「いなくなれ、群青」 河野 裕 ※
新潮文庫NEXという最近新しくできたらしいレーベルが気になり、試しにまずこの作品から読んでみました。
階段島という、どことも知れぬ場所が舞台の青春ミステリ。
まず「僕」と「100万回生きた猫」の不思議な対話からお話が始まります。
そしてそこで僕は、どうしようもなく「彼女」に出会う。
瑞々しく繊細な文章が、不思議な透明感を感じさせる作品。どちらかというと、感性で読む作品だと思います。
どこか不器用な、なにかが欠けた人たちが、魔女が住むという階段島に突然来ることになるというのがお話の中心となっています。
そして、その不可解さを住人たちは騒ぎ立てることなく享受しながら、淡々とお話は進んでいきます。
謎めいた、地に足のついてないような感覚がこの作品の持ち味であると同時に、一番のミステリ要素ですね。そしてそんな階段島でとある事件が起きます。
どこか欠けたなにか問題を抱えた人物に、なんとなく親しみのようなものを覚え、いとしく感じます。傷つき悩む若者たち。そういった感情を繊細に描いています。
物語はまだ始まったばかりというようなところで終わったこの作品。
また続きも気になるところです。