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貴方に捧げる永遠(とわ)のアイ  作者: 桜庭しおり
第一部 愚かだったわたくし
3/7

002 王家の掟と困った侍女

誤字を修正しました!

教えて下さった方、ありがとうございます(*´ω`*)

 ーーエウリュアレ王国の王家には、代々定められているいくつかの掟がある。




 1つ、王宮奥の女神像には毎朝拝礼すること。


 1つ、後継は予知能力を持つ者を最優先に()けること。


 1つ、王家に女児が産まれなかった場合、第1王子は3大公爵家から姫を迎えて王配となること。


 1つ、第2王女以下の王女の降嫁先は三大公爵家を主とし、王子の婿入りも同様とすること………




 そんな、国に関することから始まり、普段の習慣等にも細々とした掟が存在する。半ば形骸化(けいがいか)してしまっているものもあるけれど、それだって女王であるお母様や次期女王であるわたくしはきちんと守るようにしている。

 上に立つものが守っていないとならば、誰も守る者などいなくなってしまうから。



 そして、そんな掟の1つに、どんなに忙しくとも朝餐だけは共にとること、と言うものがある。王家の者は公務で忙しく、疎遠になりやすいからこそ定められたものだとは言うけれど…




「頼む、これだけだから……!」




「兄上、好き嫌いせずに食べて下さい」




 ちらり、と何やら問答している弟達を見る。朝の拝礼を終えて、今は朝餐を取っている所だ。

 わたくしの左手側には、苦手な野菜をそっと隣の弟の皿に移そうとするエドと妙に威圧感のある笑顔を浮かべてそれを押し戻しているカイトの姿があった。



 ………またやってるわね。



 エドとカイトが繰り広げるこの光景は、最早毎朝恒例の光景となっている。毎日毎日よくエドも飽きずにやるものだ。

 彼は野菜嫌いを早く克服したらいいと思う。双子故に同い年であるとは言え、弟であるカイトは残さず何でも食べるのに!



 ……そうは思うものの、攻防を繰り広げている様子が何となく微笑ましく、ついつい笑いながら見てしまう。

 最終的にカイトが根負けして、1つだけだと受け取ってあげるまでがいつもの流れだ。何だかんだ言いつつ、彼はエドに甘い。



「エド、その辺にしておきなさい。カイトもあまりエドを甘やかしてはいけませんよ。私たちの食事は国民達の血税で成り立っているのですから、嫌いだからと食べもしないのは民に対して失礼だと知りなさい」



 2人の様子を見ていたら、お母様が口を開いてピシャリとエドを叱った。

 叱られたエドがシュンとしているのがちょっと可愛い。カイトが、お母様に了承を返した後で、「ほら、母上も仰っていることですし」と言いつつ、エドの背中をぽんぽんと2度叩いた。これではどちらが兄か分からない。冗談めかしてそう言えば、エドがいかにもしぶしぶと言わんばかりにゆっくりゆっくり野菜を口に運んで、顔を(しか)めながら咀嚼(そしゃく)していて、それがまた微笑ましく思えた。



「アリーシャ、貴方もですよ。見ているだけではなく、きちんと弟を導くようになさい。たった1人すら導けず、どうやって国民たちを導くと言うのです?」



 くすくすと笑いながら見ていたら、わたくしも叱責されてしまった。確かにその通りだ。1人すら導く事が出来ないのに、もっと大勢の国民たちなんて無理に決まっている。



「申し訳ございません、お母様」



 シュンと肩を落として謝れば、お母様が鷹揚(おうよう)に頷き、厳しかった表情をふっと緩めた。



「さて、堅苦しい話はこれぐらいにしましょうか。そうそう、アリーシャの所に新しい侍女が来たでしょう?彼女は上手く馴染めそうですか?」



 お母様が言っている侍女は、リズベットの事だろう。彼女のことを思い出して、わたくしは思わず溜め息を()きそうになってしまった。

 遠い目をしたわたくしをお母様が(いぶか)しそうに見つめてくる。



「姉上の所には新しく侍女が入ったのか? どこの家の奴だ?」

「ランチェスター公爵家のリズベットよ。花嫁修行の一環と言うことだけれど、流石にあれは……」



 言いながら、思い出すのは昨日から今朝にかけてのリズベットの言動の数々だ。



『初めてまして、あたくしは三大公爵家の1つ、ランチェスター家のリズベットよ。わざわざ貴方の身の回りの世話をしてあげる優しいあたくしに感謝なさい?』



 昨日の顔合わせ、至る所が改造されてやたらと豪奢(ごうしゃ)になった侍女の制服を来て現れたリズベットの第一声がこれだ。わたくしの後ろに控えていたオフェーリア達から怒りのオーラが漂って来ていて、リズベットの態度よりもそちらの方が気になってしまった。



 更には、リズベットの態度に苦言を(てい)したオフェーリアに対し、



『ふんっ、たかが侯爵家如きがあたくしに指図しないでちょうだい。貴方達はただ黙ってあたくしに従っていればいいのよ!』



 と言ってみたり、朝の支度でフローラが選んで来たドレスに



『仮にもあたくしの仕える人にそんな粗末な服を着せるつもりなの? 信じられない!』



 と言って、舞踏会に着ていくようなドレスや大量の装身具を持ってきてみたり…



 お陰で、今朝の支度の時にはかつてないほどにギスギスとした空気が漂っていたのだ。

兄弟で野菜の押し付けってやったことありません?笑


今回もお読み頂きありがとうございました!

誤字脱字等ありましたら遠慮なくご指摘下さい。

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