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「朝が来る」 辻村深月 ※
本屋大賞ノミネート作品。
これはなかなか繊細なテーマを扱っていて、なかには読むのがつらいという人もいるかもしれない。
だけどそれだけリアリティーがあって、読ませる物語でもあると思います。
佐都子には6歳になる息子がいます。よくある家族と、よくある幼稚園でのトラブル。
けれど息子である朝斗は実は養子で……。
不妊治療や特別養子縁組など、テレビのニュース番組の特集とか、ドキュメンタリーで観たことがありますが、とてもその辺りのことをよく調べられていて、リアリティーがあります。
だからこそ、読んでいて痛くて苦しい。
中学生で母になることの大変さ、悩みや葛藤などもものすごく伝わってきて、いろんな意味ですごいです。
子供が欲しくても出来ない辛さ、思わぬ妊娠で苦しむ少女、彼女たちが出会ったとき、他の人にはわからないなにかが繋がったようでした。
出産を経験した人なら共感して泣く場面がたくさんあると思います。そうでなくても、命の尊さとか家族とはなにかとか、いろいろ考えさせられる作品だと思います。
これまでにない辻村作品は、新境地へと足を踏み入れました。




