驚き
飲み会も中盤に差し掛かり、楽しかったあの頃と違い社会に揉まれて屁理屈が言えるようになった。
そんな中懐かしいなにをしても楽しかった頃の話
が始まったのもつかの間で衝撃のサプライズも用意されていた。
「俺とこいつの家隣やから親も仲良くてたまたま、駅前に新しく塾ができるってチラシ見て、2人仲良く入らされてん。俺らはそこまで頭悪いわけではなかったのに入れられたからさ。めちゃくちゃ嫌やったんやけど、入ったおかげでこいつは…………(照)」
柄にもなく隆明がボケている。顔を手で覆い照れている仕草をしている。やはり、勘違いしている。
「入ってたなー塾!じゃあ、会場にはあったんちゃうん?駅前の塾やったら地域は一緒やろ?来てなかったんか?成人式?」
「かずき、説明は続くんよ!確かに同じ塾の子やねんけどその子は何故か隣町から来てたよ!美島中やから俺らと会場も違うから会えていない。」
「とおぉ!!チャリで駅前まで20分ぐらいあるで?
なんでまた美島中の子がわざわざ?」
「さすがに、そこまではわからないけど。こいつはその美島中の……」
やっぱり隆明は勘違いしている。
『中村京子』ちゃんと付きあっ……」
「隆明。付き合ってないよ。『中村』と」
言い切る前に隆明の勘違いを止めることができた。
ほとんど行ってしまってる気がするが否定することが前提だから結果良ければ全て良しってことにしよう。
「えっ?そうやったん?付き合ってなかったんや……そうなんや……」
「おいおい!なんやねん……せっかく面白くなりそうやったのに新事実がされると思ったのになんやねん。」
かずきが睨みを効かしているのを感じた。それより
隆明が最後に何かを言いかけやめたのが気になり、目をやるとまた少し口角をあげていた。
「てっきり付き合えてると思ってたわ。じゃあ、気持ち伝えずに卒業してしまったん?」
「うん。言えてない。言う勇気が僕にはなかった。今でもあの時のことは後悔はしてる。」
「あれから会ってないん?高校同じところ受けてたやろ?なんで伝えてないん?」
「いや、隆明にはやってなかったけど『中村』落ちるの怖いって言って滑り止めで受けた私学に入学すること公立の受験前に決めたから同じちゃうねん高校。」
「嘘やろ……え?あれは中学の卒業式終わりにお前塾に行く言うてたやろ?あれはなにもなかったん?」
「あ〜、塾で『中村』と待ち合わせして2人で写真撮って終わった。告白する覚悟で行ったけどそこでもビビって無理やったんよ。僕はアホやほんまに。今もまだあれやのに」
「なにしてんねん!揃いも揃って。勿体無い!チャンスすごくあったのに!見逃し過ぎやわ『京子ちゃん』
も………」
「え…?今なんて?」
「あっ……いや、2人してなにしてんねんと思って」
「いや、違う。そこじゃ……」
「おーい!結局傷ついたのは俺だけかよ!あきらはダルいし、2人は論外やしなんやねん!もう0時やんけ!あきらっ!起きろ!!おい!吐くなよ!おい!」
僕たちは気がつけば、店に入って4時間が経とうとしていた。集まる前から次の日があるから早めに帰ると決めていたが呑み会というものは大体時間通りには終わらない。特に友だちとのには。
「隆明。どういうこと?」
「あ、いや……また日を改めて話さないか?俺、関西に転勤になったからすぐには無理だけど落ち着いたらこっちから連絡入れるから。」
「いや……でも。」
「今日はもう遅いし、あきらもあーだからな。」
明らかに様子がおかしい。気になる。だけど、今日はもう絶対に話さないだろう。本当に思い通りにいかない。
「じゃあ、俺はあきらと帰るけどお前らは?」
「俺は迎えに来てもらえるから大丈夫。お前は…どうする?送って行こうか?」
さっきとは立場が変わって君がばつの悪い表情を浮かべている。隆明。なにを隠している。
「いや、最終電車あるからそれで帰るよ。色々ありがとう。」
「隆明!悪いな奢ってもらって!次のは3人で出すわ申し訳ない!じゃあ!またな!」
「かずきもあきらのことよろしく!今日は久しぶりで嬉しかったから気にしないで!次はよろしく!おやすみ!」
「じゃあ、隆明近いうちに。」
「また連絡入れるよ。必ず。」
最終電車なんてなかった。明らかに何かを隠している。隆明はそんなやつじゃなかったはずだ。だけど、確かにあの時の隆明は…………
『京子ちゃん』と言った。
隆明が下の名前を呼んだ……
僕でさえも呼んだことがない『中村』の下の名前。
隆明と『京子ちゃん』の間には
僕と『中村』が知らないことがある。
僕の1番好きだった「中村京子」
君のことを全て知っている訳ではないけれど
まさか、久しぶりの再会で
飛んだサプライズを受けるとは。
なにを隠しているか知らなくてはならない。
知らなくちゃならない。
あの日から丸1ヶ月が経ちかけた時
隆明から着信が……きた。