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6 私達オープンします!

「これで完成だー!」

『プルプルー!!』


6日間ほぼ手を止めず掘り続けた少女はやっとツルハシを置き、足元を埋め尽くしていたスライム達と一緒に喜びの声をあげていた。

彼女たちがいるダンジョンはもうあの息の詰まりそうな狭い部屋ではなかった。

立派なダンジョンだった。立派過ぎるダンジョンだった。

手掘りだとは言われても信じないレベルである。

古代文明の遺跡ですと言われた方が信じられるだろう。


「いやー本当なら3、4日でできる予定だったんだけどねー、よく考えたらさーただの洞窟ってー可愛くないよねー?」

「プルプル?」

「ツルハシでギリシアていうかー?神殿風の柱作るのに時間食っちゃったねー。」

「プルルー!」

「あーイム助たちがいなかったらーそこの彫刻失敗してたねー。スライムって石とかつるつるにできるんだーヤスリいらずじゃんーすごいーって思ったよー。」

「プルプリュー……。」

「そんなに恥ずかしがらないでよー。イム助たち最高なんだからさー。」


6日間の作業についてスライム達と笑いながら語り合う少女。

そう。語り合っているのだ。

通常では発狂しているであろう壮絶な6日間によって彼女はいくつものスキルや称号を手に入れていた。



個体名:ワリー

職業:ダンジョンマスター

性別:女

[スキル]

苦痛耐性 7

算術 5

格闘術 4

狂化 4

採掘 3

スライム言語 3

彫刻 2

ダンジョン作成 1

ダンジョン管理 1

火魔法 0

土魔法 0

[称号]

妄想者の身代わり

度を過ぎたバカ

ダンジョンマスター

スライム達の理解者




これが現在の少女のステータスである。

“スキル:採掘”や“スキル:彫刻”はもちろん作業によってスキル化し、彼女が効率的に動けるようにしていた。

そして作業中よくスライム達に語り掛け、一緒に寝食を放り出して仕事を続けた結果、“スキル:スライム言語”を習得したのだ。

難しい会話するでなく、日常での会話なら全く問題がないレベルまで習得していた。

そんな世の中の魔物学者達が頭を抱えるような状況を起こしてしまったせいか、称号が1つ進化してしまったのである。


もう1つの“称号:スライム達の理解者”についてはスライムの魔界での、特にダンジョンでの扱いが関係してくる。

スライム達は魔物の中でも弱者で冷遇されるのは当たり前で、食事によって強化や進化などもってのほかで、ただ他の魔物のエサとして召喚されることもしばしばである。


そんな悪環境が当たり前のスライム達を目を輝かせて見つめ、進化どころか分裂できるまで食事をすることを許してもらえた。

自分たちのリーダーであるスライムにはダンジョンで生まれた魔物にとって最も名誉である名前を付けてくれた。

一緒に土に汚れながら辛い仕事を笑いながら続け、自分たちのことを気遣うように声をかけてもらった。

自分達しか理解できないはずの言語を理解し、共に苦労を労ってくれた。


スライム達にとってワリーという少女は光であった。

自分達を理解してくれる唯一のダンジョンマスター。

優しくて明るくて、大切な我等スライムの真の主。

そんなスライム達の信仰にも似た感情によって、新しい称号が生まれてしまったのだ。


もちろん“度が過ぎたバカ”である彼女自身は全くそんな気はない。

ただ怖くて強いよりも可愛い方がいいし、可愛いペットには名前を付けるのは当たり前。

歌に飽きて、しゃべるのが好きだから隣にいたスライム達に話しかけ、会話の返事で自分を褒めてくれてるみたいだから内容が知りたかっただけある。


自身が知らない間にスライム達の至高の主になってしまった少女はマイペースに、ダンジョン作成のスキルを発動していた。


「コアさんいわくー出入り口と階段だけは掘っちゃダメなんだってー。」

「プルルプルー。」

「そーなんか時空がねじれてるからースキル使わないとお外とつながらないんだってー。ファンタジーだねー。」


ケラケラ笑いながら、彼女はスキルによって現れた板に描かれた、ダンジョンの扉のカタログを眺めていた。

様々なデザインの入り口が彼女が動かす指先に従って、スーッと流れていく。


「一番安いのはーやっぱりただの洞窟っぽいーつまんなーい。あっ見て!お菓子でできた入り口だってー!美味しそうー。だけどチョー高いー。」

「プルプルー?」

「イム助たちお菓子知らないのー?甘くて美味しんだよー。今度見つけたら食べさせてあげるー!」

「ぷるぅっ!?」

「あはっはー恐れ多いってー何それー。コアさんに言えば-お菓子の場所ぐらい教えてくれるよー。」

「プルプルー……。」

「うーん……。やっぱりー中の彫刻とかに合わせた方がーいいかなー?」


スライム達と会話しながら、入り口のデザインを見ていく。

とあるページで彼女の指が止まる。


「これかっこーいいー!!」


それは黒い大理石のような素材で出来た石造りの立派な門だった。

カタログでのデザイン名は『暗黒神殿の呪われし門』。

いかにも中で生贄を捧げてそうな門である。


「中の彫刻とも合うしーファンタジーだしーかっこいいしーこれに決めたー!!ちょっとお高いけどー節約したからいいよねー!ぽちっとなー!!」


興奮した様子の彼女は誰にも相談せずに(・・・・・・・・)購入し、入り口予定地に設置してしまった。

スライムの名付けの時にも思ったが、この少女にセンスを求めてはいけない。

入り口予定地は一瞬ぐにゃりと歪んだと思うと、最初から開いていたかのように外へつながる入り口ができていた。


「これでダンジョン一階はかんせー!!」

「プルプルー!!」


再び喜びの声をあげる彼女たちだが、少女の行動によってスライム達の空気が変わる。


「プルルッ!!?」

「えー外は危ないって?大丈夫ー大丈夫ー。」


開いたばかりで外に何があるかわからない出入口へと進んでいく少女とそれを止めようとするスライム達。


「プルッ!プルッ!」

「敵がいるかもってー?コアさんが無事なら大丈夫ー。」

「プルゥッ!プルル!」

「痛いの平気だしー、イム助たちの方がー死んじゃうから危ないよー?」

「プルゥー……。」


また気づかないうちにスライム達からの好感度を上げてしまった少女はとうとう入り口から顔を出した。

そこに広がっていたのは、空と岩肌だった。


「うー?岩山の真ん中辺りかなー?誰もいないよー。」

「プルゥ……。」

「ちょっとつまんなーいけどーまぁいっかー。コアさんのとこに帰って入り口の報告だー!」

「プルプル。」


少しの間辺りを見渡して、何もなかったせいかすぐに飽きた少女はダンジョンの中に戻って行った。

可愛いスライム達を引き連れて、いつものように明るくケラケラと笑いながら。


狂ったダンジョンマスターの作った異常なダンジョンが、世に解放された日であった。


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