6話
(そういえば頭もこんぼうで...ゴブリンのヤツめ~。)
左手で握った拳を振るわせながら、ガンズに言われた扉を右手で開けて中に入ると、休憩中の警備兵が2人が紅茶と水を飲みながら、談笑しているところだった。
「あの~、ガンズさんに言われてケガの手当てに来たんですけど...。」
緊張からか、若干声が小さくなってしまう。
その小さい声を聞いた2人が扉の方を向く。
見た目は、紅茶を飲んでいる方が、金髪の見る人が見たらカッコイイのではないかという顔立ちで、警備兵というより優雅に紅茶を飲んでいる貴族なのでは?と、思ってしまう人物、水を飲んでいる方は、黒髪のふっくらとした体型にカイゼル髭が特徴的な人物だ。
「隊長の紹介で...。」
と、ふっくらカイゼル髭が話そうとしたその時、紅茶を飲んでいた貴族?がガタッと席を立ち、大きな声で話し始める。
「なんということだ!美しいお嬢さんがケガをしているじゃないか!ボーナル君!大至急、奥から救急箱を持って来るんだ!」
「ハァ...。わかりました。」
やれやれといった感じで救急箱を取りに行くカイゼル髭ことボーナルさん。
金髪貴族?が、ファディアの近くまで来て心配そう...キメ顔で話し始める。
「大丈夫です。そんな心配そうな顔をなされなくても、治癒魔法は使えませんが、すぐに薬でその美しい顔を治療しますからね。」
心配そうな顔をしたわけではなく、金髪貴族?《貴方》の勢いに呆気に取られていただけですとは、さすがに言えなかった。
「え、えっと...。」
困った感じでファディアが話そうとしたのだが、金髪貴族?が間髪入れずに話し始める。
「おっと、すいません。まだ自己紹介をしてませんでしたね。私は、エデル・ドーナウといいます美しいお嬢さん。」
貴族がするような、優雅な一礼をするドーナウ。
「え、えっと、私は、ファディア・ミランコートっていいます。よろしくです。それで...。」
動揺しながらも自己紹介をして、治療はしてもらえるみたいだったが、ここに来た理由を一応説明しようとするも、ドーナウがまたも話し始める。
「ファディアさんというのですね。あ~、名前も美しい~。どうです?ケガの手当てが終わってから一緒にお茶でも?この間、良い店が...。」
「ダメに決まってるじゃないかエデル。もし、その人がいいと言って、さらに俺をやり過ごすことができたとしても、外にいるガンズ隊長に絶対に捕まっちゃうよ。」
そこに幸運にもボーナルが救急箱を持ってやって来る。
「ボーナル君。君も無粋な事を言うね。私には美しいお嬢さんと...いえ、ミランコートさんと僕の間には隊長という障害さえも乗り越え、優雅な一時を過ごしているのが見えるようだよ。」
ボーナルはそんな妄想話しを聞き流しながら、ファディアの手当てを始める。
「すみません。同僚が申し訳ないことを。根は良いヤツなんですけどね。あっ、僕はカッツ・ボーナルっていいます。」
「ファディア・ミランコートです。手当てありがとうございます。でもいいんですか?話し聞き流しちゃって。」
そう言いながら、ファディアはチラリと今だ妄想から帰って来ないドーナウを見る。
「あ~、エデルのアレは聞き流すぐらいがちょうどいいんですよ。はい、これで手当ては終わりです。」
「ありがとうございましたボーナルさん。」
今だに妄想から帰って来ない同僚をチラリとみて、引きつった笑みでボーナルがファディアに話す。
「彼のことは僕に任せて、今のうちに行かれることをお勧めしますよ。」
「そ、そうですね。そうさせてもらいます。今日は、ホントにありがとうございました。」
「いえいえ、それでは気を付けてお帰り下さい。」
お互いに挨拶を交わし、ファディアは駐留所を後にする。
だいぶ期間が開いてしまい申し訳ないありませんでした。
もしかすると、とうぶんはこんな感じで進行するかもですのでよろしくお願いします