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「i」 西 加奈子
「この世界にアイは存在しません」
主人公のアイは数学教師に言われたその言葉に、この先も何度となく心乱されます。
数学教師の言っているのは彼女のことではなく、数学の話なのですが、アイのなかでは自分のことと重なってしまったのでしょう。
西加奈子さんの作品は、最初はそんなに入り込めないなと思うことがよくあるんですが、この作品もそうでした。
でも、後半になるにしたがって、身を切られるような痛みや人生のことを考えさせられ、最終的に読まされてしまう。強いメッセージを感じる作品でした。
一人の女性の人生を描くって、こんなにもドラマティックなのか。
周囲にいる人たちも温かいけれど、自分を持っている人たちばかりで素敵に思えます。
彼女は存在していい。
たくさんの喜びも悲しみも抱きしめて、彼女はこの作品のなかに存在しています。




