「困ってるひと」 大野更紗 ※
これは作者である大野さんの実体験にもとづくエッセイで、とにかくものすごいです。
大野さんはある日突然世にも稀なる難病にかかってしまいます。
筋膜炎脂肪織炎症候群。
なんだかよくわからないけれど、自己免疫系の疾患で、難病だそうです。
ビルマ難民支援のために奔走していた当の本人が、医療難民となります。
まず最初はどこの病院でも診断がつかないということで、全身激痛に見舞われ、高熱のなか軋んで動かない体を引きずってようやく診てもらえる病院へ。
しかし、病院が見つかったからといって、安心などという言葉はありません。
ここからが本当の地獄。
麻酔なしのオペ。
激痛をともなう検査地獄。
申請書類地獄にステロイド地獄。
やがて抑うつ状態となり、「死にたい」と思うようになる。
次から次へと襲ってくる苦難の連続に、祈るような気持ちにさせられました。
ここまで書くと、どんだけ暗い話なのかとお思いでしょう。
しかし、ここがすごいと思うのは、これだけの重い話を、大野さんは明るい筆致で書いていくのです!
痛い、苦しい、つらい。
もうやめてと思うけれど、巧みな文章で思わずくすりとしたり。
この本のすごいところは、重苦しくなりがちな闘病記がとてもコミカルで軽妙に書かれていること。
難病についてなにも知らない私のような人間にも軽く読んでしまえる間口の広さにあります。
途中かなりつらい描写もあるけれど、最後には光も見え、救われたような気持ちになります。
そして、一番思ったこと。
今、健康で普通に暮らしていること。
そのことのどれだけ幸せなことか。
当たり前が当たり前でないということ。
そんなことを思いました。
痛いとか苦しい描写が苦手なかたは読まないほうがいいかもしれませんが、大事なことに気づかせてくれる本です。
なにかに迷ったとき、読んでみてほしい本だと思いました。