2話
ダンジョンの中に少し入っただけで、入口から差し込む光が失われ、目の前は暗闇で足元も見えない。
ファディアは、右手を胸の高さで軽く握り、自分の周囲照らす魔法を唱え、右手を広げた。
「ライティング。」
広げた右手から直径10センチ位の光球が頭の高さまで浮かび上がる。
これは初級の光魔法で、この魔法が使える使えないとではダンジョン探索が非常に難しくなる。
ただ、そのような危険を冒す冒険者はまずいないだろう。
なぜなら、パーティーには魔法使いや僧侶など、魔法が使える人物が少なくとも1人はいるからである。
もちろん、トレジャーハンターになる上で、最低でもこの魔法が使えないと正式にこの職業に就くことが出来ない。
なので、この魔法が出来た時、ファディアが内心ホッとしたのは言うまでもないだろう。
「とりあえず、明かりの確保はこれで大丈夫ね。」
そう言いながら辺りを見回す。
ダンジョン内は洞窟のような感じで、奥に続く道が1つあるだけだった。
「へ~。今回発見されたダンジョンって洞窟系のダンジョンなんだ。」
そう、ダンジョンといっても内部構造がすべて同じ様になっているとは限らない。
今回の様に洞窟系のダンジョンもあれば、遺跡や神殿の様なダンジョンもあるので、入って見るまではどの様な構造のダンジョンかはわからない。
「さてと、アイテムや素材なんかを見つけながら奥に向かいますか。」
あまりに緊張感のない態度なので、本当に初めてのダンジョン攻略なのかと少し...多いに心配になってしまう。
1本道を進んで行くと道が2つ左右に別れている。『ふむ。』と言った感じで左手を右手の肘に添え、右手で顎を撫でるようにして考える。
(確かこのダンジョンは2階層っだたわね。だとすると、どちらかが正解で、もう片方が不正解ってことね。まぁ、私にとっては両方正解なんだけど。というわけで、私の行く道は...)
「こっちね。できれば次の階層に続く道ではない方が良いんだけど...。」
そう言いながら右の道に向かって歩き出す。
なぜ次の階層に続く道ではない方が良いのか、それは、何かしらのアイテムや素材を手に入れる為の考えで、トレジャーハンターにとって危険を冒してでもすべて探索するというこは普通の考えなのだ。
しかし、普通の冒険者からしてみると、もちろん良いアイテムや素材を手に入れれるのなら、ある程度の危険は冒す者も出て来るかもしれない。だが、あくまでも少数の者たちの考えで、そんな危険を冒すくらいなら自分や仲間の命を優先的に考えながら探索するやり方を選ぶのが普通、そのため、トレジャーハンターをパーティーに入れている者たちは、現状で少ないと言っていいのも事実なのである。
右の道を進んで行くと、少しだけ開け部屋が見えてくる。
(やった!こっちが行き止まりの道で正解だったようね♪と、いけない、いけない、こういった場所ほど冷静にならなきゃね。さて、中はどうなっているのかな?)
その部屋の入口付近の物陰に隠れるように身を潜め、部屋の中がどうなっているのかを確認するように覗く。
(ふ~ん。それなりに広い部屋のようね。ん?あれは...。)
その部屋の中央付近に小さい黒い塊が3つうごめいているのが見える。
耳を澄ますと、『ギギィ、ギギャ...』と、僅かに聞こえてくる不快な鳴き声の正体は...ゴブリンである。
ゴブリンとは、身長約1mで耳が尖っており、目は鋭く、口がその耳の近くまで裂け、ギザギザした歯は口より大きい為、不気味な笑顔の様な顔は緑の体と相まって、より一層気持ち悪さを際立たせている。
もう1つ忘れてはならないのが、武器になりそうな物は何でも使い、数が増えれば増えるほどに、その討伐難易度も上がるというなんとも嫌らしいモンスターなのだ。
(はぁ...。ゴブリンが3匹かぁ...。今の私にはちょっとキツイかな。)
それというのも、ファディアはまだ駆け出しの冒険者トレジャーハンターでソロ、ゴブリン2匹程度な不意を突けばなんとか倒せるといったレベルなのだ。それが、3匹ともなれば話は別だ、不意を突いてもまだ2匹を相手にしなければならない。
ゴブリン程度なら余裕で倒せるレベルにはまだ達していない現状で、3匹のゴブリンを1人で挑むのは無謀とは言い過ぎかもしれないが、それ程困難な戦いなのだ。
それでも意を決した様に顔を上げ、背をっていたリュックを地面に置き、足もとに落ちていた石を右手で拾う。
右手に持った石を握りしめ、これから始まるゴブリンとの戦い...というよりも違う感情、その感情の方が彼女の中で強くなりつつあった、それは...。
(この部屋を調べるには、ヤツラをなんとしでも倒さないといけないのよね。大丈夫、私ならやれる...やれるはずだわ!)
こうして部屋を調べる権利を賭け、ゴブリン3匹との戦いが始まるのだった。
なんとか2話目を投稿することができました。
次話も頑張って投稿できるように頑張ります。