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16 私達お見送りします!

夏バテしてました!

全部猛暑が悪い!!←

その日の空も美しく、透き通るような青をしていた。

疲れ切った妖精の表情とは対照的で、明るく力に満ちているダンジョンの外の空だった。


「……はぁー」


小さくため息をついたシロップの小さな指には、指輪がきらりと日の光を反射しながら存在していた。

あの時ダンジョンマスターが持っていた誓いの指輪は、絶対に取れないように約束をした者の指に合わせて大きさを変えるのだ。

妖精の小さな頭を悩ませるのは、この小さな指輪と、後ろから聞こえるやけに明るい声の持ち主である。


「シロップちゃんーいってらっしゃーい!」


先ほどシロップが出てきたばかりのダンジョンの出入り口では、幼く見える少女がぶんぶんと音がたちそうなほど勢いよく手を振っていた。

この少女こそが、妖精に誓いの指輪をはめさせて、厄介な約束を結ばせたダンジョンマスターであると、ここだけ見たものが信じるだろうか。


シロップを憂鬱にさせているとは、欠片も思っていないダンジョンマスターの彼女は上機嫌に笑いながら声をかける。


「また一か月後に合おうねー!」

「こっちは会いたくないですぅ……」


誓いの指輪でシロップが約束させられた内容は『一か月に一回ダンジョンマスターと合うこと』だった。

最初、少女が情報を集めたら戻ってくるという約束をしようとしたのだが、ダンジョンコアに止められた。


【それでは、永遠に戻ってこなくても、情報が集まってないからという言い訳ができてしまいます。こういうのは期限を決めた方が確実です。】


という提案になるほどーと納得した少女が、改めて考えたのがこの約束である。

シロップとしては余計なことを……と思わずにはいられなかった。


「はぁ……なんて言いましょうぅ」


ダンジョンマスターにつかまり、情報を集めの犬になりましたと報告しなければならないシロップはもう一度ため息をついた。

帰ってからの上司や先輩からの叱責を考えると、羽の動きも鈍ってしまう。




憂鬱な妖精の後ろ姿を見つめる少女は、そんなことを考えてるとは欠片も思っておらず楽しそうだった。

入り口のすぐそばで警戒していたイム助やシャドーラット達と喋っていた。


「シロップちゃんーちゃんとおうち帰るかなー?」

「チュー」

「お水もあげたしーお土産に豆さんもあげたしー」

「プルルッ」

「そうだよねー。来るときも一人で来たんだから一人で帰れるよねー」


ニコニコ笑いながら彼女たちは、ダンジョンコアの元へ向かっている。

その足取りは先ほどのシロップとは比べ物にならないほど軽やかなものだ。


【おかえりなさいませ。虫は外に出ていきましたか?】


いつもの場所でピカピカと光っていたダンジョンコアは相変わらず、侵入者に対して厳しい。

そんなとげとげしい発言にも表情を変えず、ニコニコと彼女は答える。


「うんー。きちんと帰り道の分のーご飯とお水渡したから大丈夫なはずー」

【そうですか。それでどうなさいますか?】

「うーん?」


ダンジョンコアの急な質問に少女はこてんと首を傾げた。

彼女は基本バカなのである。

空気や状況を読むのは苦手なのだ。

そんな彼女が主語のない質問を理解し、返答できるわけがない。

ダンジョンコアもそれに気づいたのか、質問内容を詳しく話し始めた。


【あの虫のせいでここにダンジョンがあるのがばれてしまいました。しかもモンスターの種類も何種類か見られてしまっています。】

「あーそうだねー」

【すべてのモンスターがばれてしまっているわけではありませんが、多少の情報は漏れてしまっています。妖精が委員会に情報を渡しに行ってるであろうこの間に、対策が必要なのではないでしょうか?】

「うんーここでシロップちゃんが知ってるダンジョンからーアッと驚くようなダンジョンに変えなきゃだめだよねー」


質問の内容を理解した彼女は、腕を組んでうーん、うーんと悩んでいるようだった。

が、1分もたたないうちに顔をパッと挙げてこう言った。


「うん!馬鹿だからわかんないやー!みんなに聞いてくるねー。」

【いつものですね。かしこまりました。】

「じゃあ反応なくなるけどーみんなよろしくねー」


ダンジョンコアや周りにいたモンスター達に笑顔で声をかけてから、少女はまた地面に横になった。

そして目をそっとつぶった。

この状況に慣れてきているモンスター達は彼女の周りで何やら、音を立てないように動き始めていた。

ダンジョンコアはいつもより明かりの強さを少し落とし、静かにそれを見つめている。





目をつぶった少女はふわふわとした感覚に包まれていた。

みんな(・・・)に会うときはいつもこうだなーと彼女が感じた次の瞬間、すとんと椅子の上に座るように着地した。

ゆっくりとつぶった目を開くとそこは先ほどまでいたダンジョンの薄暗い洞窟の部屋ではなく、白い部屋だった。

真っ白で四つの扉と少女が座っている王座のような装飾の椅子しかない部屋の中央に彼女はいた。

とても怪しい部屋であるが、彼女は安心しきった顔でこういった。


「……ただいまーみんなー」


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