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桃香理事長日誌  作者: 葉月 優奈
六話:|罪《フィーリング》の対価
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あたしは、大学のキャンパスに来ていた。

季節は、すっかり春めいていた。ぽかぽか陽気が気持ちいい。

桜並木の花びらがあたしのブラウスの肩に乗っかって、ピンクの花びらを微笑ましく見ていた。


学校のキャンパスの前で、あたしはサークルの呼び込みを見ていた。

大阪の大学はとても活気があった。

サークルの呼び込みは、入学の頃からずっと続いていた。

運動部のユニホームや、文化部のノボリなどが乱立していて小さな祭みたい。


あれから二か月後、あたしは無事に高校を卒業した。

始めはこの学校の目的も志望動機も明確なものがなかった。

ただ、大学に進学すればいいと思っていた。

文学部に進学したあたしは、あの学校の経験で変わっていた。


「桃香っ」あたしのそばには、春らしいカーディガンを着た女の子。

髪が長くて、知的な女性にあたしは顔を上げた。

それは櫻子ではない、新しい友達。


「あら、どうしたの?」

「ねえ、そろそろはじまるわよ。次のゼミ」

「あっ、いけない。そうだったわ」

それは、桜咲く四月の大学キャンパス。推薦入試で受かったあたしは、そこで新しい生活を始めた。

初めての一人暮らし、初めての大学、あたしに今起きていることは全てが初めて。

初めてのこの環境も、宇喜高に行ったことで変わった。いや変わることができた。

あたしは夢を持つことができた。それは……


「『人文と教育』の授業出たかったんでしょ」

「もちろんよ、だってあたしは教師になりたいから」


それは教師になりたいと思った。

父を超える立派な教師になりたいと心の底から思えた。

あたしは大きく深呼吸をして校舎を見ていた。大学の校舎はやはり大きい。

関西では有名な学校の校舎が、眩しく見えていた。

初めて入試で来たときはきっと夢も持てなかった校舎が、これほどまでに眩しいとは思えなかったから。


桜の花びらに誓い、あたしは大学の校舎の中に入っていった。

まるであたしの門出を祝福するかのような桜のシャワーが、降り注いでいた。



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