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14 私達状況把握します!

ダンジョンコアの質問は細かく、重要な事柄が多かったため、何時間も続いた。

妖精の泣き声や悲鳴はとうの昔にかすれて、聞き取りづらいものになっている。

ダンジョンの未来に関わるというのに、とうの昔に飽きたダンジョンマスターの少女はスライムを撫で回して遊んでいた。

そんなマスターにダンジョンコアは声をかけた。どうやら尋問は終わったようだ。


【ワリー様。とりあえずこの虫から聞きたいことは聞けました。】

「おー終わったー?」

【はい。この虫下っ端のようで、詳しいことはわかりませんでしたが、大体の話はわかりました。】

「そっかー。じゃあー私にもその内容わかるように説明頼むー!」

「うぅ……その前に水くださいぃ……」


元気いっぱいにダンジョンコアに頼む少女とは対象的に、石化してないところまでぼろぼろになった妖精はかすれた声を上げていた。

何時間もいつ殺されるかどうかもわからない状況で、質問攻めにあっていれば喉を痛めていてもおかしくない。


しかしそんなズタボロな妖精に対しても、ダンジョンコアやモンスターたちは冷たかった。


【この虫からもらえる情報はもうないので、死んでも構いません。モンスターの餌にでもしてください。】

「プルッ!」

「えー妖精さんー食べちゃうのー?もったいなくなーい?」

「ひぃっ……」


物騒な話を聞いてかすれた悲鳴をあげる妖精にとって、唯一の救いはダンジョンマスターの少女が殺すことに顔をしかめたことであろう。

もちろん彼女のことだ。人道的な深い理由など持ち合わせていない。

ただ、珍しいファンタジーな妖精さんを飼ってみたいなーとしか考えていなかった。

もしコアやスライムたちが解剖を勧めていたら、そっちを選んでいたかもしれないぐらいの軽い気持ちである。


【そもそもこのダンジョンに水などありません。】

「そういえばーみんな水なんて必要なかったねー。」

「えぇ……そんなぁ……」

【諦めて干からびて死になさい。】


絶望している妖精に対して冷たく言い放ったダンジョンコアだった。

何度も言っているが、ダンジョンマスターやダンジョンから生み出されたモンスターは魔素さえあれば生きていける。

植物型であるトラップビーンズですら、ダンジョンで生まれた種ならば水分も日光も必要としていないのだ。

洞窟型で、外も岩しかないような山で飲むことができるものなど限られているだろう。

そんな環境の中で少女は何か思いついたかのように、あっと小さく声をあげた。

そしてそばにいたイム助に話しかける。


「イム助ーあの食いしん坊な子ってー今どこにいるー?」

「プルルッ。」

「そっかー呼んできてもらえるー?」

「プルッ!」


少女に頼みごとをされたイム助はスライムらしからぬ速さで、部屋を出た。

彼女が何を考え、なぜそうしたのかイム助にはわからない。しかし彼女が望むならば、考えるまでもなく体が動くのだ。


彼女に期待していた妖精だが、この状況で何かするわけでもない少女に望みはないと悟った。

死を受け入れるしかなくなった妖精は、地面で小さなうめき声をあげるだけになっていた。

ダンジョンコアはやっと静かになったとばかりに、情報を報告し始める。


【では報告させていただきます。】

「はーい。」

【あの虫はヴァルガーリス王国のダンジョン資産委員会というところに所属していたようです。】

「ヴァルガーリス王国ってーこのダンジョンがあるとこの国だっけー。」

【はい。どうやらダンジョンが開くときに出る特殊な魔素を、感知する道具が王都にあるらしく、それでこのダンジョンの場所がわかってしまいました。】

「じゃあすぐにいっぱい攻めてきちゃうのー?」


見つかりにくく安全なはずのダンジョンすぐに見つかってしまい、少女は困った顔している。

しかしダンジョンコアは、慌てた様子のない安定した光を放っていた。


【この組織の狙いは(ダンジョンコア)ではないので、すぐに殺されるということはなさそうです。ダンジョン資産委員会とはヴァルガーリス王国が、ダンジョンを一つの財産と考え、半永久的に利益を得ようと発足した組織になります。】

「うーん……つまり味方なのー?」

【いえ、殺されることはないですが、飼い殺しにされる可能性が高いです。剣を突き付けられながら、彼らの望み通りに働く奴隷にはなりたいのでなければ、信用しすぎるのは避けるべきでしょう。】

「それはやだねー。つまんなそーだもーん。」


ダンジョンコアの説明を聞いて、顔をしかめる少女。

誰かに縛られるなど自由気ままに生きていたそうなマイペースな彼女とは、正反対の位置にある。


その後ダンジョンコアが説明したダンジョン資産委員会の活動はこのようなものだった。


まず王都にある魔道具によって、ダンジョンの場所やタイプを把握する。

そこに隠蔽魔法と呼ばれる気配を消す魔法を覚えた妖精達を偵察に出す。

妖精達によってトラップや魔物の分布を把握し、攻略法をまとめ効率的にダンジョン攻略ができるように計画をねる。

外に危険がない程度までモンスターの数を減らし、しかしコアは破壊せず、永遠に魔石や貴重な宝を出す施設としてダンジョンを利用し、管理していく。


それがヴァルガーリス王国の中央の考えらしい。

実際に何個かのダンジョンは委員会の手によって、飼いならされているらしい。


「なんかー想像してた侵入者と違うねー。もっとー絶対コアぶっ壊してやるーって感じかと思ってた。」

【そのような人間もいるそうです。冒険者と呼ばれる職業についているもので、ダンジョン資産委員会とはよくダンジョンの奪い合いをしているのだそうで。】

「そっちにはまだこっちの場所バレてないのー?」

【その魔道具を持っているのは委員会の方だけなので、虫が言うには大丈夫ではないかと。】

「そっかー。」


複雑になっていく状況に深く考えるのが苦手な少女は、顔をしかめながら首を何度も何度も傾げた。


「難しいねー。」

【そうですね。しかしここの場所がばれている以上、ダンジョンをもっと強化しなければなりません。】

「頑張るしかないねー。ちょっと増やしたい種類の子もいるしー。」


コアとの会話を終えるとうーんと伸びをしながら、彼女は動き始めた。

どちらをどうするとかそういう細かいことを考えるのをやめたのだ。

ただ今までよりちょっと気を引き締めて、頑張ってダンジョンを作るしかないなーという結論に落ち着いたのだ。


冒険者の刃を退けるにしろ、ダンジョン資産委員会と手を組むにしろ、力が必要だった。

だから彼女はただただ強くなること選んだのだ。


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