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とある寒い日の温もり

作者: 麻生愛海

 外に出れば凍え死にそうな寒さの日のことでした。木々はすっかり葉を落として丸裸で冷たい風が吹けばきっと震え上がるだろう。そんな時分に、泣く子も黙る恐ろしい存在だが、しかし「規格外れな」ところがある魔王サタン様はのんきにぬくぬくと過ごしていました。

「は、はぁ…寒い季節にはこれがやめられぬ。」

人が忌み嫌い恐れる魔王らしからぬうっとりした声を上げ、魔界の者に似ず顔をほんのりと紅潮させました。そして一気にのたまった。「「もこもこ」に頬ずりするのががとてもやめられんのだ!」

魔王様が抱きしめているそれはマリモのようなふわふわとした丸い物体。これは低級の魔物であり、サタン様のような上級魔族にはなかなか目に止まらない存在である。

 「お・・・い。サタン一体何やっているのか?」

呆れた様子で勇者がやってきた。元々敵対する立場にある二人だが、魔王と勇者は時あるときは世界を救うために冒険に共に出たり協力するなど奇妙な関係が出来上がっていた。

何故そんなことになったか両者にそれぞれ聞いてみれば、一方は面白おかしく、もう一方は激しく抗議するだろう。

「ふむ。何故・・・。敵対する我らが時たま共闘するようになったのかと…?勇者と魔王は必ずしも敵対する関係でないとならないというのはありきたりすぎておかしいだろう。

少々お惚けすぎて先行き不安を覚えるが、私は彼をなかなか面白い知人と思っている。

彼のおかげで退屈覚えずにすんで、長すぎる人生(御年1万歳)に飽かないで済むぞ。

…おっとこれは内緒だぞ。知ったら殺気を放たれるからな。それはそれで楽しいが」

「元々オレはアイツが世界の諸悪の根源だと思って倒しに来たんだ。魔王とは世界を仇になす存在だろう。しかしアイツはそんな素振りをなかなか見せずに、珍騒動でこちらを振り回すばかりだ。だからオレはアイツが世界に最悪をもたらさないか監視しているのだ。

いいな、決して魔王と馴れ合っている訳ではない。オレは偶々利害一致したからだ」

 ・・・とこんなふうに。

奇妙な関係が出来上がっている勇者は魔王の城に何か企んでいないか「監視」するために訪れた。

「今日こそは~アイツの」と息巻いて城へ乗り込んで見ては(大抵城には何の妨害もなく入れるらしい)、なんと世人恐れる魔王はふわふわしたボールのような物体に顔を埋め、

なにやら越に入っている。

その様子を見たとき勇者は「どこかで頭打って可笑しくなったか?」と心底ビビってしまった。とても泣く子も黙る魔王とは思えない。やがて間延びした声がかった。

「うーん?勇者か?そんなところに突っ立っていないで、早くこちらに来るがいい。

「もこもこ」に触ればとても温かくて気持ちいいぞ。この毛の感触たまらん。蕩けてしまいそうだ」

「そのまま頭から溶けてしまえばいいのに」

とズバッと毒を吐きつつ勇者は「なんでこいつが魔王なんだろう」と呆れ果てつつ、しくしくと泣きそうになりながら近づく。

「ほれ。触ってみろ」

そんな勇者の嘆きをよそに魔王が「もこもこ」を勇者に手渡す。

「…よっと意外と重いな。」

勇者は物体の意外な重さに少しよろめいた。「もこもこ」は意外と大人しい性質らしい。

時々体を捩らせるが見知らぬ奴に体を抱かれても暴れたりしなかった。抱きとめた時、ほんのりと温かさが伝わってきた。「・・・ほっこりする」「だろう?」

魔王が楽しそうに言った。

 外は丸裸にされた木々が震えんばかりの寒く冷たく、城の中であっても肌寒かったが

この物体を抱いたところでほんのりと暖かくなるように感じた。

それは「もこもこ」が生き物であるという証なのだろうか。

特に何の害も与えないような下級魔だが、そこにはしっかりと命の炎が灯っていた。

「寒い日に小さな温かみを求めるのも悪くないな」と勇者はしみじみとつぶやいた。

魔王はそれに深く頷く。「凍てつくような季節に暖かさを求めるのも冬の季節の味わいというものだ」「そうかもしれないな」

勇者は珍しく同調した。

 それは寒い一日の出来事であった。


「もふもふ」とはちょっと違う方向に行った気がする?

支離滅裂な話ですが楽しんでください

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