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あのいじめ画像を見て大東君は沈黙していた。この嫌な感覚、まだ慣れないわ。
静かでピリピリした空気が、この理事長室は続いていた。
窓から見える雪はさらに強く降っていた。
腕を組んでみていた北小路は、明らかに厳しい視線を大東君に送っていた。
うつむく大東君は、さっきまでの言い合いした元気がどこかに飛んで行ってしまった様子。
「やっと白状する気になったか」
「俺じゃない!」かたくなに拒む、大東君。
あたしはそんな彼をじっと見ていた。
「なんだと、お前じゃなければ……」
「待って!大東君、どういうこと?」
拳を構えて食い掛かる北小路だけど、あたしの声に反応してか振り上げた拳を下ろした。
「俺には、全く身に覚えがない」
「だけど、あのユニホームは間違いなくお前だ。大東という名前は、この学校でお前以外ほかにいない」
「でも、俺は違う。いじめたやつも知らない」
「大東君、証拠は?いえ、証明できるものがあるの?」
「それは……俺は……」
言葉に詰まって、大東君は考えていた。するとそれを見て、北小路が立ち上がった。
「証拠がなければ、お前が犯人だ!」
「だから北小路……」
そんな時、北小路があたしの顎をつかんで顔を近づけてきた。いまだに目は血走っていた。
なんで、なんでそんなに焦っているのよ北小路。
「いいか、俺は教頭だ。学校を守らないといけない。
お前も、理事長代理だ。学校を守らないといけない。
この立場は分かっているだろう、それがすべてだ!」
「分かっているわ」
「この件を長引かせれば、いずれ警察が動く。
もう、ネットでも全国展開されてしまった。学校法人にも、この件が耳に入るのも時間の問題だろう」
「だったら、どうする気?」
「大東を退学処分!」
その言葉を聞いて、さすがの大東君も大慌てをした。
「ま、待ってくれ!それだけは……」
「どのみち、この件の処理はできなけれは犯人はお前しかいない。
お前がやっていない証拠がなければ、退学させるしかないだろう。
画像が出た間も悪い、二月には学校法人の監査があるんだ。
このことを処分しないと、学校の評価が格下げ……もとより学校法人解消もありうるだろう」
「学校法人の解消?」
「つまり廃校だ」北小路の焦りがちょっとだけ理解できた。だけどあたしは、それが納得できなかった。
「それは、分かっているけどダメよ!まだ大東君が認めていないわ!」
あたしは北小路の手をはねて、北小路の前に立ちふさがった。
大東君はあたしの後ろで、あたしの背中を見ていた。
「ならば一週間だ、来週までにこの画像のいじめっ子を差し出せ。
来週の火曜日には、学校法人に書類を上げないといけない。それまでに結論を出さなけれは、大東を退学させる。
いいか、これは理事長権限ではない。職員会議にかけるし、お前にも認可してもらう」
「……分かったわよ。北小路」
あたしは真っ直ぐ北小路を見た。もう、後には引けないと覚悟を決めた。
「大東君、あたしが今度は守ってあげるから」
胸を張ってあたしは大東君に言った、少し顔を赤くしながら。




