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21 私達炸裂します!

ダンジョンマスタータイの手のひらで踊る彼らは、何もない部屋を油断しながら通り抜けていく。

そして魔法の光によって照らされた次への道を見て、一度足を止めた。


「ここのダンジョンマスターは何か通路に思い入れでもあるのかしら?」

「像の次は草でびっしりだな」


何も視界には入らないがらんとした印象のある最初の部屋とは違い、次の通路は緑で埋め尽くされた通路である。

そう。

おかしなダンジョンマスターとおかしなスライムの手によって立派に育てられた、あのトラップビーンズである。


多くの冒険者ギルドの資料室でほこりをかぶっている『モンスター図鑑第6巻』に書かれているトラップビーンズは

『高さは成人男性同じ程度から高くても倍程度まで伸び、太めの木に巻き付いていることが多い。

巻き付いて攻撃してくるがツタの太さはロープよりも細いのでナイフなどで簡単に対処可能。

豆は栄養豊富だが、攻撃手段として飛ばしてくるので、目などの重要器官は避けることを推奨する。』

というように評価されている。


しかしここに生えているトラップビーンズは、高さ4メートルていどにある天井まで埋め尽くすほど成長しており、先ほどまで視界のすべてを占めていた岩の灰色を全く見せていない。

ツタも立派でよっぽど切れ味のいいナイフでなければ、スパッといくのは難しいだろ。


良すぎる環境によって、野生種とはもはや別種でと言われそうなほど立派に育ったトラップビーンズたちである。


「何の草だろうか……。この辺りでは見ない植物だ」

「草は草だろ!」


ひよっこである彼らが、この植物をトラップビーンズだと見抜けないのも仕方がないことである。

そして彼らの目はよくわからない緑の先に見える次への空間に注がれている。


「なぁ!なんか向こう側にキラキラしたものがないか!?」


魔法の光がかろうじて届く通路の先で、希望のように輝くものを見つけた剣士の男。


「まさか!ダンジョンコアかしら!」

「さすがに早いと思うが、そうじゃなくても宝箱あたりがあるかもしれない」

「出来立てとはいえダンジョン産アイテム……ギルドで売却すればそこそこになるはずだな」


油断しきった彼らの前にぶら下げられた宝の香り。

未熟な彼らは、一番警戒すべきの未知という存在を踏みつけて、都合のいい夢だけ見て前に進んでしまった。

踏みつけられた緑たちは動かない。まだ息をひそめている。


「あっこの植物って豆なのね。あちこちに実ができてるわ」

「本当だ!ちょっと取っていこうぜ!」


通路を進み始め、やっと立派に実った実に気づいた冒険者がその実に手を伸ばした時だった。


『パンッッ!!!』

「なんだ!?破裂したぞ!」


手を伸ばされた豆が冒険者の手を拒絶するように大きな音をたてて、飛び出した。

その音が引き金になったのか、全方位の豆がはじけ、冒険者に向かっていった。


「痛っ!この草モンスターだったのね!」

「くっ……この通路自体が罠ということか」

「落ち着け!威力はそんなに高くない。俺の盾の後ろに隠れながら走り抜けるぞ!」


騎士の男性が盾を前に掲げて走り出した。

その後ろに慌てて隠れる他のメンバーも走り出したが。


「っ!!」


短剣使いの男性が転んだ。

出発前にしっかり確認したはずの()()()()()()()()()()()()()()()()いて、急に走り出した勢いに耐えられず壊れてしまった。


彼が慌てて立ち上がろうとするも、トラップビーンズはそれを許さない。

小動物を絞め殺せるそのツタで彼の全身を覆い、大地へと縛り付ける。

1、2本のツタであれば簡単に振りほどけたであろうが、ここには視界を覆うほどのツタがあるのだ。

単独で抜け出すのは不可能であろう。


「助けてくれ……!」


短剣使いは口までツタで覆われながらも仲間に助けを求める。

しかし、冒険者たちには届かない。


『バンッ!!ボンッ!!』

『カンッカンッ』


豆の破裂音とその豆が盾に当たる音で、彼のくぐもった悲鳴などかき消されてしまっているのだ。


「急げ!出口はすぐだぞ!」

「通路さえ抜けてしまえば大丈夫よ!」


仲間がツタに埋もれていることすら気づかず、彼ら前に進んでしまった。


「行くな……!俺はここだ……!」


必死に前に手を伸ばそうとする短剣使いの男をトラップビーンズたちは許さないといわんばかりに、締めつけていく。

そう、緑たちは怒っていたのだ。


自分たちの生きる場所を与えてくれ、毎日のように笑顔で声をかけて、自分の一番の戦力にわざわざ魔法を使わせて、愛情たっぷりに育ててくれた少女。

そんな彼女を殺しに向かう狼藉者が自分たちを踏みつけて進んでいく。

感情の起伏が少ない植物モンスターの彼らでも、怒りを覚えてしまった。


「んぐっ……!」


その怒りのこもったツタは短剣使いの首を絞めつけ、愚か者の意識を刈り取る。

起き上がろうともがいていた体は、力を失い、沈黙した。


狂ったダンジョン側の反撃が始まり、そしてその敵が一人減った瞬間だった。

二年以上ぶりの投稿

自分でも忘れてそうで4回読みなおしました()

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