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7 私達話し合いされます!

明るく笑ってダンジョンに戻ってきた少女たちが待っていたのは、ダンジョンコアの焦ったような規則性のない光の点滅だった。

いつもの冷静で何にも動じないコアとは違う反応に不思議そうにする少女は間延びした声で問いかける。


「コアさーんどうしたのー?ピカピカまぶしいよー?」

【先ほど入り口が開くのを感知しました。ですが、現在魔素を使ったトラップの設置数ゼロ、モンスターはスライムしかいません。入り口から侵入者が来た場合、生存できる可能性は極めて低いものと考えられます。】

「あっ!?」

「プルルっ!?」


コアの説明を聞いて、すっかり忘れてたとばかりの声をあげるワリー。

魔素不足解消のためと入り口を開けることばかり考えていたせいか、あの称号の持ち主らしく致命的なミスをしていたのだ。

モンスターは最弱のスライムしかおらず、トラップも手掘りしたときに作ったもの以外はない。

そんなほぼただの洞窟の先には、すごいお宝であるダンジョンコアがあるとわかってしまったら。

想像し、ようやく現在の状況が読めた少女は顔を真っ青にして慌てる。


「ど、どうしよーっ!?入り口閉じるー!?」

【ワリー様、外の様子はご覧になりましたか?】

「う、うん。誰もいなくてー、空と岩しか見えなかったー。だからー入り口はお山のそこそこ高いところにあると思うよー。」

【……。それならば閉じないでおきましょう。】

「えっいいのー?」

【人の姿が見えないのなら、多少の時間はあると思います。開けたままで魔素を吸収しつつ、その間に対策しましょう。】


彼女の説明を聞き、現在のダンジョンの位置が人が訪れる可能性が低い場所と判断したコア。

知識さえあれば誰でも使える科学技術が発達している地球と違い、この世界では人間の活動範囲は狭い。

それなりの高さがある岩山など何もなければ、人が好んでくることなどない。

いつかはバレることはあるだろうが、明日明後日に人間がダンジョンコア狩りに現れるということはないと判断したのだ。


その答えを聞いた少女は少し安心したような顔で頷いた。


「わかったー。じゃあ対策についてみんなで(・・・・)話し合ってくるねー。」

【かしこまりました。】

「また反応なくなるけどーよろしくねー。」


いつかのようにまた硬い土の床に横になり、目をつむる少女。

いきなり眠り始めたように見える主を不安そうに眺めるスライム達が周りを囲んでいる。

前と同じように彼女を構成している魔素が揺らぎ始めると、流石に驚いたのかスライム達が震え始めた。


「プルップルッ!?」

【大丈夫です。ワリー様を待ちましょう。】

「プルッ……。」


冷静な答えを返すダンジョンコアの声に、スライム達も心配そうではあるが落ち着いていく。

何もできない自分たちが騒ぐよりも、親愛なるダンジョンマスターの眠りを邪魔しないことを優先したのだ。

目が覚めたらきっとまた楽しそうにダンジョンを作ってくれることを信じて。





狂ったダンジョンが急に静かになったころ、ダンジョンがある岩山から数百キロも離れたヴァルガーリス王国王都にある建物では慌ただしく人々が動いていた。

あるものは書類を抱えてどこかに走っていき、あるものは細かい部品のたくさんついた器具を見ては数字のようなものを書き込んでいく。

その建物で一番上にある部屋では二人の男が書類を広げた机を囲んでいた。

一人は平和に生きてはつかないであろう筋肉と傷を持った男で苛立ったように顔をしかめていた。

もう一人は眼鏡をかけ知的な雰囲気を漂わせる細身の男で、まっすぐと書類を見ていた。

正反対な印象を受ける二人は、先ほど報告を受けた書類について話し始めた。


「また新たなダンジョン反応だと!?」

「あぁ。しかもタイプが傀儡らしい。」

「傀儡タイプかよ!あいつらモンスタータイプより話通じないじゃないか!」

「救いは場所がエトランジェ山ということだな。」


真剣な顔をしながら男二人は地図に赤い印をつけ、にらめつけるように見つめていた。

赤い印は王都より数百キロも離れた場所に示していた。

眉の間にしわを作っている男性は、もう一人の男性に話しかける。


「エトランジェか……。偵察を出すとしたらどこからがいいと思う?」


その問いに話しかけられた方の男性は、少し考えてから赤い印から少し離れた場所を指す。


「ここからならばあちらよりこちらが先に接触できるだろう。」

「パピーリィオか!農業都市だからここにはあいつらの支部はなかったはずだな。」

「あぁ。それとここにはあれの訓練施設があったはずだ。」

「あれを直接偵察に出せばいいというわけだ。」

「その通り。」


眼鏡をかけた男性の提案に大男は納得したように頷いた。

その後二人は今後の動きを話し合い、細かいことを合わせていった。

日の傾きが目で見てわかるほど変わってしまったころ、やっと動き出せるとこまで話はまとまったようだ。


「これでいいな。パピーリィオに連絡を入れておいてくれ。」

「わかった。」

「今度こそ、冒険者共に(・・・・・)先を越されるなよ。」

「もちろんだ。」


ただの侵入者たちとは違う何か動きはじめた。

彼らはダンジョンに幸をもたらすのか、災厄となりはてるのか。

まだ誰にもわからなかった。





ダンジョンの外が動き始めたころのダンジョンでは……。


「うわーんー!みんなに勝手なことすんなーって怒られたー!」

「プルッ!?プルッ!?」

【お疲れ様です。ワリー様。】


泣きじゃくるダンジョンマスターとそれを慰めるスライム達、冷静で変わらないダンジョンコア。

いつも通りの異常なダンジョンが広がっていた。


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