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家電

作者: 冲田


「すごいものをみつけたぞ。」

「なに?」

僕は物置になっている屋根裏の奥から、埃のかぶった白い物体を掘り出した。

丸みを帯びた形をしていて、幾つかのボタンがついている。一番大きなボタンには"炊く"と書いてあった。

「炊飯ジャーだよ。昔の家電だ。」

僕が埃をはらったので、舞った埃で視界がぼやけた。隣にいた友人はくしゃみをすると、無駄とわかりながらも手で顔の周囲をあおいで、埃を寄せ付けまいとした。

僕はジャーの蓋をあけてみた。外は埃だらけで綺麗とは言えなかったが、中には目盛り付きの綺麗な釜が入っていた。

「へえ、昔はこれでご飯を炊いてたんだな。ここに米と水を入れてスイッチを入れるんだろうな、おそらく。」

「なあ、これ、まだ使えるかな?使ってみようぜ?」

「馬鹿。お前、電気代いくらすると思ってるんだよ。」

「だよなあ。」

電気をたかだかご飯を炊くためだけに使うわけにはいかない。

なにしろ、石油が枯渇してからというもの、電気エネルギーはとても貴重なものになっていたからだ。かつては、炊事洗濯掃除などは家電がすべて自動でやってくれたものらしいが、そんなものは過去の産物だ。どこかの成金はまだ使用しているらしいが。普通は、うちのように物置に家電が転がっていることすら、めずらしい。

今、家庭で電気といえば夜の明かりのためくらいにしか使わない。家電といえばかろうじて冷蔵庫だけは使っている。企業や行政という範囲になると、コンピューターを動かすために多くの電力を消費しているようだ。なぜなら、昔の人たちがなんでもかんでもデータをデジタル化してしまったものだから、それを管理するにはコンピューターを稼動させる必要があるからだ。

昔の人は余計なことをしてくれたものだ。デジタルは確かに、コンパクトに膨大な量の情報を記録させることはできるけれど、記録媒体そのものは電気やコンピューターがなければただのガラクタだ。最近はどの企業も行政も、デジタルデータをアナログデータに置き換える作業に躍起だと聞く。

「家事を家電にやらせていたころは、さぞかし生活が楽だったんだろうな。」

友人はしげしげと炊飯ジャーを見つめた。かまどで火をおこしたりなどしなくても、これがあればスイッチ一つでご飯ができてしまうんだろう。"保温"ボタンもあるから、きっと暖かいまま保存できたに違いない。

「でもさ、そんな便利な生活に慣れてた人たちが、電気がなくなって家電を使えなくなった時は、大変だったろうね。」

「だろうな。僕らはそんな生活、社会の授業で習ったくらいでしか、知らないし。」

その生活が良いか悪いかなんて、わからない。

わかっていることは、昔の人は家電の使用やらでエネルギーを無駄にして、自動車やらで燃料をたくさん燃やして、ついには石油という資源を枯渇させ、同時に地球の環境も悪くしてしまったことだ。


end


2006/12

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