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『私・・・・・家出しました♪』



 あれからもう何日目だろう? 私は魔王と口を聞いていないし顔も合わしていない。実は只今絶賛夫婦ゲンカ中。で、私は魔王城を飛び出して、たった一人である街で住み込みで働いている。


 私が家出をするきっかけとなったのが、ベッドの中での魔王の行いだった。あの夜。いつもの様に魔王は気持ち良さそうに私の胸に顔を埋めて眠っていた。眠っていたはずなんだけど。その日は何を思ったのか? 魔王は右手で胸をゆっくりと揉みながら、下着に手をのばしていきなり掴んで剥ぎ取ると、私に何の断りもなく。そのままコトをおっ始めようっていう勢いだったので、私は必死に抵抗して魔王の頬を思いっ切り引っ掻いてやった。そして、全力で寝室を飛び出してその夜は書庫で毛布に包まって一睡もせずに朝を待った。


 翌朝。恐る恐る私が部屋へ戻ると、すでに魔王は出かけた後だった。あんなことの後だから、私は魔王と顔を合さずに済んでホッと胸を撫で下ろしていた。その後は、いつもの様に朝食を済ませてジョギングをしてストレッチをやってから、浴場で汗を流していたんだけど、やっぱり魔猫が青筋立ててやって来て私のことを水風呂に放り込んで怒っていた。


「ちょっと! どういうつもりで魔王さまを拒んで引っ叩いたのよ。あれだけ腹くくっとけって言ってたのに。アンタはまだ、腹がくくれてなかったのね。このクソガキ!」

「あううううううう。だって。今までなんにもしないでただ胸に顔埋めて眠ってたのに。いきなりあんなことするんだもん! びっくりしちゃって」


 涙目で私が訴えると、魔猫は人の姿になって私の頭を優しく撫でながら笑って


「ほ~んと。アンタはまだまだお子ちゃまだね~~。(苦笑)でもね~。今回はちょっとマズイかもよ? 魔王さまもかなり傷ついちゃったみたいだから、今度こそ浮気されちゃうかもね~~」

「え~~~? ホントに? そんなに傷ついちゃったの? でもでも、絶対に魔王のほうが酷いよ! 私は初めてなんだよ? するならするで言ってくれれば少しは心の準備ってやつも出来るけど。黙って黙々と始められちゃうと怖くなっちゃって。……あんなの絶対に無理に決まってるでしょ!」


 私が必死に訴えても、魔猫は呆れ顔で首を左右に降って私の訴えは認めてくれなかった。それから魔猫は魔王に仕事を頼まれたからと、そのままオロオロしている私を放置してまたどこかへ行ってしまった。仕方なく私は部屋へ戻って魔王が戻って来るのを待ってたんだけど。昼食の時も夕食の時も寝る時間になっても魔王は戻って来なかった。


 さすがにやり過ぎたかな? と思って少し反省して私が魔王のプライベートルームの前まで行ったら、中から数人の女の人の楽しそうな笑い声が聞こえて来た。私が何だろうと思って、少しだけ開いているドアからのぞいたら。魔王はナイスバディのお姉さまに囲まれて鼻の下をなが~くしていた。


「…………」


 私は唖然として何も言わずそのままドアを締めて書庫へ戻った。今のって私はショックだったのかな? でも魔王だからあれくらい普通でしょ? 自分の頭の中には二つの思いがずっとぶつかり合っている感じだった。それでも、このまま魔王と一緒に魔王城にいることに嫌悪感を抱いてしまった私は、書庫の中から魔導書を探して自分の魔力を使って城から出ようと決意していた。


出来ればオースティンの屋敷へ行きたかったけど急いでいたので私はどこでもいいから魔王城の外へ行きたいと願っていた。持てるだけの荷物を持って、強く心で願って呪文を唱えると身体が少し熱くなっていた。そして、気がついたら本当に知らない所に飛ばされていた。側には凄く大きなお屋敷が建っている。誰のお屋敷だろう? 凄く怖い凶暴な悪魔のお屋敷だったら嫌だなぁ~。と私は思ったので、お屋敷はスルーして坂を下った所に見える街へ行ってみることにした。


 街を入ってすぐに宿屋のような建物があったので入ってみた。そこには、優しそうな人型の魔物のおばさんがカウンターに座ってウトウトしていた。


「あの……。すみません」


私が声をかけると、おばさんはハッとして目を開けて私の方を見た。


「今晩。泊めて頂きたいんですが。宿代っておいくらですか?」

「ああ~。お泊りですか? そうだね~。もうこの時間からだと銅貨を3枚で如何ですか?」


 あまりの宿代の安さに目を丸くしているとおばさんは笑いながら私の手を握りしめていた。


「それに。こんな時間にお嬢さんみたいなのがウロウロしていたら狼の野郎に喰われちまうよ。さっさと扉を締めて中へ入りなさいな!」


おばさんに言われて私は慌てて扉を締めて荷物を下ろした。


「狼って? 狼が出るんですか? どんな姿の? 街の人を食べちゃうんですか?」

「おやおや? お嬢さんはどこから来たんだい? 狼の野郎を知らないってことはこの街のモンじゃないんだね」


私はゆっくり頷いて魔王城の使用人だったけど、仕事が辛くて逃げ出したと嘘をついた。


「あ~。確かにお城の仕事は辛いって聞いてるよ。アンタも苦労したんだね~」


おばさんは疑いもせずに私の話を信じてすぐに部屋へ案内してくれた。おばさんは、私がしばらく街にいるなら、ここで雇ってくれて寝泊まりさせてくれると提案してくれたのでお世話になることにした。


そして温かいミルクを入れて持って来てくれて、今夜はゆっくりおやすみと言って笑った。私はベットに横になって書庫から持って来た魔導書を開いて、自分自身に結界を張る魔術を探していた。今のままだと明日にはすぐに魔王に見つかってしまう。そんなのは嫌だった。もう少し一人でゆっくり考える時間がほしい。


すると魔導書に結界の張り方が示されているのを見つけて私は手を止めた。強い魔力で私が自分自身に結界を張れば。私のことを魔王にも見つけられないということが記されている。私は魔導書に記されている通りの手順で、心で強く願いながら結界を張った。上手く行ったかどうかはまだわからなかったけど。私は何となく上手く出来たような気がしていた。


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