「満願」 米澤穂信 ※
第27回山本周五郎賞受賞作。
ミステリの短編集です。
米澤さんといえば、古典部シリーズで有名ですね。アニメにもなっていました。
青春とミステリを融合させる、YAから大人になりかけくらいの世代にうってつけの作風をお持ちの作家さんだと思います。
この作品はそんな米澤さんの真骨頂とでもいうべき珠玉のミステリ短編集。
交番勤務の警官、在外ビジネスマン、美しき中学生姉妹、フリーライター、そして表題作の殺人に手を染めた女の話。
全部において、緻密な伏線が張られており、最初は淡々と読んでいくんですが、終盤にかけて綺麗に伏線を回収していく展開は見事でした。やはり、ネタが明らかになる辺りには物語に惹きつけられ、最後はなんともいえない余韻が残りました。
個人的に一番印象に残ったのは、石榴というお話。
美しい母から生まれたのは美しい姉妹。
母と父との関係が破綻したとき、姉妹がとった行動とは……。
ネタバレになってしまうのでここではあまり書けませんが、最後はぞっとするようななんともいえないものでした。深い愛憎、人間の恐ろしさを描き出しています。
どの話も人間が奥深くに抱えている闇をえぐり出すような、そんな物語でした。
美しくも罪深い人間の業がつまった作品です。