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紫色の鳥人形は心臓を啄む  作者: サンシーク
6/7

6、始まりの終幕 悲しき付喪神『ゲコ』 本編終了

 絶望を、憎悪を、嫉妬を、愛憎を、恐怖を、空虚を、怒りを、恥を、諦めを、困惑を、欲望を、不条理を、焦燥を、後悔を、緊張を、不憫を、腐敗を、無責任を、驚愕を、理不尽を、不快感を、不浄を、無情を、塞恐を、閉塞を、軽蔑を、嫌悪を、誤解を、曲解を、無慈悲を、鬼畜を、畏怖を、災凶を、断腸を、最悪を、砕狂を、狂乱を、悲哀を、悲害を、脅威を、不義理を、不安を、怨みを、恨みを、辛みを、妬みを、嫉みを、害悪を、酔狂を、冷酷を、非情を、不満を、過失を、無碍を、破壊を、破損を、破滅を、破綻を、不良を、咆哮を、涙を、嘆きを、面倒を、束縛を、蛇足を、怠惰を、脅迫を、罪悪感を、仲間割れを、愕然を、悪辣を、劣等感を、無念を、堕落を、悔恨を、悲痛を、悲劇を、絶叫を、絶句を、不許可を、拒絶を、愚かしさを、杜撰さを、愚鈍を、荒みを、叱責を、もどかしさを、罵りを、おどろおどろしさを、不摂生を、不正を、呪縛を、罵倒を、罵声を、殺意を、苦しみを、不平等を、切なさを、悲しみを、呪いを、



 ぼくはその全てをバラまこう。



 あの人はぼくに命をくれた。


 あの人はぼくに声をくれた。


 あの人はぼくに名前をくれた。



 あの人の為にぼくはあの人の受けた負をこの憎たらしい世界にバラまこう。

 あの人が悲しい顔をして、あの人の心臓をくちばしで穿ち貫き通したぼくを見ていた様に、ぼくも世界に存在する心臓を穿ち、貫き通そう。


 それがぼくが『友達(あの人)』の為に出来る恩返し(復讐)。



―――――――



『ごめんなさい。ぼくに名前と声と命をくれたあなたに僕は命すらあげることが出来なくて。』


『謝るのは俺の方さ。俺を殺すために君を使われるなんて、予想すらしてなかったけど、そんな馬鹿なことに使わせちゃって悪かったな。それに気にするなよ。俺は確かに思い残したことは沢山あるし、殺したい程憎たらしい奴もいた。でも、自分が殺されたらさ、なんかどうでもよくなっちゃったんだ。』


『本当にごめんなさい。ぼくはなにもあなたに返すことができなかった。』


『何を言ってるんだ。俺は君にとても素晴らしいものを沢山貰ったんだよ。』


『素晴らしいもの?』


『そうだ。

 君と一緒に公園で練習していた時は未来へのまばゆいばかりの希望を貰い、

 やっと認められ君と一緒に立つことができた舞台の上ではお客様の素晴らしい笑顔を貰い、

 ずっと君と一緒に住んでいた部屋では何者にも代え難い安心感を貰い、

他人はなんと言うかは知らないが、君という素晴らしい友達に出会えて俺は幸せだ。』


『友達?ぼくが友達?』


『そうだよ。当たり前だろう。だから言わせてくれ。ありがとう。君が俺の右側にいてくれたおかげで俺は俺の夢を叶えることが出来たんだ。』


 嘘つき。夢は叶わなかったじゃないか。ぼくはあなたが誰かに言っているのを聞いていたんだよ。

「俺はこいつと一生一緒にやっていく。こいつの色が褪せようとも、目が取れようとも、毛が全て抜けようとも、ずっとな。それが俺の夢だ。」


 あなた言う一生はこんなにも短かったの?まだ僕の色は褪せてないし、目も取れてもいないし、毛だって全然抜けてないよ。


 あなたの目は悲しいままだ。


 あなたの目は無念なままだ。


 その瞳の奥には憎悪の炎がメラメラと燃えているのが手に取るようにわかる。


 それに何よりあなたの死に顔は憤怒と苦悶に満ちていて、とても見られたものじゃなかった。


 あなたはぼくを心配させまいと気を使っているんだね。ありがとう。


 だから、ぼくは世界を穿とう。


 ぼくもあなたのように終わりを迎えよう。


 世界に終わりを告げよう。


 世界を囀らせるために声無き声でぼくは囀ろう。


 いつまでも、いつまでも、終焉の歌を。



―――――――



 純粋な思いはその分闇にまみれやすい。そして、それは時として人も鳥も神も人形も関係なく、人(神)外へと変えてしまう。

 闇が深ければ深いほど、力は濃さを増し、世界に拭えぬほどの暗い影を落とす。


 こうして悲しき付喪神『ゲコ』は、誰も抗う事など叶わない怨霊へと自ら進み堕ちて、心臓を啄み続けこととなった。

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