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その3 眉目秀麗だが、何か?

さて、時は遡り(さかのぼ)同日の午前8時30分


「えー。本日から配属となった、河合奈々子(かわいななこ)さんです。河合さんからも挨拶を。」

「はい!本日からお世話になります、河合です。色々教えてくださいね。」


ーチッ。

奈々子は心の中で舌打ちした。

勿論そんな感情など一欠片も見せず、完璧なスマイルで。

その柔らかな笑顔を見ただけで、スーツ姿の男性陣がデレッと鼻の下を伸ばすのがわかる。そしてその気配を察知した女性陣は眉間に皺をよせる。


私が清楚系美人で巨乳だから仕方がないけど、お前らみたいなおっさんは願い下げなんだよ。

あとその右から二番目のブサメンもこっち見んじゃねぇ。

前の部署は()()()はまぁまぁだったけど、ここは期待できないかもな。


ふぅ、とまた器用に誰にも悟られずにため息をつく。

今日から配属された営業部での日々は、イケメンなしではお先真っ暗だ。

最悪じじぃでもいいか、金さえあれば。ここは仕事できる人が優先的に配属されるって聞いたことあるし、金は持ってるだろう。


そんな黒い考えを抱いているとは皆露知らず。

見目麗しく、若い奈々子に男性陣は浮き足立っているように見えた。


「えーと、では皆仕事に戻って。()()()()()()は、ちょっと待っててね。」

「わかりました、部長。」


ーおい、もう名前呼びかよおっさん。

その頭上でカーリングしてやろうか?あ?!

よく滑りそうだなぁ?!

もう帰りたい。出社早々散々だ。


「お待たせ奈々子ちゃん、こちら教育係の愛乃君だ。」


ー待ってねぇよ。


愛乃薬丸(あいのやくまる)だ。よろしく頼むよ。」


ー前言撤回。

待ってましたともー!!!!


身長は180センチ以上はあるだろうか。

すらりとした体躯に、しかし程よく厚そうな胸板。

ハーフのような整った顔立ちに、きれ長の濡れた瞳。

スクエアタイプのシルバー眼鏡が、知的な雰囲気を増幅させているようだ。

黒髪はきれいにオールバック、襟足で尻尾髪にしてまとめられている。

肌は陶器のようで、なんというか人間離れした妖艶な雰囲気もある。

奈々子の数多き男性遍歴の中で間違いなくダントツでNo.1イケメンが目の前にいた。


「よ、よろしくお願いします。・・・あれぇ?先程の朝礼の際、愛乃さんいらっしゃいましたか?」

「あぁ、取引先から入電でな。席を外していた。すまない。」

「そうなんですね!改めて河合奈々子です!()()って呼んで下さいね。」


ーやはり。この私がこんなイケメンを見逃すはずがない。

ぜっっっっっったい手に入れてやる!!!!


「では、奈々君。」

「ひゃいっ?!」


低いがよく通る声で短く呼ばれて、思わず声と鼓動が跳ねる。

心の奈々子を一瞬で吹き飛ばすほどイケメンからの名前呼びは破壊力が凄い。


「さっそく挨拶回りに同行したまえ。営業とは顔でするものだ。」

「わかりました、どこまでもついていきますよ!!」


ー永遠になあぁぁぁ~~~!!!


「ふっ・・・やる気があってよろしい。では部長、失礼。」

「はいはい、()()()()()も気を付けてねっ。」

「・・・・・はあいっ。」


ーお前はやめろ。

いっそ悲しくなるほど薬丸と部長では何かが大きく違う。

まぁいい。これから仕事上とはいえ、二人きりになれるのだから。


軽やかに身支度を整えると、二人はオフィスを後にした。


「ーねぇ、河合さん大丈夫かしら?」

「さぁ・・・?でもあの顔面見てグラッと来ない女はいないわよねぇ?」

「そうねぇ・・・でも()()に耐えられる女性なんてなかなかいないわよ?」

「言えてる。私も無理だったもん。」

「仮に愛乃さんが独身だったとしてもちょっとキツイわ~。」

「勿体無いですけどね~~。奥さんは凄いですよ、()()を乗り越えたって事ですもんね。」

業務をこなしながら、女性陣がヒソヒソと噂話に励んでいた。

ちなみに奈々子は立ち回るのもうまいので、女の敵にはならないです。


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