5話
街道から西に歩き出してから約30分といったところで、商業都市ディラの防壁が見えてくる。
ここまで来れば、行き交う人や馬車等も多くなり、帰ってこれたのだと少しホッとする。
ただ、何故かすれ違う人すれ違う人がファディアを見て、ハッとした顔や、心配そうな顔をするので、確かに怪我はしたけれど、なんでそんな顔にまで出すのだろうと、首を傾げながら門の所まで歩いて行く。
門まで行くと、警備兵の人が2人で行き交う人達の対応をしていた。
左側の警備兵は都市から出る人、右側の警備兵は都市に入る人の対応をしているようだったので、ファディアは右側に並ぶ。
数分程でファディアの番になり、王都式軽装鎧を着た厳つい顔の警備兵が、その厳つい顔に似合わない心配そうな顔で、身分証を見せるようファディアに言う。
「身分証の提示をお願いする。また、冒険者でなければ銅貨2枚をお願いする。」
身分証とは、その者が本人であると証明する目的で50年前に発案され、本人の魔法証(魔法で作った模様人それぞれ違う)、生年月日、出身地が記された紙である。
これを冒険者のためにと、各ギルドが意見を出し合って改良した物が、冒険者手帳(商人手帳もある)なのだ。
また、銅貨2枚というのは税金なのだが、冒険者には免除になっている。
これを免除する代わりに、都市にモンスターの大規模な襲来や戦争などが起こった時、無償で冒険者は都市を助けなければならない。
都市によって受け取っている金額は違うのだが、この税金を受け取っていないところもある。そういったところでは、冒険者は自由に選択ができるのだが、もちろん報酬がでるので、参加する者は多い。
「これでいいですか?」
と、ニコッと微笑みながらファディアは首に下げている冒険者登録時に貰った、木のネームプレートが付いているネックレスと、ポーチから出した冒険者手帳を警備兵に見せる。
警備兵は少し引きつった顔で、ネームプレートを見てから、差し出された冒険者手帳を開いき、1ページ目にある魔法証などを目で確認し、魔法認証器に差し入れる。
「それでは、水晶に手を置いてくれ。」
「わかりました。」
警備兵にそう言われて、水晶玉に右手を載せる。
そうすると、水晶玉が青色に光り出す。
この魔法認証器は、冒険者手帳に記されている魔法証と、本人の魔力が一致すれば青色に光り、一致しなければ赤色に光る。
また、偽造された物でも判別が可能で、その時には紫色に光る。
「よし、通っていい。ただし、まだウッドプレートでランクFなんだからあまりムチャはするなよ。頭から血が出ているぞ。」
「え!?」
それを聞いて驚いた顔をし、水晶玉から慌てて右手を離し、離した右手で頭を押さえる。
それを見た警備兵は、呆れた顔でファディアに冒険者手帳を返しながら言う。
「なんだ気づいていなかったのか。」
冒険者手帳を少し痛かったが左手で受け取り、恥ずかしさから頬を赤く染めて頷く。
「しょうがないな、そこの扉から中に入って、傷の手当てをしてもらえ。」
「いいんですか?」
ポーチに冒険者手帳をしまいながら警備兵に聞き返す。
「ああ、そんな顔で街中を歩かせるわけにもいかんからな。」
「そ、それもそうですよね~。」
苦笑いでファディアは警備兵に答える。
「まったく...。俺の名前はケヴィン・ガンズ。中のヤツに俺の名前を言えば大丈夫だ。」
頭をかきながらファディアに自己紹介をする。
「ガンズさんですね。私は、ファディア・ミランコートっていいます。その、ありがとうございます。」
ガンズにお辞儀をし、指定された扉に走って行く。
「まったく、世話のかかる新人だな。」
ファディアを見ながら、ガンズはそう呟くのだった。
新キャラを出しました。
ただ、今回も無理やり終わらせた感があったので反省。