表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お兄様と呼ばないで!  作者: カブラギ Kサク
1/1

第一話『謎の少女』

(間違えて投稿してしまいました。プロローグと第一話をまとめたリンクが別にありますので次話からはそちらを御覧ください)

少女も指をくわえてこちらをまじまじと見つめている。

僕がブレーキをかけるのが早かったからか、幸いにも女の子に怪我はなかった。

誓って言うが、僕は決してロリコン趣味という訳ではない。

ただこの少女とは初対面のはずなのだが——何故か、どこかで会ったことがあるような。

いわゆる『既視感(きしかん)』をおぼえるのだ。


「おにーちゃん……」

「え?」

少女はそう、口にした。

その刹那、その子の表情が一気に明るいものに変わった。

「やっぱりアキラおにーちゃんだ……! わぁい、10年ぶりだぁぁっ!」

あろうことか少女はいきなり僕に抱き付いてきた!

「いって!」

今さっきコケてできた打ち身の痣に女の子の腕が触れて、痛い。

女の子はそれでもかまわずに僕に頬をすり寄せてくる。

「わあああ、やっぱりアキラおにーちゃんの匂いだぁ……! 長かったなぁ、この十年」

などと謎の少女は僕の胸板に顔を埋めて満足気な笑みを浮かべている。

そして少女はとんでもないことを言い出した。

「ねえ、ケッコンしよ、ケッコン! 10年前のヤクソクっ」

訳が分からない。何故僕はこんないかにもロリコンが好みそうな萌え少女に求婚されているのだろう?

しかし僕も帰りを急がなければならないので、いつまでもこの子の相手をしている訳にはいかない。

そこで僕はこう言った。

「ごめん、悪いけど。君と結婚するわけにはいかないんだ」

「ええっ、そんな」

少女の瞳が一瞬潤む。

だが僕は構わずこう続けた。

「けど、友達になってあげることはできる。僕と結婚したいなら、まず友達として僕と付き合ってみたら、どうかな?」

少女は数秒腕組みをして考えた後、こう答えた。

「うん、いいよ。ユイナも少しセイキューすぎたと思う。10年経ってこーんな綺麗に変身しちゃったユイナを見たら、誰でも気おくれしちゃうよね。じゃあまずはお友達からの付き合いってことで」

自分のことをユイナと呼ぶその少女は、僕に握手を求めてきた。

僕は何故か迷いなく、その手を握り返した。

するとユイナは嬉しそうにはにかんだ。

「えへへ。これがユイナたちのケッコンへの第一歩なんだね。あ、そうだ。『けーやく』したくなったら、いつでも言ってね? ユイナ、ずーっと待ってるから! じゃーねぇ~」

そうしてユイナは鼻歌を歌いながら、スキップしてどこかへ行ってしまった。

全くもって不思議ちゃんだったなぁ。

しかし何故僕も『友達になる』なんて言えてしまったのだろうか?

まあ深く考えても仕方ない。彼女の言う『10年前』というのもあの時期の少女にありがちな脳内設定なのだろうし、また会うことがあったら彼女の芝居に付き合ってあげよう。

やっぱり子供の夢は壊しちゃいけないよな、うんうん。

しかし去り際に気になる単語を口にしていたな……『けーやく』って何のことだろう?

まあそれこそ子どもの言うことなんだし、気にするほどのことでもないか。

僕はそれからチェーンの外れてしまった愛機を引きずりながらも、なんとか家に帰ることができた。


しかし帰宅してすぐに異変に気付く。

叶絵が帰ってきている!

しかも女子用の靴が叶絵の他に一足と……さすがに見覚えのある小さな女児用の赤い靴が一足。

まさか、とは思ったが。僕は事実を確認するために良い茶葉の香りがするダイニングに足を踏み入れた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ