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十四年式拳銃

魔法陣と格闘して暫く。

集中が途切れそうに成りながらも、何とか形が定まって来た。


「この辺りで……良いだろう」

徐々に魔法陣に流す魔力を押さえていく。

そして……。


「ふ~、完成だ」

魔法陣の中央には、一振りの刀。

鞘に収まっている外観はサーベルだ。

柄の部分が、両手で握れるようにやや長めに錬成してある。


拾い上げ、鞘から抜き放つ。

その刀身には波打つ刃文。


サーベル(こしら)えの日本刀。

つまりは、軍刀だ。

「中々見事ではないか」


先ほど仕留めた獲物で試し切りしてみよう。

スパッ!

何の抵抗もなく、胴体を切断した。


日本刀の刀身は、折れず、曲がらず、よく切れる。

錬成し損なって出来た山刀とは訳が違う。

いや、それだけでは無いな。

やはり、精霊結晶から錬成した事も大きいだろう。


「うむ、これならばアレを錬成しても、強度は問題なかろう」



再び、魔法陣を描きなおし、小さな精霊結晶の欠片を中央に置いて錬成する。

今度はさらに慎重に、正確に、思い浮かべる物と寸分違わぬ様に……。


錬成を終え、魔法陣の中央に転がる金属の筒を拾い上げ、筒の中を確認。

六本のらせん状の溝が刻まれている。


「どうやら、いけそうだな。だが、部品単位での錬成に成る。数日掛かるか」




それから数日、狩りにも行かず、錬成と休息を繰り返す。

精密な錬成が必要だ。

それだけ神経をすり減らす。


そして、獲物の肉も尽きて来た頃、(ようや)く最後の部品の錬成。

部品と言っても、これは消耗品だ。

在庫が限られる精霊結晶ではなく、魔物から採取できる魔力結晶を使おう。


(えが)く魔法陣はやや複雑な物に成る。

何分(なにぶん)、複数のパーツの集合体だからな。

一つずつ錬成するのは簡単なのだが、それでは面倒だし、今後の事を考えると、それ用の魔法陣を編み出した方が効率的だ。


描き上げた魔法陣に魔力を流す。

魔法陣は複雑だが、精霊結晶では無く魔力結晶を使った錬成。

比較的魔力の操作は楽に感じる……いや、そう感じるのは魔力操作に慣れて来たからか。


錬成が終わり、魔法陣の中央に横たわる、やや縦長で箱状の部品を手に取り、ここ数日掛けて錬成し、組み上げたそれのグリップに差し込む。


「うむ、しっくりくる。以前愛用していた物と変わりない。一発試してみるか」

コッキングノブを引っ張って、弾を薬室に送る。

安全装置を外して、五十メートルほど離れた木の幹を狙ってトリガーを引く。

ズドン!


想像していたよりも遥かに大きい銃声。

メキメキと音を立てて、標的にした木が倒れる。


「うーむ、威力が高すぎる。魔力結晶の大きさを間違えたか」


手にしている銃に目を移す。

十四年式拳銃。

ワシが生前、最後に愛用していた銃だ。


先ほど錬成した弾倉は、弾薬が八発装弾された状態で実体化させた。

まあ、弾倉と弾薬を分けて錬成した方が簡単では有るのだが、イチイチ一発づつ錬成し、弾倉に装填するもの面倒なのでな。

それと、弾倉自体も空の物は捨てて行ける様に、精霊結晶ではなく魔力結晶から錬成してある。


わざわざ十四年式を選んだのは、ワシの好みの問題だ。

外国製の銃も錬成、組み立ては出来るのだがな。

まあ、精霊結晶から錬成し、魔力結晶で錬成した弾丸を撃つこの銃には形状など、あまり意味は無い。

威力や命中精度は、今試射した通りだ。


「しかし……人里に出て行くと成ると、この威力はトラブルの元に成るやもしれん。改良の余地があるな」


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