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8 私達モンスター召喚します。

つかの間の静寂も過ぎ、ダンジョンマスターの泣きじゃくる声が響く岩山のダンジョン。

子供の様に泣きじゃくるマスターにコアは冷静に声をかける。


【もうそろそろお話をお聞かせいただいてもいいでしょうか?】


慰めてくれていたスライムを抱きしめながら、涙を浮かべたまま少女は返事をした。


「ひぐぅ……。うんー……。いいよー。あのねー小型のモンスターで翻弄する感じがいいんじゃないかってー。」

【大型の方が強力なモンスターも多いですが?】

「頑張って掘ったけどー急いで掘ったからー、部屋が狭くて大きい子は力を発揮できないんだってー。それなら柱とか謎の像とかに隠れられる小さい子でー、奇襲して肉体的にも、精神的にも削っていった方がいいんじゃないかってー、めーちゃん(・・・・・)が言ってたー」

【なるほど。了解いたしました。ではモンスターカタログで探しますか?】

「そうするー。“ダンジョン管理”からのー“モンスターカタログ”っとー!」


泣きじゃくっていたのも忘れたかのように、ニコニコしながらスキルを発動させる彼女だった。

しかし抱きしめていたスライムを離すことはなかった。

どうやら抱き心地が気に入ったらしい。

抱きしめられてるスライム自身もまんざらではないようで、他のスライムも羨ましそうに体を震わせていた。


「えっとーまずは“鼠みたいなモンスター”っとー。まだまだ多いなー“手乗りサイズぐらいの大きさ”でどうだー。」


モンスターカタログの検索機能を使いながら、欲しいモンスターを探していく。

音声でも念じただけでも検索できる有能なモンスターカタログだが、抽象的なワードだと出てこないことがある。

一度この少女は、可愛いモンスターというワードで検索し何も出なかったのだ。

たとえ出たとしても彼女のセンスと合致するかは難しいであろうが。


「うーんーコアさーん。このシャドーラットってー進化とかしてもーあんまりおっきくならないー?」

【そうですね。通常進化先であるアサシンラットもスライムよりも大きくはなりません。】

「じゃあーこの子にしよー。お安いしー。」

【小型種のため直接的な攻撃力はありませんが、牙からの毒や麻痺などは侵入者を苦しめると考えられます。隠密系統のスキルも持っているので陰から翻弄するというワリー様の目的にちょうどいいモンスターです。】


シャドーラットは見つけることができれば、簡単に倒すことができるモンスターである。

しかしその見つけるのが難しいモンスターでもある。

“スキル:気配遮断”や“スキル:影同化”により敵から隠れ、獲物を一瞬噛みつき弱い毒を体内に入れる。

弱い毒なのでそれが直接原因で死ぬことはほとんどないが、ダンジョン内で知らないうちにかまれ動きが鈍り、他のモンスターに殺されてしまった例はいくつもある。

かなり有効なモンスターではあるが、脆弱で力のないモンスターなので魔王軍では軽視されがちで彼らが生息しているダンジョンは少ない。


「よーし。十体のしもべーシャドーラットたちよー我が呼びかけに答えよー!」

「チューッ」


また間延びした適当な呪文によって魔法陣が現れ、彼女の足元に十体のシャドーラット達が現れた。

見た目は真っ黒な毛のただの鼠だ。

よーく見ると額に生えている小さな角のようなものが、唯一魔物らしさを出してるだろうか。


「おぉー普通に鼠さんだー。可愛いねー。」

「チューッ!チュッ!」

「おー……なんかすごく話しかけられてるのだけ分かるー……。」

「プルプルッ!」

「え?通訳するってー?イム助ってー鼠語もわかんのー?すごすぎー!」


謎スペックであるスライムがシャドーラットの通訳を申し出て、少女も流石に驚いたように目を見開いた。

どこにそのような知識を蓄えられるような脳みそがあるかわからないが、スライムという生物はかなり賢いらしい。


「チューッ!チュゥ-ッ!」

「プルプルッ!プルップル!」

「うー?我が一族を召喚していただきありがたき幸せ?このダンジョンの繁栄に全力を尽くします?なんか見た目よりー言葉が硬いけどーそんなにかしこまらなくていいよー?みんなで楽しくダンジョンしよーよー?」

「チュッー!チュッチュッー!」

「プルゥプルッ!プルッ!」

「えっとーなんと寛大なお方?一生ついてきます?さぁ使命を?かな?硬い感じのスライム語はまだ苦手なんだよなー。とりあえずお仕事はねー、入り口付近の廊下で侵入者が来たら詳しく教えたりーちょっと噛んだりしてくれると嬉しいなー。」

「チュッ!!」

「プルッ!」

「承知っ!って……もう行っちゃったー。」


見た目とのギャップがかなり強いシャドーラットとの会話に混乱し続けた少女だった。

そんな主人を置いて、持ち前の俊敏性を発揮しあっという間にシャドーラット達はコアの部屋から姿を消した。

なかなか召喚されない雑魚でマイナーなモンスターである自分達一族を望んで召喚してもらえたのが、よほど嬉しかったようだ。


「コアさんー……鼠さん凄いねー。」

【想像以上の俊敏性でしたね。スライムのこともそうですが、弱者と言われているモンスターはまだ見ぬ可能性がありそうです。】


唖然とした少女と微妙にかみ合ってない会話するダンジョンコアだった。


「えーと気を取り直してーもう一種類召喚しよーっとー!」

「プルルッ!」


新たな変わった仲間が増えたダンジョンはますます騒がしくなっていくようだ。






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