムと呼んでくれ。とにかく助かったよ旦那」

十四年式と軍帽を受け取り、差し出された手を握る。

「ああ、ワシはドウマ。すまんが訳有って苗字は無い」

どうも、苗字はいまだに思い出せん。

「ハハ、苗字なんて気にする奴は、税金をむしり取りに来る役人ぐらいさ」


「しかし、お前さんは、ワシの姿を見て驚かんのだな。このゴロツキ共はワシの顔を見て驚いとったが?」

「俺が前に居た部隊には、何人か亜人が居たからね。その中にケトも居たのさ。で、彼らに二本足で歩く妖精猫の話を聴いた事が有ってね。確か、ケットシーだったかな。旦那がその妖精猫なんだろ?」


亜人だと?

その様なモノの存在は生前聞いた事も無い。

「まあ、恐らくその様な存在なのだろう。奴らにも言ったが、ワシが何者であるか、ワシ自身も良く判らんでな。ところで、そのケトとは何者だ?」

「ん、旦那知らないのかい?」


「正直言うとこの森を出たのは初めてでな、世情(せじょう)(うと)い」

「へ~、ずっとこの黒の森にね……。ケトってのは猫の亜人のことさ。まあ、旦那ほど猫っぽくは無いがね。人に猫の耳と尻尾が付いたような見た目と言えば、何となく想像できるか」


「成るほど、一度会ってみたい物だな」

「あ~……いや、彼らには気を付けた方が良い」

「ん、何故だ?」

「悪い奴らじゃ無いんだが、彼らはケットシーを崇拝している。まあ、旦那がカルト宗教でも始めるってんなら止めはし無いがね」

「ハァ~、成るほど、そいつは面倒そうだな、気を付けるとしよう」


それにしても、前世では存在も知ら無かったこの森の魔物どもに猫の亜人……この世界には色々謎が有りそうだ。


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