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11 私達発見しました!

「ふんーふふーんー♪」

「プルッ」

 

ダンジョンマスターの音の外れた鼻歌が響くダンジョンは、トラップビーンズを植えてから1週間がたっていた。

この1週間でダンジョンも大きく変わっていた。

スライムの数もまた増え、シャドーラット以外の新しいモンスターも増やしてますます賑やかになっていた。

そして何より一番変わったのが、この道である。

トラップビーンズを植えた道はもう岩肌が見えていなかった。

すべてよく伸びたつると生い茂った葉、そしてあちらこちらに実っている豆が岩肌を覆い隠している。


「この豆すごいねーあっという間におっきくなっちゃったー。オリジナルが昔育ててた朝顔よりも成長早いよー。」

「ぷるぅっ!」

「そっかー魔素を糧に育つからーダンジョンと相性が良かったんだねー。」


納得したような顔でうなずいている少女だが、それだけでここまで成長が早くなることはない。

確かに植物系モンスターの多くは魔素が多い場所では、通常よりも大型に変化したり、成長速度が上がったりする。

だが限度がある。このトラップビーンズのように5倍以上ものスピードで成長することはない。


「じゃあイム助ーいつものお願いー。」

「プルッ!プルルップルゥッ!」


偉大なる主に頼まれたスライムは体をいつも以上に震わせた。

震えた音が道に響き渡ると同時に地面が淡く輝いた。

その光景を少女は楽しそうに見つめていた。


「やっぱりきれいだよねーイム助の魔法ー。」

「プルル。」

「ははっ。そんなに謙遜しないでよー。イム助のおかげでー豆さんもこんなに元気になってるんだしー。」

「ざわわっ。」

「豆さんもお礼いってるみたいだよー。」

「ぷるぅ……。」


トラップビーンズがこんなに成長した原因はこの魔法にある。

イム助が使った魔法は『大地の豊穣』と呼ばれる魔法で、土壌をそこに植わっている植物にとって最適化する。

大きな神殿がある土地では5年に1回ある『豊穣祭』で神官たちが畑に豊穣を願って行う魔法でもある。

5年に1回でも他の土地の2倍もの収穫量になる凄い魔法なのだ。

それを大地と生きるガイアスライムであるイム助が()()()()かけているのである。

こんな異常な成長が起こるのもおかしくない。


魔法を使わせた本人はもちろん、特に何も考えてない。

ただトラップビーンズが魔素さえあれば日光も水もいらないと聞いて、肥料はどうしようかなーなんてバカなことを考えていただけだ。

でもここは岩山で肥料になるようなものがないため、スライム達に相談したところ

「プルル、プルプルッ!」

(訳|つまり大地を富ませればいいのですね。お任せください!)

とイム助が気力がみなぎるままに魔法をかけたのである。


その結果ダンジョンの道がトラップビーンズにとって天国のような環境へと変わってしまっただ。


「それにしてもーこのダンジョンも立派になったよねー。」

「プルッ。」

「そろそろー2階層を作って方がいいってーコアさんに言われただー。でも階段ってすごく高くてーちょっと魔素が足らないんだよねー。」

「プルルッ?」

「入り口空けたけどー空気中にある魔素って少なくて足らないんだよねー。一時間に20ぐらいしか増えないんだよねー。」

「プルプル。」

「今どれぐらいかーイム助も見てみるー?“ダンジョン管理”っとー。」


スライムにも見えるようにしゃがんで、彼女はのんびりとした口調でスキルを使った。


名称:名無し

種類:洞窟・遺跡型

マスター:○○(ワリー)

モンスター:357

トラップ:1

魔素残量:7253



「最初は一万ぐらいあったのになー。扉に使いすぎちゃったかなー。」

「プルル?」

「うーん?魔素を増やす方法ー?殺す意外だとー普通の生き物がいればーそのあふれた魔素を吸収するらしいよー。でもほらーこの辺生き物いないしー。」

「プル……!プリュッ!?」

「えーどうしたのー?そんなに慌ててー?」


ダンジョン管理の画面を見ていたスライムが急に変な動きをし始めた。

彼女いわく慌てているときの動きらしい。

不思議そうにスライムを見た後、自分もダンジョン管理の画面の方を見ると、彼女の目が大きく見開いていく。


名称:名無し

種類:洞窟・遺跡型

マスター:○○(ワリー)

モンスター:357

トラップ:1

魔素残量:7474


「……おかしいねー?急に数字増えたよー?」

「プル……。」

「これってー……もしかしてーあれかなー??」

「プルッ。」

「……侵入者がきたぁぁぁー!!!!」

「プルルッ!!!」


魔素の急激な上昇に気づいた1人と1匹は大きな声を出した。

急に増えたことから、侵入者が入ってきてその魔素をダンジョンが吸収したと判断したのであろう。


「どーしよーイム助ー。」

「プルプルッ!」

「そうだねー!コアさんとこに行こー!」

「チュッ!」


慌ててダンジョンコアの元に向かおうとする彼女たちを呼び止めたのは、小さな鼠の鳴き声だった。

入口付近を偵察しているシャドーラットのリーダーが彼女たちの後ろにいた。


「あっ鼠さんだー。」

「プルプルッ!」

「チューッチュチュッ!」

「プルゥッ!!」

「え?本当にー?捕獲したのー?」

「チュッ!」


どうやら侵入者が入ったところをシャドーラット達が発見捕獲したらしい。

その報告を聞いてほっとした少女はすぐに不思議そうな顔になった。


「偉いねー。でもどうやったのー?君たちにはー大きすぎなかったー?」

「チュ……チュチュゥ。」

「プルルッ。」

「えっ人間じゃなかったのー?じゃあ何ー?動物ー?」

「チュゥチュッ。」

「プルプル。」

「見たほうが早いってー?」

「チュッ!」


シャドーラットの短いが鋭い鳴き声の後、後ろから3匹のシャドーラット達が引きずるように何かを運んできた。

大きさはスライムよりも少し小さいぐらいだろうか。

確かにこれならシャドーラットでも捕獲できるだろうと納得した彼女だったが、その何かがはっきり見えるようになると、目を輝かせ始めた。


「わぁー凄いねー!ファンタジーだねー!」


それは、淡い緑のような色の髪の小さな女の子のようだった。

どうやらシャドーラットたちの毒によって、気絶しているようだった。

しかしこれが人間じゃないのは、サイズ以外にもわかる箇所があった。

長くとがった小さな耳。

そして背中から生えている半透明なトンボのような羽。


「妖精さんなんてー初めて見たよー!」


ケラケラ笑いながら、それの羽を2本の指でつまむダンジョンマスター。

狂ったダンジョンの初めての侵入者は哀れな妖精だった。




実は今日誕生日な作者でした

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