1, 月一の日常
ーーー眩しい
今日もいつも通り朝日があたって目が覚める。一年を通して同じ位の時間に出るため今となっては目覚ましのようなものだ。(逆に雨の日は寝坊する)
ベッドから出て一階に降り、服を着替えて朝食で一息。
俺が住んでるこの村の名前はアリカ村。人数こそ少ないが、自然豊かで活気のあるいい村だ。
ただ一つだけ不便なことがある。
それはあらゆる都市から見事に離れているということだ。
金は村の中でも回すことはできる。
しかし、発展させようと考えるならどうしても村から出て外の街に行かなければならない。
だがさっきも言った通り街は遠い。ここから一番近くの街に行くだけでも軽く馬車で三日はかかる。そんなにおいそれと行けるような距離ではない。
まあそれを解決するために俺がいるのだが。
普段は外に出て普通に働いているが、月に一度村の農産物や特産品などを持って街に出る。そしてそれらを街で売り、得た金で村周辺では手に入らない物を購入。そしてそれらを村へと納める、といったことをしている。まあ割と大変な仕事なだけあってやり甲斐はある。
朝食を済ませるとすぐさま玄関に向かった。
「いってきます」
出かけることを自宅に伝え馬車の元へと向かう。
使う馬車は俺が所有しているものだ。昔あることがきっかけで引き継いだ物で、今でも大切に使っている。
馬車の荷台にはもうすでに荷物は入れてある。しかしまだ村の特産品を入れていない。
「あ~、そういやまだ受け取って無かったっけ」
出発前にばたつくのは割といつものことだ。あれが無いこれが無いと一人で大騒ぎをしている。
あまり行きたくないんだけどなぁ。俺は足取りを重くしながら渋々村長の家へと向かった。
村長の家は村の中心部にある。
馬車を引きながら村の中心部へ向けて歩く。
まだ日が出てそれ程経ってはいないが、みんな店やら農業やらで活動が早く道を歩けば人とすれ違い、その度に挨拶が飛んで来る。
挨拶は好きな方だし別に問題は無い、相手の方を見て清々しく挨拶を返す。
この模範的挨拶には村の子供達にも少しは見習って欲しい物だ。
そうこうしている内に村長の家の前に着いた。
さすが村の顔だけあっていつ見ても大きな家だと思う。まあ村の中ではの話だが。
深呼吸を一度挟んでから玄関に向かい、
「ごめんくださーい」
といいながら玄関をノック。
特に反応が無い。この時間で留守というのは考えにくいのだが。
そう思っていた矢先、玄関の扉が開く。
中から出てきたのは二十代後半から三十代前半位の女性。
「あら、カインじゃない!」
「おはようございます、村長」
「もう、村長じゃ無くてクレアさんって呼んでっていつも言ってるでしょ」
この人が村長のクレアさん。
なぜか俺にとても優しいのだが、何か裏がありそうで怖い。
本人はクレアさんと呼んでとは言っているがそれは中々難しい。
「それで今日はどんな用事で?」
おおそうだった、危うく本題を忘れるところだった。
「街に持っていく用の特産品を受け取りに来ました」
「あ、そういえば今日出発だったわね」
クレアさんは奥へいくとすぐに目的の品を渡してくれた。
「割らないように気をつけてね」
「ありがとうございます」
クレアさんから受け取った村の特産品を荷台に積み、自身も馬車へと乗り込む。
「それじゃあ、いってきます」
「えぇ、よろしくね」
クレアさんに見送られながら目的の街へと向かうため村の出入口へと急ぐ。
それじゃあ、今回も頑張りますか!